2人目 ―それはまだ鼓動する―
2-1.怪異の始まり
「はぁ……なんで夏休みに補習なんか……」
どこにでもあるようなコンクリートの壁の教室。真夏日の太陽の光がカーテンの隙間から差し込み教室内を照らす。机は一見整列して置かれているようだが、ところどころ列からはみ出るようにずれている。
今この教室にはバッグを机に掛けて補修を受ける少女が一人。成績が足りないやらなんやらで補修を受けに、この真夏日に学校まで足を運んだのだろう。
「ほんと、アイツらも薄情よね……あれ?」
ふと少女が顔を上げる。教室の中が暗い。
少女は慌ててバッグからスマホを取り出しスマホのライトであたりを照らす。
「え、なになに、どういうこと?」
どう見ても夜である。少女は試しにカーテンをよけて教室の窓を見てみる。空は雲に隠れた朧月、星は見えないが夜道に街灯が点々としているのは見える。
「え、マジ……?」
少女は荷物をまとめてバッグを背負い教室から飛び出す。スマホのライトで足元を照らし慎重に、けれど速足で階段を駆け下りる。一階まで下りてあとは昇降口に向かえば外に出られる。その時だった――。
――ドク……ドク……ドク……。
何かの鼓動する音。
少女の額から汗が噴き出す。
少女は慌てて下駄箱に向かい靴を履き替える。だが、慌てると普段の所作もままならなくなるように、靴を履くという簡単な動作すらも時間がかかる。
――ドク、ドク、ドク。
鼓動の音が近づく。
靴を履き終えた少女は慌てて昇降口の扉に飛びつく。
――ガチャガチャガチャ!
「え、なんで!」
――ガチャガチャガチャガチャ!
――ドクドクドク。
――ドク!
その鼓動は背後から聞こえた。
「は……は……」
呼吸がままならない。
何でこんなことに。
何で扉が開かないの?
今、後ろに居るのはなんなの?
少女はゆっくりと後ろを振り返る。
スマホのライトをゆっくりとソレに向けて――。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
――カタン。
ライトの点いたスマホが一台。
無意識につけたであろう録画機能と共に取り残されていた。
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