月曜日 月夜を見上げて

「これは難題だね。ラグランジェ方程式をテイラー展開した後で、ラプラス変換するしかないよ。それが無理ならフェルミ推定だ」

「ラ、ラグラージ……? ラプラス?」

「ラグランジェ。ラプラスは合ってるよ」

 お姉さんはプリントを見ることなく適当に言った。

「……真面目に答えてよ」

「だから」

 お姉さんはプリントを僕の方に寄せて

「宿題は自分でやらなきゃ」

「ちぇ」

 僕は仕方なく数プリを受け取って、筆算を始めた。63個のりんごを、3人で分けたら、一人分はいくつになりますか。ええっと。

「もう、少しは手伝ってくれてもいいのに」

「だめよ。私、仕事中なんだから」

 月曜日の午後三時。月曜は六時間目が無いので、少し早く学校が終わったのだ。そしてお姉さんは月曜日に科学館でバイトをしている。

「ねえ、やっぱりお姉さんには筆算なんて楽勝なの?」

 筆算に飽きて、お姉さんに訊いてみる。

「まあね。そのプリントの内容くらいなら、暗算でもできるかな」

「すごい!」

 僕は素直に感心した。

 あの出会いから、二ヶ月とちょっとが経った。今は六月の終わり。僕はあの後、普段以上に科学館に通うようになって、お姉さんとたくさん話した。そして、お姉さんのことをいくつか知ったのだった。

 お姉さんは千夏さんという。近所の大学に通う大学生だ。今年入学したみたいで、この町に引っ越してきたのも今年らしい。

 これは少し驚いた話なのだけれど、大学では理系と文系、という風に分かれているらしい。理系は算数とか理科だけを学んで、文系は国語と社会だけ学ぶようだ。クラスによって学ぶ教科が違うってことなのだろうか。

 それはちょっぴり羨ましい。大学生になったら、算数をしなくていいのだ。僕は絶対に文系を選ぶと思う。……でも、漢字テストは苦手だから、結局どっちも嫌かもしれない。

「お姉さんは理系なんだよね」

「ん? そうだよ」

 お姉さんはぼんやりと周囲を見ながら答えた。科学館でバイトしていることからもわかるように、お姉さんは算数と理科が好きらしい。そんなお姉さんは理系になったようだ。

「でも大学の算数って難しいんだろうな」

「そりゃあ、難しいね」

「ね、大学は楽しい?」

「まあね」

 一言返事すると、お姉さんは黙ってしまった。僕はもう少し大学の話を聞きたかったので、

「どう楽しいの?」

 と尋ねた。お姉さんは少し考え、

「まあ、楽しいことだけじゃないよ。授業は難しくなるし」

「楽しい授業は無いの? 体育とかさ」

「大学に体育はないんだよね」

 え! 信じられない!

「他に楽しい講義は……どうだろう」

 お姉さんはそれきり黙ってしまった。

「……そう」

 僕はプリントに目を落とす。

 お姉さんは、自分のことをあまり話したがらない。この二ヶ月で、沢山お話したけれど、結局お姉さんについて知ったことは、名前が千夏さんだということ、理系の大学一年生だということ、この町で暮らすのは今年からということ、科学館でバイトしてること。それだけだった。

 楽しかったことを尋ねても、嫌だったことを訊いても、お姉さんは少し困ったように笑って、「別にないかな」と言うのだった。大学のことが気になっても、お姉さんは何も教えてくれない。僕は、お姉さんのことを何も知らない。

