質疑応答
「少し、空気を重くしてしまいましたね。
これは順番的に、最後に持ってきた方が良かったようです。即席となると、物語の構成力が下がってしまう。私の悪い癖です。
ここからは少し、明るい話に変えていきましょう!」
西野圭子はそう言って、別の話を始めた。暗くなっていた講義室の空気は、西野圭子の話術によって、段々と明るくなっていった。
最終的には、最初の重い話はどこへやらと言った具合に、賑やかな講義室となった。
「……ええ、少し、楽しく話し過ぎたようで、ついつい、次回作について話してしまいました。
このことがバレると、編集者さんに怒られるので、他言無用でお願いします。
ということで、まだ少し時間があるそうなので、ここからは質疑応答の時間をしたいと思います。
誰か、質問のある方はいらっしゃいますか?」
西野は手を上げて、質問を促した。
梨子はせっかくなので、質問することにした。梨子は手を大きく挙げた。他の人も数人手を上げていたが、私は手前の席に座っていたので、講義中にも目がよく合っていた。そのため、西野自身も気になっていたのだろうか、すぐに私に目を付けた。
「じゃあ、そこの女の子!」
西野はそう言って、私を指差した。私はそう言われると、席を立って、喋り始めた。
「えっと、今日は興味深い話ばかりありがとうございました。」
梨子がそう言うと、西野は笑顔で軽い会釈をした。
「私は西野先生の作品を最近読み始めたのですが、1つだけ分からないことがあるんです。
それは、底抜けの壺についてなのですが、先ほどの過去の経験を重ね合わせてその作品を書かれたということですが、どうにも、底抜けの壺という題名の意味が分からないのです。
少し、考察してみたい気もしますが、せっかく作者本人がいらっしゃるので、底抜けの壺の真意を教えていただきますでしょうか?」
梨子がそう言うと、西野が口を開き、質問に答えようとする。
「駄目だ!」
それまで、傍観していた天神教授が急に大声で西野の返答を止めた。講義室は何が起こったのだと騒然とした。
「その質問は私から答えよう。
前回のゲーム理論の復習をすること。以上だ。」
天神教授はそう言った。
「どうやら、そうみたいです。」
西野は少し驚いた表情だったが、教授が作り出した変な空気を打ち消すように、梨子へとほほ笑んだ。
「じゃあ、他に質問のある人はいますか?」
そう言って、西野は質疑応答を続けた。
梨子にはまだ分からなかった。
天神教授が底抜けの壺の真意を隠す理由を。
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