墓参ってだれもいない

 ちょいとさまよう。

 墓の近場でいた腰くの字曲がる老いた幽霊へ声のかけた。

 姿の人だけれど、なんとなく勘で同類に感じ当たっていた。

「成仏って、どうやるんですか?」

 耳の遠い人へありがちな、はぁ? 手の添えた耳の穴の見せつけ。

 疾患だって持ち越すのか。ともかく大きく言ってやる。

「成仏って、どうやるんですか?」

「あぁ、だったらばゾろゾロを訪ねるのだね」

「ゾろゾロ?」

幽冷亭ゆうれいていゾろゾロ、ここいらで不良やっとるよ」

「はぁ」

 不良って職種だろか、ぼそり。

「聞こえとるよ」

「おや、耳良いのですね」

「あぁ、でかく訊き返すのは生前の癖でね」

「その幽冷亭さんなら、成仏のできると?」

「相談ならのってくれるさ」

「不良で、坊さんなんですか」

「ただ喧嘩っ早い高校生だ」

 やはり疾患の続いているのか、ぼそりやめて心にごちる。

「というかお嬢さん黒目勝ちで人形みたくきれいで若いもんだ。セーラー服なんぞ着て、なんかぶつかったんか?」

「自動車で、ぶっ飛ばされました」

「あっさりいったんだな」

「私だったのあちこち曲がっていたそうですけど」

「なにどうせ年食えば曲がったもんだ。先取りって話だよ」

「先取りしすぎましたね」

「やたら落ち着いとるね」

「あまり生きているときへ変わらないので」

「人へ対し見えん聞こえん触れんだけだからな」

「そうですか」

「しかし成仏なんぞなんでしたい。極楽なんぞあるやしれんぞ」

「私、冒険好きなんですよ」

 老人いぶかって、ううん唸った。

 活きたように笑って葦ノあかるい。

「どうせ、亡くなったのだからこの意志の弾むまま楽しく生きましょう」

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