 そんな謎めいたお姉さんは、かっこよかったし、でも、ちょっぴり寂しい気もする。本当はもっと、お姉さんのことを知りたいのに。

「あ、そこ違うよ」

 突然、お姉さんが声を上げた。

「え?」

「ほら、ここ」

 お姉さんがプリントを指でトン、と叩いた。

「7の段で、50より小さい、一番大きな数は?」

「え? しちろく42? ……じゃなくて、しちしち49!」

「そうそう」

「ホントだ。ありがとう」

 消しゴムでプリントをこすって、筆算し直す。

「ちゃんと見ててくれたんだ。仕事中なのに」

 僕がにやりと笑うとお姉さんは困ったように笑った。

「まあ、誰もいないからね」

 僕達は今、科学館の端に置いてある、小さなテーブルの椅子に座っている。お姉さんはバイトの時、ここにいることが多いのだ。そしてふと疑問に思った。

「ここでいつも何してるの? ただ座ってるだけ?」

「そんなわけないでしょ。きみみたいな悪ガキが怪我しないように見張ってんの」

「……」

 でも人がいない今は、やっぱりただ座っているだけじゃないだろうか。そう思ったけれど、口にはしなかった。

「あとは、子供の質問に答えたりしてるの。熱心な子供に教えてあげるんだ」

「ふうん」

 そんな熱心な子供がいるのだろうか。

 と、

「あ、熱心な子供ならここにいます!」

 僕は手を上げた。

「きみのどこが熱心な子供よ」

「これです」

 僕はプリントを持ち上げた。

「このプリントについて、たくさん質問があります! 手伝ってください!」

「……」

 お姉さんはため息を吐いて、辺りを見回した。見回してみても、科学館には誰もいない。お姉さんはもう一度ため息を吐いた。

「もう、しょうがないな。ほら、隣座って。見せてみ」

「やった!」

 これで数プリは早く終わるだろう。


「終わった!」

 プリントを持ち上げて眺めてみる。カンペキだ……。

「……筆算なんて、私なんかいなくても、自分一人でできたでしょうに」

「いいの。お姉さんに教えて欲しかったの」

「そう」

 お姉さんは素っ気なく言った。

 ともかく、これで算数はお終い。あとは漢字ドリルだけだ。それもそれで面倒なのだけど、特に頭を使わないから楽なのだ。後でアニメでも見ながら適当に済まそう。

 宿題を終えて、僕はお姉さんの隣で一緒に科学館を眺めた。本当に人がいない。

「……ねえ」

 しばらくして、お姉さんが僕に声を掛けた。

「何?」

「ここにいて楽しいの? 座ってるだけじゃ退屈でしょ? 遊んできたら?」

「いい。ここにいる」

「そう」

 そしてまた二人で科学館を眺める。

「……」

 ここにいたいけれど、でもお姉さんの言う通り、ただ座っているだけでは退屈だった。漢字ドリルを片付けてしまおうか、とランドセルに手を伸ばして

「あ」

 ドリルではなく、クリアファイルを取り出した。そこに挟まった紙をぱらぱらと捲る。漢字ドリルなんかより、ずっと重要な問題があるのだ。それについてお姉さんに相談しようと思っていたまま、忘れてしまっていた。

「あった」

 そして僕は一枚の紙を取り出した。

「何それ」

 お姉さんは不思議そうな顔でそれを覗き込んだ。

「うん。先週拾った紙なんだけど、これについてお姉さんに質問があって」

「私に?」

 お姉さんはその紙を覗き込むと、ますます不思議そうな顔をした。

「これ、なに? ずいぶんとくしゃくしゃだけど……」

 その紙にはいくつもの折り目がついていた。でも、単にぐしゃぐしゃにしただけではない。この折り目には意味がある。

 僕は紙についた折り目に合わせて、紙を折った。一辺の真ん中に向かうこの折り目を、僕はよく知っている。

 そして、折り終えたそれを見て、お姉さんは頷いた。

「ああ、紙ひこうき」

 僕も頷く。そう、この紙は紙ひこうきだったのだ。……だったのだけど。

「でも、それが変なんだよ」

 僕はもう一度紙を開いて、中を見た。

「千夏さんに訊きたいのは、これなんだ」

 千夏さんも紙をのぞき込み、首を傾げた。

「……ふうん、確かに、ちょっと不思議ね」

 紙ひこうきだったその紙。その紙はなんと、文字で埋められていた。僕はその一文を読み上げる。

「おばあちゃんへ」

 続けて

「おばあちゃんげんき? ぼくはげんきだよ」

 こう書かれていた。そう、この紙は

「手紙……」

 お姉さんがぽつりと呟いた。僕は頷く。お姉さんはそのまま紙を持ち上げて、じっくり観察した。

「よく見てみると、この紙も便箋だね」

 僕はもう一度頷く。この紙は明らかに手紙なのだ。

 そして言うまでもないけれど、手紙は誰かに読ませるためにある。今回の場合、この手紙は「おばあちゃん」に届けられなければならない。

 しかし。

「でも、この手紙は、紙ひこうきとして折られて、マンションから投げ捨てられたんだ」

 この手紙は「おばあちゃん」に届くことはなく、そして僕が拾った。見たところ、手紙は丁寧に書かれており、捨ててしまうようなものではない。もしも捨てることになっても、紙ひこうきにしてしまうなんて、少し考えられない。

「ねえ、千夏さん。どうしてこの手紙は紙ひこうきになって、捨てられちゃったのかな」

 僕の疑問はこうだった。これをお姉さんに訊きたかったのだ。

 まあ、どうでもいい謎ではあるのだけれど、でも、おばあちゃんへの手紙が捨てられてしまうというのは、何だか気分が悪かった。いや、それ以上に意味がわからなかった。

 だから、何か納得できる理由が欲しかったのかもしれない。

 千夏さんはアゴに手を当てて数秒考え込み、

「……詳しい話、聞かせてくれる?」

 お姉さんは珍しく身を乗り出して、僕の話に耳を傾けた。科学館に人は居ない。丁度良い暇つぶしになると思ったのだろう。

 僕はこの紙を拾った時のことを思い出し、できるだけ正しく伝えようと思った。

 そう、あれは先週の月曜の夜……満月の夜のことだった。


 その日の満月は何か特別だったらしい。スーパームーンといって、月が大きくなるのだとか。月の満ち欠けは知っているけれど、月自体の大きさが変わるのはなんでだろう、なんてぼんやりと考えながら、僕は庭に出た。

