第3話 詐欺の発覚
●詐欺商品『タイジュウカルクナールαβγ』
「トルルルルル……
トルルルルル……」
「ハイ、もしもし消費者センターでございます。
消費者センター職員の佐藤健(さとうけん:40歳)こと
サトケンが、マンタローさまを担当させていただきます。」
「あっ、サトケンさんですか? オレは詐欺にあってしまったんです!!
あのっ、実はネットで評判の『タイジュウカルクナールαβγ』
ってヤツに騙されてしまったんです!! 」
「ああ……『タイジュウカルクナールαβγ』ですか?
消費者センターにもたくさんの苦情が寄せられていますよ。
それって、完璧に詐欺商品ですよ!!」
「ちょっ!?詐欺商品!?」
「はい!!『タイジュウカルクナールαβγ』はただのカルシウムの錠剤で、
魔法の秘薬でも何でもありませんよ!?」
「ええっ!?『タイジュウカルクナールαβγ』って、
ただのカルシウムの錠剤なのですか!?」
「ええ、そうですよ!!フォックスオート大学に問い合わせても、
インターネットで検索しても、IQ180超えの天才薬学博士
『グレーゾーン・灰谷(45歳)』なんて人物は実在しません。」
「『タイジュウカルクナールαβγ』はただのカルシウムの錠剤です。
要するに飲んでも体重を減らす効果なんてございませんよ!!」
「それに、グレーゾーン・灰谷という名前は偽名で、
販促ページも消滅してしまっているので、
法律の専門家を雇って集団訴訟するしか手はありませんね。」
マンタローが電話口で叫びだします。
「……ウ、ウワアァァ~~ッッ!?そんなバカなぁぁ~~っっ!!
あの天才薬学博士『グレーゾーン・灰谷(45歳)』が
詐欺師だっただとぉぉ~~っっ!?」
「あ、あのっ……もしもし!?
マンタローさん!? 大丈夫ですか!?」
「うう……集団訴訟の件、考えておきます!!
ですが、ショックで……その……今はそっとしておいて下さい!!
ああ~~っっ!!騙されたぁぁ~~っっ!!」
マンタローはスマホ片手に泣きわめいていました。
そして、タナシンとハナちゃんも心配そうに見つめています。
「マンタロー、どうだった!?
やっぱ詐欺だったんだろ!?」
「マンタローさん!?大丈夫!?
詐欺師なんかに負けちゃダメよ!!」
「あ、2人とも……実は……」
マンタローは事の経緯を2人に話します。
「ええっ!?『タイジュウカルクナールαβγ』は
ただのカルシウムの錠剤なの!?」
「そうなんだよ!!あの天才薬学博士『グレーゾーン・灰谷』なんて、
最初から存在すらしないんだよぉぉ~~っ!!」とマンタローは呻きます。
「ああ……それは残念だったわね……(やっぱり……)」
とハナちゃんは悲しそうに呟きます。
そして、タナシンも少し間を置いてこう言いました。
「マンタロー!!キミはスリムナイスガイになるべく、
ダイエットを始めたんだろ!?
だったら、詐欺にあったからって諦めるなよ!!」
するとハナちゃんもこう言いました。
「そうよ!!マンタローさん!!諦めちゃダメよ!?」
「そっ、そうだな!!タナシン!!
そしてハナちゃん!!ありがとう!!」
「しかし、『タイジュウカルクナールαβγ』と
入院費用でオレのボーナスは吹っ飛び、
さらに自宅アパートの家賃すら払えない状況に陥ってしまったぞ!!」
「マンタロー!?本当に大丈夫なのか!?」
「だっ、大丈夫じゃあないよぉぉ~~っっ!!
明日からどうやって生活していけばいいんだぁぁ~~っっ!!」
すると、タナシンは何かひらめいたようにポンッと手を打ちました。
「まだ、入院期間が1週間ほど残ってるじゃないか!!
コンビニスイーツを食べながら、ゆっくりと今後の対策を考えるんだ!!」
「退院して、次の入居先が決まるまで、ボクが経営する
『(有)タナシンアート』の事務所に
居候させてやってもかまわないんだぜ!?」
「ええっ!?『(有)タナシンアート』に居候してもいいのか?
若くして独立した天才芸術家タナシンの事務所か……」
「それなら詐欺に遭って凹んじまったオレの心も、
少しは晴れるってモンだ!!」
すると、ハナちゃんも話に加わってきます。
「マンタローさん!!
あたしの部屋でいっしょに暮らすという手もあるわよ!!」
「ええっ!?ハナちゃんの部屋に居候させてもらっていいの!?」
「うん!!歓迎するわよ!!」と、ハナちゃんも嬉しそうに頷いています。
「それじゃあ、ハナちゃんのお部屋にお世話になろうかな……」と
マンタローはデレデレと鼻の下を伸ばして嬉しそうに言いました。
タナシンはコンビニスーツを
マンタローの口に押し込みながらこう言いました。
「よしっ!!決まりだ!!
