2-13.予想を超える力

 ――とある廃墟。


 男――晃光は昔馴染みが呼び出した巨大な手の拘束から解放され、自分の身体をさっさと払っていた。昔馴染みの彼女は彼を気にすることなくその場から去ろうとする。


 が、部屋を出る直前に足を止めた。


「それと……お前の傍に居るあの子。あの子はお前の予想以上に成長するよ」


 その言葉に男も動きを止める。


「何のことだ」


「お前が育ててるあの子だよ。あの子は間違いなくあたしらの流派の力を持ってる。それもあの方に限りなく近い力だ」


 男はじっと彼女を見つめる。


「梢枝、ね。生命力が強い名前だ。木の枝は生きるためにその身を伸ばすんだからな。自分の生きる道を自分で開拓して、太陽の明かりを一心に受ける為に成長するんだ。案外、お前を止めるのはあたしじゃなくて、あの子かもしれないな」


 女性は部屋から去った。初めから何も無かったように。

 ただ一人、その部屋に男が取り残されていた。


 …………。


 …………。


 ここは静かだ。

 だが、男は静寂には慣れている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る