 別に、星や月を見るのが好きなわけじゃなかった。でも「特別」なんて言われてしまうと気になってしまう。僕は珍しいもの見たさで夜空を眺めたのだ。

「大きいのかな?」

 そのスーパームーンを見つめ、僕は首をひねった。確かに大きい気はするけれど、しかし思ったほどじゃない。僕はもっと、こう、月のうさぎがはっきりと見えるくらい大きくなるのだと思っていたのだ。だから少し、がっかりした。

 これじゃあ普段の満月と変わらないじゃん、と月に向かって文句を言って、家に戻ろうとしたその時だった。

 ガラガラ、と濁った音が聞こえた。振り返って見上げると、隣のマンションのベランダに人影が見えた。子供……僕よりも小さい子供が、窓を開けて外に出ている。そしてその直後、そのお母さんらしき人もベランダに出た。

 僕は「あの親子もスーパームーンを見るのかな」と思った。そしてその予想どおり、二人は夜空を指さし、何か言っているようだった。

 しかし、その時だった。

「あ」

 その子供が、鉄格子の隙間から何かを投げた。ポイ捨てとはなんて悪い子供だろう。僕は直接嫌がらせを受けたわけでもないのに、何故かむっとして、その親子を眺めた。

 不思議だったのは、そのお母さんがポイ捨てをした子供を全く叱っていなかったところだ。ポイ捨ては明らかに悪いことである。そんなこと僕にだってわかる。それなのに母親は全く怒っていなかった。それどころか、子供の頭を撫でていたようにも見えた。

 そしてその親子は、そのまましばらく夜空を見上げていた。話すのを止め、静かに月を、満天の星を見上げていたのだ。

 ポイ捨てをした子供と、それを温かく見守っていたお母さん。僕には意味がわからなかったけれど、その親子はその時間を大切にしているように見えて仕方なかった。

「いて」

 その時、ぽすり、と何かが髪に刺さり、そして地面に落ちた。屈んでそれを拾い上げてみると、紙ひこうきだった。

「なんでこんなところに」

 そう呟いて気づいた。きっと、さっき子供が投げたものが、これだ。あの子供は夜空に向かって、この紙ひこうきを飛ばしたのだ。

 しかし、子供が投げたものが紙ひこうきだと分かったからといって、謎が解けるわけではなかった。もしも僕が教室から紙ひこうきを飛ばして遊んでいたら、きっと先生は怒るだろう。投げるモノがなんであれ、ポイ捨てには変わらないのだ。

「そろそろ、おうち入ったら?」

 今度は僕の家の窓が開いて、お母さんが僕を呼んだ。

「うん。もう入る」

 僕は紙ひこうきを手に持ったまま、家の中に向かった。そして戻る前にもう一度振り返って、あのマンションを見上げた。

「……」

 その親子は、まだ夜空を見上げたままだった。静かに、遠くを、じっと見つめていたままだった……。

 そして謎はさらに増えた。

 部屋に戻って、その紙ひこうきを何気なく眺めているうちに、僕は気づいたのだ。その紙が便箋であることに。そして、その便箋が役目に従って「おばあちゃん」へのメッセージを載せていることに。この紙ひこうきは、手紙だったのだ。

 しかし、その手紙は「おばあちゃん」に届くことはなく、月夜に浮かべられてしまったのだった……。


「これが、先週の月曜の夜にあったことだよ」

 僕の説明を聞いて、千夏さんはじっと考えるように視線を下げた。そしてアームチェアに深く腰掛け、

「確かに不思議だね」

 と肩をすくめた。

「この手紙、おばあちゃんに届けなくていいのかな」

 僕はその紙を見つめ、呟いた。この手紙には心が込められている。字は下手っぴだけれど、丁寧に書いたことがわかる字だった。内容も、感謝や会いたいというものだった。この手紙は「おばあちゃん」に届けられるべきだ。

