CB-1

@kakikomi00000987766

第1話

源加奈美みなもとかなみは東京・渋谷の繁華街を歩きながらため息をついた。周りは華やかなネオンサインと忙しく行き交う人々で溢れていたが、彼女の心の中は空っぽだった。18年間の人生が、まるでモノクロ映画のように単調に感じられた。

「加奈美、何をぼんやり立ってるの?」

友達の由紀ゆきの声に加奈美は現実に引き戻された。彼女は無理に笑顔を作って答えた。

「なんでもないわ。ただ...少し疲れてるだけ。」

由紀は心配そうな眼差しで加奈美を見つめた。「あなた、最近どうしてこんなに悲しそうに見えるの?何かあったの?」

加奈美は答える代わりに肩をすくめた。どう説明すればいいのか分からなかった。彼女の人生には特別な問題はなかった。ただ...あまりにも平凡すぎたのだ。

学校で彼女は目立たない生徒だった。成績は中間で、特出した才能もなかった。唯一自慢できるのは容姿だけだったが、それさえも加奈美には意味のないように感じられた。

「みなさん、こんにちは!國部春樹くにべはるきさんの新アルバムが本日発売されました!」

街頭の大型スクリーンから流れる声に、加奈美と由紀は顔を上げた。画面の中の春樹は明るい笑顔でファンに向かって手を振っていた。

由紀は興奮した声で言った。「わぁ、春樹さん本当にかっこいい!あの年でこんなに成功するなんて、すごいよね。」

加奈美は思わず頷いた。春樹は25歳にして既に日本で最も人気のあるアイドルの一人だった。彼の人生は間違いなく刺激的で意味のあるものだろう。

「私もあんな風に生きられたらいいのに...」加奈美は呟いた。

「何て言ったの?」由紀が尋ねた。

「ううん、なんでもない...」加奈美は首を振った。

二人はしばらく沈黙のまま歩いた。突然、由紀が立ち止まった。

「あそこ見て、加奈美!」

加奈美は由紀が指さす方向を見た。そこには奇妙なが立っていた。

「あなたの人生に退屈を感じていますか?新しい経験を求めていますか?CBがあなたの夢を叶えます!」

広告の下には小さな文字で「CHANGING BODY」と書かれていた。

「これ、何?」加奈美は不思議そうに言った。

由紀は肩をすくめた。「分かんない。なんか怪しいよね?」

しかし加奈美の心の中では、奇妙な高揚感が湧き上がっていた。彼女は広告に記載されたQRコードをスキャンした。

「加奈美、何してるの?」由紀は驚いた声で尋ねた。

「ただ...興味があっただけ。」加奈美は答えた。

スマートフォンの画面にウェブサイトが開いた。そこにはより詳しい説明があった。

CBはあなたに新しい人生を贈ります。他人の体で生きる機会、今すぐ申し込んでください!」

加奈美の指が震えた。これは狂気の沙汰だろうか?しかし彼女の胸は高鳴っていた。久しぶりに感じる興奮だった。

「加奈美、まさかあなた...」由紀が心配そうに言った。

加奈美は深く息を吸い込んだ。そして申し込みボタンを押した。

「ごめんなさい、由紀ちゃん。私...これをやってみないと。」

その瞬間、加奈美は自分の平凡な日常が終わりつつあることを直感した。彼女は知らなかった。この決断が彼女の人生を、そして多くの人々の人生をどのように揺るがすことになるのかを。

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