第6話
「ラ~~……ラララ~~……ララァ~~~ララ~~……」
「えっ……!?」
外からの夜風が私の私室を吹き付けている中、私の目の前に立っていた妖精は歌いだした。
胸の鼓動を確かめるように両手を添えて、大きくて、背中に生えた羽に負けないくらい透き通った声が私の耳を刺激する。
「ア~~……アアアーーー! アァ~~……」
「あ……ぁ……っ」
一体どうして歌い出したのか全然分からない。
この歌で何を伝えたいのか、この妖精は何を考えているのかもさっぱり分からないよ。
でも……
「胸が熱いっ……? どうして……?」
この歌声を聴いていると、不思議と胸が切なくなってきた。
目を閉じて私に両腕を伸ばしてくる。
「……っ」
この妖精が愛おしい。
私はそう感じてしまっている。
「会ったことのない子なのに……名前も知らないし、そもそも妖精にしては大きすぎてヘンな子なのに、何なの……」
私は別に他人に語れるほどの人生を送ってはこなかったよ? そもそも最近大人の仲間入りをしたばかりのような年齢なんだよ。
でも今感じているこの感覚は、今までの短い人生の中では一度も感じてこなかった感覚だ。
「ラララ~~……ラララァ~~ラララッ~~」
不思議な妖精による歌は、しばらくの間続いた。それがどれだけの時間なのかは分からなかった。三分なのか十分なのか、あるいはそれ以上なのか。
私はただ、この妖精の歌を黙って聴き続けていた。
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