第2話藍《あい》

研究室けんきゅうしつ藍色あいいろ塗料とりょうった。

「どうしてくれるんだ…。」

絶望ぜつぼうしたように教授きょうじゅあたまかかえる。

助手じょしゅはひたすらあやまっている。

やっとのことで完成かんせいしたこの塗料とりょうは、ある金持かねもちの寝室しんしつかべられる予定よていだった。

つくるのに数週間すうしゅうかんはかかる代物しろものを、助手じょしゅまえのドジでころゆかにばらまいた。

納期のうき明日あすだ。この絶望的ぜつぼうてき状況じょうきょう教授きょうじゅ決意けついした。

「ニセモノをつくるぞ。」

人体じんたいがいのない、もと代物しろものとそっくりな藍色あいいろ塗料とりょうつくった。ええい、オマケだと、あるもの用意よういした。

翌日よくじつ金持かねもちのいえ到着とうちゃく説明せつめいをする。

「こちらは室内しつないひかり吸収きゅうしゅうし、塗料とりょうひかりむすびつき、よるになるとアルファという物質ぶっしつ放出ほうしゅつします。このアルファがお客様きゃくさまねむりを促進そくしんする物質ぶっしつでして…。」

ひととお説明せつめいえた金持かねもちはうなずいた。

「よし、ではそれをかべってくれ。」

「かしこまりました。ちなみにお客様きゃくさま満天まんてん星空ほしぞらはおきでしょうか?」

きだが、なんなんだね。」

じつ星空ほしぞら睡眠すいみんいという研究結果けんきゅうけっかましたので。どうでしょう、かべ蓄光ちっこうがたほしをくっつけて満天まんてん星空ほしぞら演出えんしゅつするというのは。」

睡眠すいみんいのならなんでもいい。やってくれ。」

こうしてニセモノの塗料とりょうられた。

数日後すうじつご金持かねもちから連絡れんらくがあった。

「おたくの品物しなものはすごいじゃないか!あんなにねむれなかったのがウソのようだ!!」

これは商品化しょうひんかしたほういと金持かねもちは援助えんじょもうた。

教授きょうじゅすこってくれと金持かねもちにい、数週間後すうしゅうかんごにもっと効果こうかのある塗料とりょう出来できるのでそれもためしにらせてくれないかともうた。今度こんどこそ本物ほんもの塗料とりょうだ。金持かねもちは快諾かいだくし、った。

本物ほんもの塗料とりょう完成かんせいし、りにった。自信じしんがあったので今回こんかいほしはつけなかった。

数日後すうじつご金持かねもちから連絡れんらくがあった。あまり効果こうかがないとのことだった。

もしやとおもほし追加ついかでつけたところ、よくねむれるという。

「なんということだ。あんなに予算よさんをつぎんで苦労くろうしてつくった塗料とりょう効果こうかがあまりないなんて…。そのわり超低予算ちょうていよさんつくったオマケのほしほう効果こうかがあるとは…。努力どりょく結果けっか比例ひれいしないんだな。」

教授きょうじゅ金持かねもちとはない、普通ふつう藍色あいいろ塗料とりょう蓄光ちっこうがたほし低予算ていよさんでつくり、そこそこいお値段ねだん(たかめの値段ねだん)で販売はんばいした。

それはそれはよくれ、金持かねもちは大金持おおがねもちになり教授きょうじゅ金持かねもちになれた。


おわり



ひとこと

努力どりょく結果けっか比例ひれいしないれいもあるのではないかと。

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