 多分、この手紙を書いたのはあの子供だと思う。でも、あの子供はいいのだろうか。こんなに丁寧に書いた手紙を捨ててしまうなんて……。

「……ねえ」

 落ち込んだ僕にお姉さんは声を掛け、そして手を差し出した。

「手紙、見せて。内容から何かわかるかもしれないよ」

「え、うん」

 確かに、手紙の内容を深く読めば、あの子供の行動も理解できるかもしれない。僕はお姉さんに手紙を渡した。

 しかし渡した瞬間、お姉さんは目を細めて手紙とにらめっこした。そして困ったように笑った。

「ひらがなばかりで読みづらいかも」

「そう? 僕には読めるよ」

 でも確かに、字は綺麗ではなかったし、ひらがなを間違えている所もあった。大人のお姉さんには読めないのかもしれない。

「しょうがないな。僕が書き直すよ」

「お、偉いね」

「まあ、暇だし」

 僕は鉛筆箱と自由帳を取り出して、手紙を清書した。書けるところは漢字で書いて、少しでもお姉さんが読みやすくなるように気をつけた。

 お姉さんはそれを見て

「……知ってたけど、きみも字が汚いね」

「うるさいなあ」

 ともかく。これで少しは読みやすくなっただろう。僕とお姉さんは自由帳を見た。


 おばあちゃんへ

 おばあちゃん元気? ぼくは元気だよ。

 さい近はおばあちゃんに会えてなくて、少しさみしい。

 ぼくはおばあちゃんと遊ぶのが大好きだよ。学校の帰りにおばあちゃんの家に行くのが、とっても好きでした。

 紙ふうせんで遊ぶのとか、きょう竜ごっこがとっても好きだから、おばあちゃんと会えたら、またしたいな。

 夏になったら、おばあちゃんはぼくの家に来るって、お母さんが言ってたよ。おばあちゃん。こんどはぼくの家で遊ぼうね。


 これで全部だ。

 お姉さんは自由帳をじっくりと見つめた。

「……何かわかった?」

「……そうね」

 お姉さんはまた少し黙って

「気になる点が何個か」

 お姉さんは僕の字を指さした。

「まずはここかな」

 お姉さんが指していたのは、『学校の帰りにおばあちゃんの家に行くのがとっても好きでした』の部分だった。

「これがどうかしたの?」

「うん。これはちょっぴり気になるね」

 一体何が気になるのだろう。おばあちゃんの家が学校の帰りに寄れる距離にあるのが不思議、ということだろうか。しかし、おばあちゃんの家だからって遠いとは限らない。学校が終わったあと気楽に行ける距離に、おばあちゃんの家があっても不思議じゃないと思う。実際、同級生の中には一緒に暮らしている人だっている。

「一体、何が気になるの? おばあちゃんの家が近くても、不思議じゃないと思うけど」

「うん。私も家が近いことに疑問はないよ。気になったのは、手紙なんだ」

「?」

「つまりね、学校の帰りに寄れるくらい近いのに、なんで手紙を書いたのかなって」

「あ……」

 言われてみれば、確かに少し気になる。手紙を書かなくても、会って直接言えばいい。顔を見せて話す方が、きっとおばあちゃんも喜ぶはずなのに。

 近いのに手紙を書いた理由。僕はその理由を考えた。

 手紙、夜、紙ひこうき……。

「あ、わかった」

 ぽん、と手を打った。千夏さんは少し驚いたように僕を見た。

「へえ、聞かせて?」

「うん。それはきっと、夜だったからだよ」

「夜?」

「うん。あの子は夜におばあちゃんと話したくなったんだ。でも、夜に会いに行くのは、ちょっと迷惑でしょ?」

 この間の夜、突然友達と話したくなって、電話をしようとした。その時、お母さんに「迷惑だからやめなさい」と叱られたのだ。確かに、その時僕が起きていても、友達が起きているかはわからない。もしも寝ていたら、起こしてしまうことになってしまって、それは迷惑だ。

「だから、手紙にしたの」

「でも、それなら次の日に話せばいいんじゃない?」

「そうだけど、でも急に伝えたくなることだってあるでしょ?」

 お姉さんは少し納得していない様子だったけれど、取り敢えず頷いてくれた。

「じゃあ、もう一つ質問。急いでいたとして、どうやって手紙を届けるの?」

「そう! それ!」

 思わず声が大きくなってしまった。でも、僕の一番の思いつきが、そこにあった。

「千夏さん。これはただの手紙じゃなかったでしょ?」

 お姉さんは頷いた。

「そうね、これは、紙ひこうきだった」

 そう。紙ひこうき。そっと風に乗せてあげると、大空を駆けていく、紙のひこうき。だったら、飛べる。ちょっとの距離なら、飛んでいける。

「千夏さん。おばあちゃんの家は、学校の帰りに行けるくらい近かったんだ。だったら、紙ひこうきで飛んでいけると思わない?」

 つまり、

「あの子供は、おばあちゃんと話したかった。でも、夜に行くのは迷惑になっちゃう。だから手紙を書いたんだ。そしてその手紙を紙ひこうきにして飛ばすことで、すぐに届けた。どう? これでおばあちゃんの家に行かずに、おばあちゃんに言葉を伝えることができるよね」

