第2話 第一村人発見?

 地球では、腐った人生だった。

 そんな事を思いながら歩く。

 問題は、異世界と聞いただけで、俺は何も知らない。

 それだけが不安だ。

 人と言ったが、人間と同じなんだろうか?

 ふと不安になる。


 そして、背後から、付いてくる足音。

 まあ、あの白い犬だろう。

 意識をそちらへ向けると……


 なんと言うことでしょう? 頭の中に周囲のマップみたいなものが広がり、すべてが見える。


 そう、この能力に気が付くのが、倒れていたところだったら、すぐ西側に、村があったことに気が付いただろう。

 南側には、険しい山脈。

 そしてその麓は、凶悪なモンスターが住んでいた。


 そう俺は意図せず、最悪な方へと足を進めた様だ。

 さすが俺だ。初めての世界でも、きっちりと駄目な方へと向かう。


 そしてたまたま、その村を襲いにきた狼から、村を救ったようだ。

 この時の俺は、犬だと思っているが、立派な狼。

 フォレストウルフと言い、かなり凶悪なのだそうな。

 こいつらは、群れになって、村や旅人を襲う。

 俺を囓っていたのはまだ子どもで、成犬?は、体高で一メートル五十センチを越える。



 そして、進行方向に、大きな力を持った何かがいる。


 少し崖になっていて、覗き込むとでっかいクマ。

 日本のクマとは違い、立ち上がると三メートルくらいはありそう。

 物理的にどうなんだと思うが、周りを囲む小人たちを熊さんは蹴散らし、小人は棍棒や小さなナイフ? 金属ぽい針を装備。


 一瞬だけのぞき込み、あれは村人なのかと考える。

 そう思ったが、顔色は緑で「ぐぎゃ」などという鳴き声で、どう聞いても会話ではないようだ。だが世界が違うし、判らない。


 よく見ると、複数で連携はしている様子。

 それを見て俺は悩む。村人なら助ければ、寝るところとか、何とかなるかもしれない。


 だけど、あの人達、血が赤くない。

 怪我をしたところから流れる液体が青い。イカですか?

 それとも、それは異世界だから?

 自分の腕を見ると、血管が青く見える。

 いや地球にいたときも、血管は青く見えた気がする。


 

 そう、日本でもスマホは持っていたから、WEB小説でも読んでいれば……

 だけど俺は、会社の仕事では返済に足りず、アルバイトをずっとしていた。

 つまり帰れば、バタンと倒れ込むように寝てしまい。

 朝、目を覚ますために、つめたいシャワーを浴びて、強制的に目を覚ます生活だった。


 朝は、水だけ。

 昼は、適当に弁当とか。

 前はコンビニだったけれど、最近は高いから、米だけ炊いて、タッパーに詰め、海苔やふりかけをまぶしていた。

 それにカット野菜を買い込み、昼と夜で食っていた。


 栄養? そんなもの生活に余裕のある奴の言う言葉だ。

 飯なんて、腹が鳴かなきゃ良いんだよ。


 散髪もいけず、自分で適当に手の感覚で切る。

 服は流石に買わないといけない。


 そんな生活を、仕事を始めて、二年目には始めた。

 無論浮かれた話しも無い。

 あの女神が七十点と言ったのは、彼女基準なのだろう。

 そう、俺は別にモテることも無かった。あいつの美醜感覚がおかしいのだと思う。


 おかげで、大抵のことは自分で出来る。

 人間、生きるためには、必死で色々と覚えるものさ。

 まさか、こんな事になるのなら、もっとサバイバル関係の勉強をしておくんだった。


 現実逃避は置いといて、熊さんが勝ったようだが、村人? は、まずくて食えないようだ。

 道を探して、降りられる所を探す。

 村人……

 普通の血の匂いじゃ無い。


「ぎぃ」

 まだ息があったのか、いきなり俺に噛みつこうとした。

 つい踏み潰す。

「あっ」

 ブチッとやってしまった。

 頭の中で、ファンファーレが鳴り響く。

 そして女神の声でアナウンス。


 『モンスター、ゴブリンを初討伐……』


「えっ。そんだけ」

 音と声が、あれ以上鳴り響くと鬱陶しいだけだが、モンスター? ゴブリン? 村人じゃ無い……


 気を取り直し、落ちていた石と棍棒を、武器として持っていく。

 能力も簡単に聞いたけれど、基礎知識がないから、理解ができていないしなあ。

 川原だしいいかと、少し上流にある、淵に向かって技を使ってみる。


「えーと、フレイムボム?」

 手を向けていた方に向け、バシュッという感じで炎の固まりが飛んで行った。

 上手く、飛び石にならず、がぽっと水中へ入って行った。


 そして、どーんと……


 川の水が、空に向かって吹き上がる。


 虹が出て、キラキラとした霧状の水が降ってくる。

 そして、三十センチくらいある、鮭の小さいような魚が浮かび上がって流れてくる。


 それを見て、俺はあわてて、拾い集める。


「えーと、ナイフと鍋」

 見回すと、さっきゴブリンがつかっていた、金属の針があったので、それを洗い、ナイフとして使う。


 鍋は、粘土を見つけて土器でも作ろうかと考えたが、間に合わない。


 とりあえず、よしのような草が生えていたので、そいつの葉をむしって串にする。焼いておけば、数日は食えそうだし。


 捌きつつ内臓周りとかを見たが、寄生虫もいないようだ。

 石を組んで、かまどを造る。

 魚を焼くから、イメージは囲炉裏のような形。


 問題は水。砂や炭を集めてろ過をしたって、除菌は出来ない。

 周りに、あのゴブリンのようなモノが居れば、大腸菌とかで汚染されている。

 こんな誰も居ないところで寝込めば、来たときと同じく餌になるだけだ。


 魚を焼きつつ、少し周りで粘土を探す。

 田んぼは無いよな……

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