第19話
その日、全国各地の行政無線や、あらゆる放送媒体によって以下の放送が流された。
「首相の伊佐美です。国民の皆様にお知らせいたします。本日正午より、天皇陛下より、これからの日本にとって重要なお言葉を頂きますので、国民の皆様におかれましては、可能な限り手を休め、拝聴されますようお願い申し上げます。放送は、ネット、テレビ、ラジオで実施いたします」
突然の知らせを受け、国民の中に動揺が走った。
天皇陛下が、国民に対し緊急に伝えなくてはならないことがあるのかと、国中でざわめきがおきていたのだった。
各放送局は、突然指示された緊急放送の対応に追われていた。
時間はあっという間に過ぎていき、いよいよ緊急放送が開始されたのだった。
天皇陛下は国民に向けお言葉を述べられた。
「わが国は、これまで幾度となく経験したことがない困難に見舞われ、暗闇しかない中であっても、僅かな光に希望を抱き、国民が一丸となって乗り越えてこられました。しかし現在、また新たな困難が私達の前に立ちはだかっています。わが国を二つに分断しかねない大変大きな問題だと危惧しております。これから歩んで行く道がどんなに辛く厳しいものであっても、絶対に諦めるわけにはいきません。この国は、笑顔が溢れ、健やかに過ごせる国になれるのです。何度倒れても、誰かが手を差し伸べてくれるなら、立ち上がり、共に歩めます。必ず乗り越えていけるのです。皆、一丸となって力を合わせ、歩んで行けると私は信じております」
天皇陛下のお言葉が終わると、画面が切り替わり次に石田が語り始めた。
「元老人達聞いてくれ。俺は元首相の石田だ。君らの胸の中にある怒りや失望は、どうかもう捨て去ってほしい。あのまま、寝たきりや力を失った老人で終わることなく、こうやって若い肉体になれたのには大きな意味がある。俺達にはやり残してしまったことがあると思うんだ。それをやるために戻ってきた。俺達じゃなきゃできないことがある。少子高齢化問題は終わっていない。先延ばしになっただけだ。だからこれから毎日死ぬ気で考え、試して、駄目でも、何度も何度も実現できるまでやるしかない。そのためには陛下のお言葉の通り、国民一丸となって、新旧織り交ぜて進む以外にないんだ」
気迫こもる表情から一転、石田は笑みを浮かべながら言った。
「みんな、なんだかんだ言ってもやっぱりこの国好きだろう?だったらこれから生まれてくる日本人に、この国に生まれて良かったって言わせてやろうぜ!いっちょやってやろうぜ!」
こうして国民に向けた緊急放送は終了した。
いよいよ本格的な少子高齢化問題解決に向け、国民一丸となって挑んで行くこととなったのだった。
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