 言って、胸を張る。これで全ての謎は解けた。

 と思ったのだけれど

「……ちょっと、無理があるかな」

 お姉さんは申し訳なさそうに微笑んだ。

「えー? どこが?」

「紙ひこうきをおばあちゃんの家に届けようとしたところ。どのくらい家が近いかはわからないけど、でも紙ひこうきを正確に飛ばすのって難しいでしょ? 実際、きみの家に来ちゃったわけだし」

「でも、あの紙ひこうきを飛ばしたのは子供だよ。僕よりずっと小さい子の発想だと思えば、変じゃないんじゃない?」

「そうね。でも、あの場にはお母さんもいたんでしょ?」

「あ」

 それではっとした。確かに、お姉さんの言う通りだ。子供の発想としては変ではない。でも、あの場には大人がいた。紙ひこうきがおばあちゃんの家に届かないことを知っている大人がいたのだ。

「おばあちゃんの家に飛ばしたい、って意図だったのなら、お母さんは止めたと思う」

「……確かに、そうかも」

 納得するしかなかった。さすが、大学生のお姉さんだ。話のおかしいところに直ぐに気づいて、きちんと説明してくれる。

 悔しくも感心していると、お姉さんは微笑んだ。

「それに、もう一つ」

「?」

「きみの話が正確なら、おばあちゃんの家に飛ばしたっていうのは、やっぱり少し変なんだ」

「どうして?」

 僕の話に、何かヒントがあっただろうか。僕は先週の夜のことをもう一度思い出した。けれど、さっぱりわからなかった。

 頭をひねる僕を見て、千夏さんは微笑んだ。

「いい? 思い出して? きみは『親子は紙ひこうきを投げた後、しばらく空を見ていた』って言ってたよね?」

「え?」

 もう一度振り返って、よく思い出してみる。あの親子は紙ひこうきをベランダから投げた後、ずっと夜空を見上げていた。記憶に間違いはないと思う。

 僕が頷くのを見て、お姉さんは言った。

「だったら、おばあちゃんの家に飛ばしたっていうのは少し変じゃない?」

「どうして?」

 あの親子が空を見上げていたからといって、それが一体なんだというのだろう。

「いい? あの親子が見ていたのは空なんだ。地上の家じゃないんだよ」

「え?」

 お姉さんは空を指さして

「あの紙ひこうきは、おばあちゃんの家に目掛けて飛ばされたものじゃない。行き先は、空だったんだ」

「あ、そうか」

 確かに、お姉さんの言う通りだ。あの親子は、紙ひこうきを投げてから……いや、投げる前からも、ずっと空を見上げていた。もしもおばあちゃんの家に届けることが目的ならば、どこかのタイミングでは地上を見つめていなければおかしい。

 しかし、あの親子は地上を見なかった。狙いを定めるために家を見ることも、おばあちゃんの家に届いたかどうかを気にして地上を見ることもなかったのだ。

 そしてその代わりに、親子が見つめていたものは夜空だ。だとすれば、やはり紙ひこうきの行き先は空ということになる……のだろうか。

「でも千夏さん。それだと意味がわからないよ。なんで空に紙ひこうきを飛ばす必要があるの? どうしてお母さんは怒らなかったの?」

 僕が不思議に思っていると、お姉さんは苦笑した。

「さて、どう説明したものかな」

「そうだよね……一体どうして……」

 言いかけて、ふと顔を上げる。

「千夏さん今、『どう説明したものか』って言った?」

「うん。言ったよ」

 お姉さんはあっけらかんとしている。だとすれば、聞き間違いじゃなくて、お姉さんは言ったのだ。「どうしてかな」ではなく、「どう説明しようかな」と言ったのだ。

「じゃあ、お姉さんにはわかっているの?」

 思わず前のめりになって尋ねる。お姉さんは少し困ったような顔をした。そして迷ったように視線を泳がせ、でもすぐに僕のことを見つめなおして、言った。

「うん。実は、わかっちゃったんだ。全ての謎は解けたよ」


「ちょ、ちょっと待って! 言わないで!」

 僕は慌てて、お姉さんが何も言わないように手を振った。お姉さんの方が賢いのは仕方がないけれど、それでもやっぱり悔しい。

 お姉さんは微笑みながら、僕の言葉を待ってくれた。

「ええっと」

 僕はもう一度考えてみる。あの手紙は空に放り投げられた。つまり、捨てられた、ということだろうか。だとすれば

「……あの子供とお母さんは、おばあちゃんのことが嫌いだった」

「うん?」

「だから、あの手紙が届かないようにした、とか」

「だったら、どうしてそもそも手紙を書いたの?」

「……僕が見た子供と、手紙を書いた子供は別だったんだ。あの子には兄弟がいて、その子はおばあちゃんが好きで手紙を書いたけど、僕が見た子とお母さんは嫌いだった。だから捨てたんだ」