マンタロー、退院の日にうちの事務所に寄ってくれ。」
「ファンから貰った保存食がたくさん余ってるから、
キミの生活の足しに持ち帰ってくれ。」
マンタローは涙を流しながらコンビニスイーツを頬張りつつ
タナシンやハナちゃんの親切に感謝します。
「ありがとう!!タナシン!!ハナちゃん!!
やっぱ持つべきものは親友と親切な同僚だよ!!」
そして、マンタローは残った1週間の入院期間を
コンビニスイーツ三昧で自堕落に過ごします。
「ああ~~っっ!!やっぱ、入院中に食べる
コンビニスイーツは最高だなぁぁ~~っっ!!」
マンタローは入院期間にコンビニスイーツを食べ過ぎて、
110㎏まで太ってしまいました。
●退院当日
マンタローの退院日がやってきました。
マンタローは看護師さんたちから
退院祝いのスイーツてんこ盛りを頂戴します。
「ありがとう!!看護師さんたち!!世話になったな!!
今度会うときは、スリムバディでナイスガイな
マンタローをよろしくなっっ!!」
すると、ハナちゃんがマンタローに声をかけました。
「あっ、マンタローさん!!タクシーは待たせてあるわよ!!
これから『(有)タナシンアート』の事務所に寄るんでしょ!?」
「ああ、そうだったな……
タナシンがファンから貰った保存食を
オレの生活の糧としていくつか持って帰るんだったな……」
マンタローはタクシーに乗り込み、
後部座席で看護師さんたちから頂戴した
スイーツてんこ盛りを一気に平らげてしまいます。
前の座席にはハナちゃんが座っていました。
「ハナちゃん、ありがとうな……オレを励ましてくれて……」
すると、ハナちゃんはこう答えます。
「マンタローさん!!あたし、あなたが
スリムナイスガイになるのを応援するわよっ!!」
「ああ……でも、オレはもうスリムじゃないぜ?
だって110kgまで太っちまったからな。」
とマンタローは自嘲気味に笑いました。
しかし、ハナちゃんがこう続けます。
「何言ってるのよ!?
あなたはまだダイエットを続けられるわっ!!」
「えっ!?ダイエットを続けられるって?」
と、マンタローはビックリします。
ハナちゃんはこう宣言しました。
「いいわ!!これからあたしがスリムナイスガイになれるように
マンタローさんの『理想の体型』をイメージ指導するわ!!」
「これからが血の滲む、本当のダイエットの始まり!!
……とでも言ったところかしら!!」
すると、運転手さんが渋い顔でこう言いました。
「ダイエットも結構だが、あんたの食い散らかした
スイーツのクリームでタクシーの後部座席が汚れちまったよ!!」
「他のお客さんもワシのタクシーを利用するんだぜ!?
最低限、ゴミはちゃんと持ち帰ってくれよな!?」
マンタローは「ああ……スミマセン……」と謝りつつ、
タクシーの運転手さんにも感謝します。
そして、『(有)タナシンアート』に到着しました。
●タナシンの事務所で保存食をゲットだぜ!!
「マンタロー!?退院おめでとう!!よく頑張ったね!!
地下の倉庫にファンから貰った保存食がたくさんあるんだ!!
遠慮なく持ち帰ってくれよ!!」
地下の倉庫を物色するマンタローは
保存食の種類の多さに目を輝かせます。
「ありがとう!!タナシン!! うおっ!!
コレはオレが大好きな三国無双のレトルトカレー!! 」
「おまけに、レンジでご飯もあるじゃねぇか!!
これで、次のボーナスまで暫くは食いつなげるぜ!!」
「フヘへへへッッ!!悪いな、タナシン!!
それじゃ、親友のマンタローが、遠慮なくいただくぜ!?」
すると、ハナちゃんがスイーツの缶詰を発見しました。
「あら可愛い!!これは、プリン缶とケーキ缶よ!!
それにお汁粉缶と、羊かん缶も!! マンタローさん、これはどうかしら!?」
「ああ……ハナちゃん、ありがとうな。」
と、マンタローは嬉しそうに受け取ります。
「それにしても、タナシンってスゲェよな!?
ファンからこんなに差し入れを頂いちゃうなんてよ!!
オマエ、どんだけ売れっ子の芸術家なんだよ!?」
すると、タナシンがこう言いました。
「いや、ボク1人じゃとても食べきれないし、
部下たちにも持ち帰ってもらってるんだけど、
中々減らなくってさ……」
「まっ、キミは食いしん坊だから遠慮せずにガンガン持ち帰ってくれ。」
「おっ、そうだな!!ありがとうな!!」
そしてマンタローは待たせてあるタクシーのトランクに
詰め込めるだけ保存食を詰め込んで、
ハナちゃんのマンションに向かいます。
しかし、これからさらなる厳しい試練が待ち受けていることを
呑気なマンタローはまだ知る由もありませんでした。
つづく
体重100キロのオレが詐欺に遭って体重120キロになった件 靄嶌翔(もやしましょう) @moyashima
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