訓練? 私って何もしてないような…
昨日の残りのリンゴ(なぜか酸化してない)を朝食にしてたら、このリンゴの木の精霊にお礼言いに行くことになった。
地面に落ちた果実は動物の精霊たちも食べるから、勝手に食べたと怒られはしないけど、礼儀としてお礼言っとけだって。
リンゴの芯は、埋めて土に返せばいいそうです。まだ半分残ってるから埋めないけど。
食後、まず始めたのは巾着づくり。
と言っても布なんて無いから、私の履いてたストレートパンツの裾を材料にした。
パンツが七分丈になったけど、ブーツあるから生足は出ません。
森の中で生足出してたら、まず確実に擦り傷だらけになるもんね。
まずはパンツの裾切って、円筒形の布を二枚分離。
次にその辺のツタから繊維質取り出して、紐もどきを作る。
その紐もどきで円筒形の底を縫い、袋状に。
口の部分は、より合わせた紐もどきで絞れるように加工。
最後に太くより合せた紐もどきでショルダーストラップ作って完成。
魔法に慣れてない私がやると材料ダメにするからと、全部フウタが魔法でやってくれたよ。
パパっと簡単に作ってるのに、なんか妙に出来がいい。
両肩から斜め掛けして、装備しました。
……園にお出かけする幼稚園児みたい? 否定はできない。
気を取り直して、次は網袋。
これは網目状に繁殖してるツタを引っぺがして、紐を通して袋状にしただけで完成。
お出かけ準備できたので、まずはリンゴの木の精霊にお礼を言いに行った。
そしたら、熟して落ちかけのリンゴを、またもらってしまった。
網袋に入れたら、なんか漁業用のガラスの浮き球背負ってるみたいになった。
次に大きなモンキーポッドみたいな木に行って、果実をおねだり。
淡く金色に光るピンポン玉サイズの果樹を十個もらい、これは落とさないように巾着に収納。
魔素の実って言うらしい。
そして森上空を飛びながら移動。
結構速くて、原付くらいのスピード出てる気がする。
ちなみにここまでの移動は、私の肩に座ったフウタが、全部魔法でやってくれてます。
サバイバル訓練になってない?
いや、非常に切実な問題があって、時間的に急いでるんだよ。
問題はトイレ事情です。
いたるところに精霊がいる精霊の森で用を足すことは、それすなわち衆人環視の中でしてることに……。
うん、それは乙女として無理です。
昨日フウタから教えられて、私は精霊の森から急遽移動することになりました。
私がもよおす前に。…切実。
そんなわけで移動をフウタに任せ、森上空を飛ぶこと一時間ほどで、森の様子が変わってきた。
これ、私の常識の範疇にある森だ。どうやら精霊の森を抜けったっぽい。
木々は太いし高さもあるけど、精霊の森ほど常識ぶっちぎってない。
うん、自然豊かな原生林って感じ。
眼下が普通の森になってからも数分飛び、目的地の崖に到着しました。
ここは崖の岩肌の中腹から地下水が噴出して滝ができてます。
水量はそれほどなくて、滝の幅は1m無いくらい。
ちょっとフンベの滝っぽい。
ここが私の仮住まいになる予定です。
地下水が出てる部分の横に穴を掘り、洞窟住居化します。
つまり地下水脈と平行に、岩壁一枚隔てて洞窟がある状態。
そして岩壁に小さな穴を開ければ、洞窟内で地下水を水道代わりに利用できます。
取水用の穴を開けた最初の場所が簡易キッチンのシンク。
その下流がお風呂で、さらに下流がトイレです。
下水垂れ流しは森を汚すんじゃないかと思ったんだけど、下の滝つぼはスライムの住処。
このスライム、水中の有機物を分解吸収して生きてるらしい。
しかも排泄物無しの完全分解吸収。
つまり天然の下水浄化システム。
流れる有機物が増えるとスライムも増殖するので、間引き討伐してレベルアップにも使えます。
この世界、魔獣を討伐すると、魔獣が死ぬ際に周囲に放出される魔素で、近くにいる動物はレベルアップするらしい。
放出された濃い魔素を何度も浴びることで、身体が濃い魔素に慣れて細胞の最大魔素容量が上がり、身体能力が強化された上に魔素干渉領域も拡張されるんだって。
この魔素を思念で操ることで魔法が使えてるらしいの。
ただ魔獣側も生物を取り込むことでレベルアップするから、魔獣は例外なく人や動物を襲う。
だから自分が弱いうちは、最大限安全策を取って魔獣を討伐するようにと忠告された。
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