「ううん」

 お姉さんは頭を捻って

「やっぱり、無理がない?」

「ある……」

 僕は自分で認めた。兄弟の間で、おばあちゃんのことを好きか嫌いかが分かれることは、変だとも言い切れない。でも、どれだけおばあちゃんのことを嫌っていても、手紙を捨ててしまうなんて、ちょっと変だ。それに、ただ捨てるのではなく、紙ひこうきにした理由もわからない。

 他に、何か考えられないかな、とじっくり考える。でも、やっぱり思いつかない。

 僕がうんうん唸っていると、お姉さんは無言で僕の顔を覗いてきた。

「……もう、わかったよ。降参」

 僕は深く息を吐いて、椅子に体重を預けた。

「教えて、千夏さん。一体、どうして手紙を紙ひこうきにして飛ばしたの?」

 尋ねると、お姉さんは一度小さく頷いた。

「でも、その前に。これから私が話すことは真実とは限らない。私はその男の子じゃないし、投げた瞬間を見ていたわけでもない。だから間違っているかもしれないけど、それでもいい?」

 お姉さんの言う通り、確かな真実はわからない。それこそ、単なるイタズラだった、という可能性だって否定はできない。

 だから、

「うん。僕が納得できれば、それでいいんだ」

 謎が解けたからといって、それで何かが起こるわけでもない。これは単純に、僕の中のモヤモヤを解消したいだけなのだ。

 千夏さんは「わかった」と言って、僕の自由帳を手元に寄せた。二人でそれを覗き込む。

「いい? この手紙には、もう一つ不思議な所があるんだ」

「不思議な所?」

 お姉さんは僕の顔を見て、小さく頷いた。その時お姉さんと目が合って、僕は少し固まってしまった。お姉さんが何故だか、とても優しく温かい目をしているように見えたのだ。

 千夏さんは優しい目をしたまま、ノートに目を落とした。

「ここ。『最近はおばあちゃんに会えてなくて、少し寂しい』って書いてあるでしょ?」

「うん」

「でも、それって少し変じゃない?」

 そうだろうか。僕だって三年生の冬休みに会ったきり、おばあちゃんには会えていない。不思議だとは思えなかった。

 その考えが伝わってしまったのか、お姉さんはゆっくりと首を横に振った。

「私は変だと思うな。だって、この子の家からおばあちゃんの家は、学校の帰りに寄れるほど近かったんだよ?」

「あ、そうか」

 確かに、家が近いならば行けばいいのだ。寂しいと手紙に書くくらいなら、おばあちゃんの家に行ってしまえばいい。

 ……だけど。

「でも、あの子はおばあちゃんの家に行かなかった」

 僕の呟きにお姉さんもゆっくり頷いた。

「そう。この子はおばあちゃんに会いに行かなかった。正確に言えば、会いに行けなかったんだろうね。手紙にも『寂しい』って書いてるから、本当は会いたかったんだろうけど、でも、会えなかった」

 お姉さんはまた僕に優しい目を向けた。

「じゃあ、どうして会えなくなっちゃったんだろう」

「……」

 お姉さんの問いに、少し悩んだ。会えなくなる理由なんて、いくらでもある。あの親子が引っ越しをして、おばあちゃんの家からは遠くなってしまったのかもしれない。おばあちゃんが病気になったのかもしれない。

 でも、それでは手紙を届けなかった理由にはならない。届かない手紙。会えないおばあちゃん。そのことから考えるとするならば。

「……おばあちゃんは、亡くなっちゃったのかな」

 ぽつり、と呟く。お姉さんは無言のままだった。それで、僕の答えがお姉さんの考えと一緒であることがわかった。

 あの手紙は亡くなったおばあちゃんに向けた手紙だったのだ。

「『夏になったら僕の家に遊びに来る』って書いてあるでしょ? これは多分、お盆のことじゃないかな?」

「おぼん?」

「うん。夏のお盆の間は、亡くなった人がこの世に戻って来るって言われているの。だから、夏になったらまた会えるでしょ?」

「……」

 僕は今まで、「おぼん」はお父さんの仕事が休みになる日、としか思っていなかった。でも、お盆は亡くなった人々に……もう二度と会えない人に会える、特別な日なのだ。

 あの子供も、きっとおばあちゃんともう一度会えるのだろう。

「でも、僕にはまだわからないことがあるんだ」

 僕はお姉さんをじっと見た。多くの謎は解けたけれど、一番大きな謎が僕の中に残っていた。お姉さんにとっては言うまでもない謎かもしれないので、わざわざ訊くのも恥ずかしいのだけれど、でも、聞かなければいけないような気がした。

