いけいけ勇者様89

最上司叉

第1話

【チュンチュン】


勇者は自分のベッドで目を覚ました。


身支度を整えキッチンに向かう。


「おはよう」


魔王がエプロン姿で勇者に言った。


「あぁおはよう」


「朝食今できるから座って待ってて」


「あぁ」


勇者はダイニングテーブルの椅子に座りコーヒーを一口飲んだ。


「…」


勇者は密かに喜んでいる。


まるで新婚みたいだからだ。


2人の生活がずっと続くのだろうか?


そんなことを考えてたら朝食ができてきた。


「おまたせ」


「いや、ありがとう」


「食べよ」


「あぁ」


【カチャカチャ】


「美味しいね」


「あぁ上手い」


「ふふ」


勇者はこれ以上ないくらい幸せに浸っていた。


「そうだ、皆すぐに戻ってこれるって」


ん?


皆?


ちょっと待て俺は2人だけで暮らすつもりなんだが。


そう勇者は考えていた。


「どうしたの?」


「いや、なんでもない…」


「また皆で暮らせるね」


「あぁ…」


魔王は勇者のそんな考えも知らずに呑気に朝食を食べている。


ダメだ。


魔王にはちゃんと言わないと伝わらないのか。


勇者はしばらくまた皆で暮らすことを渋々受け入れた。


いつか魔王との結婚を夢みて。


それまでは大人しくしていようと思うのだった。


勇者は朝食を食べ終えて屈強な男との戦いのことを思い出していた。


屈強な男がヤバい薬に手を出していたのは間違いない。


定期的に薬を摂取していたのかは分からないが薬の効果がきれたのかはたまた副作用か。


ヤバい薬が絡んでいる時点で白衣の男が絡んでるのも間違いない。


なんにせよ勇者の攻撃で鎧がなくなり直接身体に攻撃を受けて身体がもうおかしくなったのは間違いないだろう。


勇者を執拗に狙う人達との戦いは終わったのだろうか?


分からないままだ。


【コンコン】


「誰だ?」


勇者は玄関のドアを開けた。


そこには暗黒の勇者と一緒に戦った2人組が立っていた。


「!久しぶりだな」


「お久しぶりです」


「どうしたんだ?」


「勇者様に報告したいことがあります」


「報告?」


勇者は2人組をリビングに通して話を聞く。


「白衣の男のことですが…」


「…」


勇者は2人組の話を黙って聞いていた。


2人組の話だと白衣の男のクローンを世界各地で倒して歩いていたところ他の国でも白衣の男を倒している戦士達がいた。


国王陛下から他の国に白衣の男の驚異が伝えられていてほどなくして白衣の男のクローンは全滅した。


白衣の男の本拠地は既に破壊してあるがクローン達も拠点を構えていたためよく分からない状態らしい。


2人組が最後に乗り込んだ拠点でおじいさんの死体がベッドで見つかりその遺体が白衣の男の本体だと推測した。


これで長い戦いはようやく幕を閉じたのである。


これから勇者には別の戦いが待ち受けている。


それは今まで以上に手強い相手なのは間違いない。


勇者は気長にその戦いに挑むのであった。

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