第24話

ミキヤと加奈子は動揺していた。

さらに、党の一員として働いてきた、全国の若者達の心も穏やかではなかった。

なぜなら、今日から元老人達と一緒になって、働かなくてはならなかったからだ。


自分達が、一心不乱に行ってきた姥捨ての被害者達が若返って帰ってきて、その者達と今日から何食わぬ顔で働くなんて、とてもじゃないができそうにはなかった。

もしかしたら、山に捨てた時に、それが原因で死んでしまった人もいたのではないか?

直接的には死ななかったとしても、いつ死んでもおかしくない場所に捨ててきたのは自分達だ。

例え、当時は正義を信じて行ったことであっても、今となっては日々罪悪感に苛まれ、さらには蘇った元老人達に、いつ復讐されるかもしれないと怯える毎日だった。

しかし、そんな気持ちも知らずか、党は元老人達を社会に受け入れ、自分の強みを生かした仕事に就けるよう後押しを始めたのだ。

そして、この事務所にも、本日数人の元老人が来ることになった。

どんな顔をして接すればいいのかわからず、得体の知れない緊張感がずっと続いている状況だった。

そんな中、ついに元老人達がきたのだった。


太郎を含む3人の元老人は緊張の面持ちでありながらも、眼差しは強く、信念を貫く覚悟を漂わせていた。

ミキヤと加奈子を含む若者達は固まってしまい、下を向いたまま目も合わせずにいた。

元老人を事務所まで連れてきた党の関係者は、太郎に一言挨拶をするよう促した。

太郎は、怯えてるように見える若者達に向かって、慈悲深い眼差しを向け言った。

「何も責めたりしない。誰も恨んだりはしない。過去は全てあの山に置いてきた。今はただ、この国が正しい方向に向けるよう、この命を懸けて全力で貢献したい。あなた方と一緒に新しいこの国を創っていきたい。もう、どうか苦しまないで下さい。一緒に力を合わせ頑張って行きましょう」

そう太郎は言い終わると、笑顔を皆に向けた。

他の元老人達も、若者達を心配した眼差しを向けていた。

極度の緊張感の中にあった若者達は、緊張の糸が切れ、とめどなく涙を流した。

自分達が背負ったこの重い十字架に、今にも押し潰されてしまいかねないほどの毎日であった。

元老人の言葉は、死ぬまで降ろすことができないであろうこの十字架を背負う自分に、天から一筋の光が射したような、わずかな希望を与えてくれる言葉だった。


生きる希望の花が、あちこちで咲き始めていた。

光を纏う者もいれば、影を背負う者もいる。

陰と陽に分かれるそのエネルギーが今、混ざり合い目に見えない一つの結束力となって、この国の中で確かに咲き誇り始めたのだった。


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