「なあに?」

「なんで、紙ひこうきにして飛ばしたの? おばあちゃんは亡くなっているから、手紙を届ける先がないっていうのはわかったけど、紙ひこうきにした理由は何?」

 尋ねると、お姉さんは僕のことを笑ったりしなかった。代わりに瞼を閉じて、お姉さんは首を横に振った。

「違うよ。手紙を届ける先はあったんだ」

「え?」

「ねえ、人は亡くなったら、どうなると思う?」

 お姉さんが尋ねる。僕はまだ、死について考えたことはない。だからよくわからないけれど。

「……全部消える、とか?」

「寂しいことを言うね。もっと、夢のある話を聞いたことはない?」

「?」

 僕が考えていると、お姉さんは天井を指した。

「人は亡くなると、天に昇って……」

「あ」

 その続きは、僕も知っている。お姉さんと声を合わせて言った。

「お星様になる」

 お姉さんは頷いた。

「この紙ひこうきは、お星様になったおばあちゃんに向けて飛んだんだ。ちゃんと、おばあちゃんに届けるために」

 だから、あの親子は夜空を見上げた。見上げ続けた。そこにおばあちゃんがいて、そこに届けたい言葉があったからだ。

「……納得したよ」

 僕は小さく呟いた。


 科学館に人はいないまま、とても静かだった。

 ふと手紙を見つめてみる。亡くなった人への手紙。静かなこの空間で、じっとこの手紙を見つめていると、少しだけ寂しくなる。温かい願いであることは間違いないのだけれど、それでもやっぱり、僕は寂しい。

 人はいつか死ぬ。おばあちゃんだって、おじいちゃんだって、お母さんだって、お父さんだって、千夏さんだって……そして、僕だって。

 それはきっと、どれだけ考えたところで、どうしようもないことなのだろう。

 だけど……仕方がないのだけれど、それでもやっぱり怖い。

 その時、この静かな空間がとても不気味に思えた。ここには僕が一人ぼっちで、それが永遠に続くんじゃないかと、そんな嫌な想像が頭に浮かんで僕は慌てて顔を上げた。

 けれど、そこにはお姉さんがちゃんと居て、変わらず優しい目をしている。

 その瞳に安心して、僕はじっとお姉さんと目を合わせた。すると、お姉さんは何も言わず、僕の頭に手を伸ばして胸の方へ抱き寄せた。僕はお姉さんに導かれるまま身体を預ける。

 しばらく僕は目を閉じて、お姉さんは僕の頭を撫でていた。どのくらいの時が経っただろう。

「あの手紙さ」

 僕は呟いた。

「うん?」

「あの手紙、僕がもう一度飛ばすよ。あれはおばあちゃんに届けなきゃ。僕が拾っちゃ、駄目だったんだ」

 ぴくり、と僕を撫でる手が一瞬止まり、

「うん。それがいいよ」

 そう言って、お姉さんはまた僕を撫でた。

「……すごいね。子供って」

「え?」

 顔を上げてみると、お姉さんは微笑んでいた。

「お星様になったおばあちゃんに手紙を届けるなんて、私には思いつかないな」

「そう? すぐに見抜いていたじゃん」

 お姉さんは首を横に振った。

「私は、手紙と状況から導き出しただけだよ」

「僕はそっちの方が凄いと思うけど」

 これは僕の本音だった。お姉さんのことは前から尊敬していたけれど、今日のお姉さんは頭が良くて、優しくて、とってもかっこよかった。手紙からおばあちゃんの現在を導き出すなんて、僕にはできない。

 だけど、お姉さんは困ったような顔をするばかりだった。

「そんなの、大したことじゃないよ。子供の純粋さの方が、ずっと……」

 お姉さんは変わらず優しい目をしていた。

 けれどその目が、何故かとても弱々しく見えた。

「千夏さん?」

 突然、怖くなった。お姉さんはここに居るのに、ふとどこか遠くに行ってしまうような気がした。

「千夏さん」

「なに?」

 ぎゅっと手を握った。

「僕、また来るから」

「え?」

「また、科学館に来るから。待っててよ」

 じっと千夏さんの瞳を見つめる。

「約束」

 千夏さんは驚いたようにぽかんとしていた。けれど、すぐににやりと笑って

「そんなこと言って、また宿題手伝わせるつもりなんでしょ」

「ち、違うよ。僕は、お姉さんと……」

 何か言おうとして、言葉に詰まった。お姉さんと、なんだろう。僕はお姉さんをどうしたいのだろう。僕はお姉さんにどうしてほしいのだろう。

「えっと」

 自分でも分からずきょとんとしていると、お姉さんは僕の頭をぽんと軽く叩いた。

 そして

「うん。またおいで。待ってるから。約束」

 お姉さんは笑顔を作った。その笑顔に影はない。先ほどの寂しい笑顔は、僕の見間違いだったんじゃないかと思うほど、その表情は透き通っていて、明るかった。

 僕はお姉さんと指切りをして、約束を交したのだった。


 まだ六月だけれど、なんだか暑いし昼間はセミも鳴き始めていた。もう夏だ。窓を開けると夜風が吹いて気持ち良かった。

 僕は今日のことを思い出しながら、日記にお姉さんのことを書き込んでいく。日記は僕の日課である。こうして日々を記録しておけば、読み返した時、その時の体験が鮮やかに頭に思い浮かぶのだ。だから、なるべく詳しくかかなきゃいけない。

