第6話
やがて、辺り一帯がゆっくりと明るくなってくると、皆それぞれが驚きの顔を浮かべていた。
太郎も驚いていた。
生き返って、崖の上に移動できただけでももの凄い奇跡なのに、なんと全員30代位の働き盛りの姿になっていたのだ。
男は周りの人間を見渡し、驚きながら言った。
「あ、あんたら、老人じゃなかったのか?」
それに答えるように別の男が言う。
「それは、こっちのセリフだ。あんたもまるで若者じゃないか?老人はどこいった」
パジャマ姿の女性が自分の手をマジマジと見つめながら言った。
「若返っている。手の甲のシミやシワがない。ねえ、どうなっているの?私、若返っているの?」
隣の男がそう問われ良くわからない中、面倒臭そうに答えた。
「ああ、若い若い。別嬪さんになっているよ」
また別の男が言った。
「奇跡だ。神が哀れな我々を救ってくれたのだ。若さという命を与えて下さったのだ。この事には大きな意味がある。我々にはきっとやらなければいけない使命があるのだ」
それに答えるように声をあげるものがいた。
「使命だというなら、俺らにこんなことをした奴に復讐するということだ。あいつら絶対に許さんぞ!全員豚箱に入れるか同じ目に合わせてやる!」
賛同する声があちこちから上がる。
「そうだそうだ!」
男は立ち上がった。
「よし!そうと決まりゃあ、さっさと山を下りよう!まずは山を下りて作戦会議だ!」
皆一斉に立ち上がり声をあげた。
「おう!」
それを見て太郎は慌てて声を掛けた。
「ま、待ってくれ!済まないが私も連れて行ってくれ。足手まといになってしまうかもしれないが一緒に行かせてくれ」
男は答える。
「当たり前だ一緒に行こう」
太郎は安堵したように言った。
「ありがたい。この歳だから少し遅いけどよろしく頼むよ」
男は笑みを浮かべながら太郎に言った。
「なに弱気なこと言っているんだ。あんたもバリバリの若者じゃないか」
太郎は驚きながらマジマジと自分の体を見つめながらあちこち触ってみた。
確かに老人の体とは思えない。
恐る恐る立ち上がると違和感がなく、体が軽く感じる。
(こ、これは、私も皆と一緒に若返ったのか?)
あの時、ユニコーンに見つめられ全てが止まったような感覚に襲われたが、あれは私も若返らせてくれる魔法だったのだろうかと思えてきた。
太郎は早く自分の姿を鏡で確認したいとの思いが強く湧いてきた。
男が先頭に立ち皆に声を掛ける。
「よし行くぞ!」
皆は答えた。
「おう!」
こうして30代に蘇った老人達は、憎き者への復讐のため、山を下り始めたのだった。
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