第3話
アーヴェント王国の第二王女。それが私。
将来は女王になることが決められていたんだ。でもその役目は枷にしか思えない。
なぜならとにかく退屈なんだよ。
ずっと城の中にいるっていうのは限りなく退屈なんだ。
自分が見ることのできる世界は限られている。それも城の中というほんのわずかしかない範囲に収まってしまっている。
その世界は決して広がることはないし広げることもできない。
王女という立場上、周りの人間は私が城の外に出ることを許してくれないんだ。
「……」
夕食を終えて自室に戻った私は、窓から外の景色を眺めることが日課だ。
その景色が、私が見ることのできるわずかな世界だから。
「……っ」
代り映えしない整い切った庭の景色を見るのはとっくに飽きている。そうですね我が城の優秀な庭師によるものですよね。
私は本棚に目を向けて、すぐに目をそらした。
本棚、そして並べられた本は、外の風景以上に代り映えしない全く同じ景色だ。
同じ題名の本が同じ場所に、綺麗に陳列されている。
外の風景なら風が拭いて木々が揺れることはあるけど、本棚にはそんなものはない。
何十回と読み返した本の内容が変わることなんてないんだ。
「……出たいな。外に」
ため息と一緒に出てきた一言で、私はますます憂鬱な気分になった。
出たいと言ったところで、衛兵も、騎士も、大臣も、みんな許してはくれない。城の中で私の願望を聞いてくれる人は一人もいない。
「……ふぅ……」
軽くため息をついて、ベッドに寝転がる。
私は女王になる人間だもの。こんな悩みなんか抱えてもいられない。
でも、それでもやっぱり外に出たいよ。
私は外に出たい。
外に出て、遠目にしか見ることのできない街の中を歩いて、あの星空を、あんな狭い窓から覗き込むんじゃなくて。周り一面に広がる星空を仰ぎたいな。
「……よしっ」
こんな気分の時はあれをやるのが一番っ。
私はベッドから起き上がると窓に手をかけて、ゆっくりと音を立てないように開く。
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