「月曜日、と」

 汚い文字で書き込んでいく。毎日こんなに文字を書いているのに、どうして全く上手にならないのだろう。僕の字が上手になることは一生ないのだろうか。

 最初の数文字を書き込んだ後、僕は諦めて乱雑な文字を書いていく。

「千夏さん、凄かったな」

 部屋で呟く。手紙の正体と紙ひこうきの意味。あんなに少ない手がかりから、全てを見抜いてしまったのだ。

 やっぱりお姉さんはとっても大人で、僕はまだまだ子供だ。僕はお姉さんの説明をただただ聞くことしかできなかった。

 ふと、日記を書く手が止まる。

「死……」

 今日の出来事を書く上で絶対に触れなければならないことだ。今日、静けさに包まれた科学館で、僕は死の恐怖に震えた。そして今、一人きりの子供部屋でその恐怖がまた僕を襲った。

 あの時は隣にお姉さんがいた。だから安心したけれど、でも今は一人だ。それがなんだかとても心細い。一階にはお父さんとお母さんがまだ起きているはずだけど、でも二階の子供部屋に一人でいると、家の中で独りぼっちになってしまったような感覚がある。

 一体、僕は何歳まで生きられるのだろう。お父さんとお母さんはいつまで僕を守ってくれるのだろう。そしておじいちゃんとおばあちゃんは、いつまで元気でいられるだろう。

 僕のおじいちゃんとおばあちゃんは、全員とても元気で、年なんて全然感じさせない。だから身の回りの誰かが消えてしまうなんて……世界が変わってしまうなんて、そんなの信じられなかった。

 だけど人は死ぬ。必ず死んでしまう。身近な人が亡くなってしまったことはまだないけれど、その悲しみは思っているよりも、ずっとすぐに起こってしまうのかもしれないのだ。

 そうなったらきっと、僕は耐えられない。いつも一緒にいた人が永遠にいなくなってしまうなんて、そんなの嫌だ。

 じんわりと視界が曲がった。ぽたりと涙が濡れて、日記が滲んでしまう。僕は腕で目を拭った。

「手紙、届けなきゃ」

 クリアファイルから便箋を取り出し、皺を伸ばした。そして折り目に従って丁寧に折っていく。あっという間に、思いを運ぶひこうきは完成した。

 カーテンを開き、網戸を引いた。先ほどよりも強く夜風が吹いて、髪が揺れる。親指と人差し指、そして中指で紙ひこうきを軽く摘まみ、窓から少し身を乗り出した。

 町はまだ眠らない。いくつもの温かい光が地上に溢れている。その光一つ一つの中に誰かがいて、そこに思いがあるのだろう。きっと誰かを思っているのだろう。

 今度は夜空を見上げた。そこにも、いくつもの光があって、地上を温かく見守っているような気がした。きっと、誰かの思いを受け取って光っているのだ。

 すっと息を吸って、腕を構える。

「いけ!」

 速く、けれど力を入れず、紙ひこうきを夜空に投げた。

「あ……」

 けれど瞼が腫れていたからか、腕が震えていたからか、紙ひこうきは真っ直ぐ飛ばず、ふらふらと宙をさまよい、そして段々落ちていった。

「あ、ああ……!」

 その時だった。

 びょう、と強い風が吹いて、紙ひこうきを持ち上げた。その勢いに乗って紙ひこうきは速度を増し、真っ直ぐすいすいと進んでいった。

 そしてそのまま突き進み、宙と地上の間、二つの光が混ざり合う境界に、光となって溶けていった。

「……」

 僕はそれをしばらく見つめ、もう一度頬を拭って窓を閉めた。

 そして

「お父さん、お母さん!」

 部屋の電気を消すのも忘れて、部屋を飛び出し階段を駆け下りた。

 毎年必ず行っているので、わざわざ僕が言うことじゃないのだろうけれど、でも今年ばかりは僕から言いたかった。

 リビングのソファに座っているお父さんとお母さんを見て、僕は自然と笑顔になった。二人はちょっぴりビックリしている。

 僕はそのまま二人に言った。

「今年の夏休み、おじいちゃんとおばあちゃんに会いたい!」

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