第4話愛育《あいいく》

おりなかはいっている1匹いっぴきザルをおんな一目惚ひとめぼれした。

おんな孤独こどくだった。それをいやそうと愛玩動物あいがんどうぶつおうとみせったのだ。

もちろん生半可なまはんか気持きもちではない。しつけやエサ、散歩さんぽ道順みちじゅん入念にゅうねん調しらべるつもりだし、まんいち自分じぶんさきんでしまったときのために施設しせつあずけられるだけのおかね用意よういした。

じっとザルをていると、った。うるんだ可愛かわいひとみ釘付くぎづけになる。

「このいただくわ。」

おんな店員てんいんもうる。ザルをいえむかえる日付ひづけめて、飼育環境しいくかんきょうととのえた。勉強べんきょうすべきことはすべならった。

ザルはおとなしいだった。おんなからエサをったときは、らかすことなくしずかにべた。げいおぼえた。つ、すわる、あるく、お辞儀じぎをする、拍手はくしゅをする...。もはやおぼえられないげいなどないのではないかとおもえるほどだった。

散歩さんぽはおっかなびっくり、すれちがいぬやフェレット、かめなどにたいして恐怖きょうふかんじているのか、おんなにしがみついてやりごしていた。そんなザルをおんなはとことんあいした。

ときち、ザルは成長せいちょうしてサルになった。おんな相変あいかわらずサルをあいしていた。サルもおんな信頼しんらいしなついていた。

あるおんなはふとおもって、いつもはらない公園こうえんにサルをれてった。そこでは様々さまざま動物どうぶつぬし散歩さんぽたのしんでいた。このころになると、サルはむかしほどほか動物どうぶつこわがらなくなっていた。おんなはサルとたのしく公園こうえん散策さんさくしていたが、あるときサルがうごきをめた。

おんながサルの視線しせんってみるとそこには1匹いっぴきのオスザルが居た。おんなはこの視線しせんおぼえがあった。サルはこのオスザルに一目惚ひとめぼれをしたようだ。オスザルはサルの視線しせんき、たがいにつめあった。オスザルはある家族かぞくれられていた。

おんなはサルのしあわせのために勇気ゆうきってこの家族かぞくこえをかけた。

「あのう、おたくのおサルさん、とっても格好かっこういいですね。ウチのサルがもしかしたら一目惚ひとめぼれをしてしまったみたいで...。お相手あいてはもういらっしゃるんですか?」

「いえ、いませんが...。」

家族かぞくなか1人ひとり困惑こんわくしたようにこたえる。おんな家族かぞく会話かいわしているあいだに、2匹ひき急速きゅうそくかれあったようではなれなくなってしまった。

こまったおんな家族かぞくはない、おんなはサルを家族かぞくゆずることにした。おんな唯一ゆいいつあいするサルとわかれなければならないつらさであふなみだをこらえきれなかったが、サルはちらりとおんな一瞥いちべつしただけですぐにオスザルのほうなおった。

おんなふたた孤独こどくになった。いまさらほかの動物どうぶつおうなんておもえなかった。だがサルを手放てばなしたことに後悔こうかいはなかった。サルはしあわせをれたのだ。わたしはサルがいて孤独こどくいやせたが、サルにとってはそうではなかったのかもしれない。これがおや手放てばな気持きもちなのかしら。いいかげん子離こばなれしないと...。

1年いちねんったある、あの家族かぞくから連絡れんらくがあった。ザルを1匹いっぴきもらってくれないかということだった。はじめての出産しゅっさんうえ双子ふたごということでサルが面倒めんどうきれず1匹いっぴきあますようになってしまったらしい。

おんなあいするサルのどもをそだてられるならと、よろこんでけることにした。そしてったザルに愛情あいじょうをあふれんばかりにそそいで、今度こんどこそ生涯しょうがいともにできる関係かんけいになった。公園こうえんには二度にどかなかった。




ひとこと

公園こうえんったらふたたわかれがやってるかもしれない...。

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