亡くなるなかれ

 幽冷亭の私よか頭ひとつぶん小さい。

 こう思いつ幽霊とし高いにっこりが、低いのおっかける。

 おっかけられ、そそくさ速足でしらばっくれて見えないふり。

 住宅地のほの暗い裏路地ところ入るなり、幽冷亭の剣幕ばくはつであった。

「ついてくるな!」

「成仏さしてよ」

「俺しらぬよ、そんな方法」

「でも幽霊の殴ってた」

「結びつかんだろ。ただ体質で、俺に知識なぞない」

「くだらない男だなぁ」

「あの火玉へ呑ませとけばよかった」

「言われてみれば、あれでも成仏できるかもね」

「本気で言ってるか?」

「冗談、あれ成仏ってより混ぜられている感じだった」

 不良すこし冷静で、塀へ背の預けた。

「怨霊だよ、いや怨霊のしわざか」

「なんか恐ろしいね」

 という瞳の大きく好奇心で輝いた。

「とんでもない恨みで亡くなった輩の恨みで暴れているだけだ」

「そういうの祓うの?」

「俺ならただ高校生だ」

「平日だけど」

「不登校だ。ああいうとこ辛気臭い霊の多い」

「なんで私の助けてくれたの?」

 聞くに、熱ひいて腫れも安らかなった手こっそり握っていた。

「おかげさま、俺は幽霊、人ともども嫌いだ」

 けど、とわずか黙って、

「生きている意志の冒涜するさまの、もっとも許せねぇ」

「そういえば倒れた人たち、ダメだったね。幽霊すらなれない」

「お前けっこうあっさり言ってのける」

「まぁ、幽霊なんてなってみたら、なんで生きていたんだけってさ」

 なんでいまも生きているんだけって。葦ノ、ほほえみの寂しくした。

 されどただち拭いさって、明るい。

「だから成仏やなんか意味あてはめないと、やってらんないんだよ」

「お前、前向いてんだか後ろ向いてんだか」

「後ろ向かないため前向いているの」

 これへ幽冷亭ふっと鼻で笑い、どこか穏やかで、わかった。

「成仏なんぞ俺じゃできん。ただ知っているつてのある」

「良い人だね、あなた」

「生きている奴へ尊重あるだけだ」

 ぶっきらぼう路地裏の出て、幽霊のこれへ上機嫌ついていく。

 こんどどうも歩調のあっていた。

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