第8話

妖精は徐々に近づいてきて、ついに身体が密着する寸前までになった。

そして私を少し見上げて、真剣な目で見つめてきた。

よく見ると、少し頬が赤くなっている


「えっえっ? 今度は何っ!?」

「はぁ……あなたは本当に何も知らないのね。私はあれだけの決意を込めたのに」

「そんなため息つかれても……それに私は本を読むのはそんなに得意じゃないから知識豊富じゃないし!」

「良いわ。これからじっくり教えてあげる。人間の寿命は短いけれど、あなたは私が心に決めた相手だもの。付き合ってあげるわ」


話聞いてくれないぃ……

妖精の歌とか言われても分かんないよぉぉぉ!!

それに付き合うってどういうことなのさぁ!?


「ほら。するわよ」

「するって何を!?」

「契約。さっき言ったでしょ? あなたは私に選ばれたのよ、だから私とあなたは契約するの」

「契約っ?」


妖精は私の疑問には答えずに、私の両肩を掴んだ。そのまま顔を近づけてくる。


「……私はあなたの物よ。妖精を落としたんだから、ちゃんと最後まで付き合いなさいよね」

「それってどういう……っ!?」


私の返事は、唇で塞がれた。

目の前の妖精は目を閉じて、柔らかい唇を私の唇に押し当てて、少し喉を鳴らした。


「……っ」

「ん……」


今更だけどこの妖精は衛兵に突き出した方が良かったのかもしれない。悠長に歌を聴いてないですぐに叫び声でもあげればすぐに衛兵が飛んでくるし

だっておかしいもん。勝手に色々と話を進めて、女の子同士でキスして、契約が何とかと言って……

でも、唇から伝わってくる熱からは悪意を感じられなかった。

むしろ、さっき歌を聴いたときのような切なさがまた私の胸の中で生まれた。


「ぷぁっ……」

「……」


唇が離れる。

すぐ近くで見るこの妖精の顔は、とっても綺麗でかわいくて、愛おしく見える。

実際すごく美人なんだもん。そんな子が恥ずかしそうな顔をして私の肩を掴んで背伸びしてきたらかわいいよっ。

その先にしてきたキスは全然かわいいどころじゃなかったけどね!

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