第6話光《ひかり》
1日目 ある男がいた。それは突然の出来事だった。目が光を感知できなくなったようだ。男はパニックになった。今日は仕事だ。職場に連絡しようにも、連絡手段はどこに置いたか分からない。何とか家の外に出て、
2日目 今日も視力が回復する兆しはみえない。聴力は問題ないのが救いだ。病院のベッドが空いていたので、とりあえず入院させてもらった。トイレは手探りで覚えられたが、食事が難しく介助をしてもらう。
3日目 何かが見えた気がした。医者が来たときだった。声のするほうへ目を向けると数秒だが空中にあたたかそうなクリーム色の光が見えた。それを医者に伝えると、医者は人を数人連れてきて何が見えるか男に聞いた。これも数秒、光のようなものが見えたが消えてしまう。
4日目 きのう感じた光が長く見えるようになる。
5日目医者の身体から発せられるクリーム色の光がかなりハッキリと見えるようになった。ほかの人間も赤やオレンジ、緑など色んな色で見える。医者は何かを思いついたようだった。
6日目 何処かの施設へ移動したようだ。医者は「悪いようにはしないから」と言っていたのであまり心配はしていないが。
実験が始まった。博士は男に説明した。おそらく貴方に見えている光は魂の光。様々な条件の人間を連れてくるのでどのような光がどういう風に見えているのか教えて欲しいと。男はほかに出来ることもないので同意した。
7日目 職場から連絡が来たそうだ。このまま目が見えない状態が続くようだったら仕事を辞めてもらうしかないと。博士は新しい職場を紹介してくれるという。今までの仕事は辞めることにした。
X日目 男は連日魂の光を見させられた。博士は膨大な研究結果を持ち、新しい職場だと、男をある機関へ送り込んだ。
Y日目 ある機関へやってきた男の生活は案外悪いものではなかった。衣食住、生活すべてが保障されている。魂の光しか見えない本人にとって、娯楽は三大欲求を満たすこと、音楽を聴くこと、点字の本を読むことくらいだった。
仕事は魂の光を見ること。忙しいときはフルタイムで見続けるが、時期によっては数十分で終わることもあった。男はふと自分が何の仕事をしているか機関の人間に聞いてみた。詳しいことは教えてもらえなかったが、たくさんの人たちを救っているらしい。
Z日目 男の目は治ることはなく、遂に最期の日を迎えた。機関はこの男の後任を見つけることが出来なかった。そこで男の網膜を採取し実験をした。実験は見事成功。男の網膜を通せば魂の光を見ることが出来たのだ。急いで保存液に漬ける。従来のウソ発見器では見つけられなかったウソを魂の光を見ることによって見破れる。
このスパイ対策機関のウソ発見器は長い間活躍することになるだろう。
ひとこと
従来のウソ発見器だけに対策をしているスパイも、さすがにウソをついた時の魂の光を変えることなんて思い付かないだろう。
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