驚きの状況。ちなみにヘルプも説明も無い
「………………ほへ?」
私、神楽あかり、二十とウン歳。
地方の理系大学卒業後、これまた地方の電気設備メーカーに就職してウン年。
アパートでぐっすり寝てて、なんかものすごい音で目が覚めた…はず。
一瞬眩しい光が目に入り、次の瞬間身体全体にとんでもない衝撃を受けた。
で、次に目を開けたら、視界一面緑色。
どこ、ここ?
あたりには巨木が生い茂り、地面にも木の根が這い回ってる。
土はほとんど見えず、土の表面や木の根、石にまで苔が生え、樹皮以外はほんと緑だらけ。
その樹皮さえ、地面から3mほどはコケに覆われてる。
そんな原生林とも言うべき森の中に、ぽつんと一人立ってるの。
しかも、周りの植物みんなでかくて、なんだか小人になったみたい。
なにこれ? 一体何が起こったの?
私、まだ起きてなくて夢見てる?
自室で寝てて、すごく大きな音がしたと思ったけど、よくよく思い出してみたら、バキバキとものすごい音がして、そのあと唸るようなエンジン音が聞こえて急に眩しい光が…。
そして身体が潰れるような、とんでもない圧迫感。
まさか、トラックにでも突っ込まれた?
私の住んでたアパートは、十字路の角に建ってた。
そして私の部屋は、道に面した側の一階。
でも、ブロック塀あったよ?
……寝ぼけてた頭が徐々に動き出したのか、目が覚めた時にトラックのヘッドライトと大きなタイヤが見えたような気がする。
ブロック塀じゃ防御力足りなかったの?
そして頭と身体に強い圧迫感と痛みが……。
……ひょっとして私、自室で寝てる間にトラックに突っ込まれて、下敷きになったってこと?
大怪我して昏睡状態で、夢でも見てるの?
悲報! 頑張って現状確認してみたけど、なんか夢じゃないっぽいぃぃぃ!
近くにあった草をちぎってみたら、濡れた葉の冷たさ感じるし、匂い嗅いでみたらしっかり青臭い。なにより抓ったほっぺが超痛い!
でも、周囲の状況なんかより、もっととんでもない事実が!
私の身体、小さいの。
幼稚園の年長さんくらい? 多分五歳前後のサイズ感。
しかも髪の毛が淡い金髪。ぷにぷにの幼女ボディ。
そして着てる服は、生成りの木綿っぽい長袖の膝丈ワンピース(チュニック?)に、同じ材質のストレートパンツ。ベルトは紐。
靴は靴底に何か張った革製みたいで、紐で結んだハーフブーツ。
下着は、同じく紐で結んだかぼちゃパンツだけ。
……幽体離脱でもして、誰かの身体を乗っ取っちゃってるの?
でも、思考はちゃんと私のっぽいし、記憶もしっかりある。
なら脳は私の(二十ウン年)物のはずだし、この身体の記憶なんて……。
……なんだこれ?
なんか知らないはずの言語が記憶にある。
そして、魔法なんぞというファンタジーな記憶も…。
だけどそれ以外の、私のじゃない記憶は全くない。
もし幽体離脱で身体乗っ取りとかだったら、この身体の名前や家族の記憶とかあるはずなのに、いくら記憶を探っても全く出てこない。
驚きの魔法知識にしても、誰かに教えてもらったとか学校で習ったとかの記憶は無くて、ただ使うための知識があるだけ。
これじゃまるで、私の脳に他言語と魔法知識をインストールしたみたいじゃん。
…………お水、出て。
マジで出やがったぁ!!
直径5cmくらいの水球が目の前に浮かんでる!
私、二十ウン歳にして、魔法使いになりましたぁ♪
でもこれ、ほんとにお水なのか?
口を近づけてちょびっとだけ舐めてみたけど、ちゃんとお水っぽい。
でも味わうことに意識が逸れたのか、水球が地面に落ちちゃった。
ちょっともったいなかったな。
なにせここは、現在位置不明の原生林っぽい森の中。きれいな飲料水は貴重だ。
そう考えて、ようやく危機感を覚えた。
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