枝豆がごろごろ転がる風景
島尾
枝豆
私の通うA型事業所では様々な職場に赴く。その中で、枝豆の選別というものがある。枝豆は、厚さが薄い場合や豆が入っていない場合、虫食いがひどい場合などにおいて商品とならない。消費者は潔癖症なので、やはり綺麗な形の枝豆を買う。実際に味はさほど変わりないというのに。
それはさておき、枝豆の選別は実に涼やかなものだ。
まず、
次に、豆がレールの上を通る。それらは、くたびれた見た目のおっさん、江戸っ子みたいな爺、若いでぶ、そして見た目が不審な私、この4人によって選別される。ちっちゃい椅子に座って、女にモテない4人組みたいな者らが豆をいじっている。大きな畑に建っている小さな小屋の中で。風が吹けば風鈴が鳴る。その風鈴は、長年の風雨によってか、せっかくの黒々とした南部鉄器の地肌が半分以上茶色く錆びている。枝豆まみれの空間に先の4人組が、錆びた風鈴の澄んだ音を一緒に聞く時間というのは、やはり「涼し」と表現するのがもっともふさわしい。枝豆が作り出す一夏の光景といえよう。
話は変わるが、私は枝豆が嫌いである。仙台在住で、名物のずんだ餅も長いこと食べないでいた。あるとき少しばかり勇気を出して食べてみたところ、枝豆のえぐいというか苦いというか、その味覚は餅の中には無かった。一つの発見であった。そしてまた名産の牛タン、萩の月、
むさ苦しい4人組によってはじかれた枝豆は、持ち帰ることが可能だ。私はそれを持ち帰って、大家に献上した。媚びを売っておくことで、何かの時に助けてもらう魂胆である。
枝豆がごろごろ転がる風景 島尾 @shimaoshimao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます