第7話

「……ふぅ……」

「ええと……お疲れ、さま? 良かったよ」


人間サイズの妖精による歌は終わったみたい。私は小さくパチパチと手を叩いてその妖精に感想を伝えた。


「……それだけ?」

「え?」

「だから、それだけなの? 私の歌を聴いた感想っ。妖精の歌を貰っておいて、良かっただけで済まそうとする気なの?」

「あはは。そうだよねっ。あんなにすごい歌だったもんねっ!」


私の目の前の妖精はジト目になって私を睨んできた。

私の感想が気に入らなかったのか怒っているみたいだけど……それでも。”良かった”としか表現できないよ。

心に深く響くーとか、歌声から大自然に生きる動物たちの情景が浮かび上がったーとか、鳥になって大空を飛んでいるかのような清々しい気持ちになったーとか。貴族たちと一緒に清聴する音楽会で飛び交うような感想はいくらでも出てくる。

でもそんな上品で知性あるような感想は、さっきの歌には似合わないよ。

そんな言葉を超えた何か。そうとしか私には捉えられなかった。


「その、胸がきゅってなった……よ? 何でそうなったかは分からないけど」

「……そうなの?」

「うん。あなたが歌声と歌っている姿を見ていたらね? あなたがとても魅力的に見えたの。」


こんな時は自分の気持ちや感じたことをそのまま正直に伝えるのが良い。

子どもにしか許されないようなことだけど、今の私にはそれしか感想を伝えることはできないんだ。


「……そっか。今はそれで満足してあげようかな」

「その、ごめんね? あなたの歌は今まで聴いてきたどの音楽よりも素晴らしかったから。感想に詰まっちゃったの」

「なるほどね。良いよっ。さっきのはあなたの正直な感想なんでしょ? 嘘を並べられたりお世辞を言われるよりはよっぽどマシよ……それより」


妖精は私の目の前まで近付いてきた。

やっぱり。この子は妖精にしては大きすぎると思う。身長とか人間と変わらないよ。

背中に生えた透明な羽以外はね。


「な……何っ? どうしたの?」

「何って、あなたは妖精の歌を捧げられたのよ? なら、私と契約するしかないでしょ?」

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