Ex-2.幕間 記録②

地縛霊じばくれい:自身の死んだ場所に囚われた霊


この国には地縛霊という、言わば霊体に対する一種の考え方が存在する。これは簡単に言ってしまえば、成仏出来なかった霊は“その場に留まる”という考えのもと誕生した概念である。


では、なぜ成仏出来なかった場合に地縛霊になると考えられているのだろうか?


屁理屈を並べるようではあるが、そもそも成仏したかどうかというのを“誰が判断する”のだろうか。


例えば、ある老人が悲惨な最期を遂げたとしよう。その一部始終を“見た”もしくは“知った”人は、こう考えるのであろう。

「あぁ、未練を残したまま亡くなったんだ」と。


その後、その老人が亡くなった場所で簡単な仕掛けを作り、怪奇現象を“演出”したとする。するとその怪奇現象を目撃した人はどう考えるだろうか。


「未練を残して死んだ老人の地縛霊だ」


そう考える人が現れるだろう。それが怪談として広まれば、めでたく“怪異”の出来上がりだ。


つまり、成仏という考えも、

地縛霊という考えも、

全ては我々の“認識”によって成り立っている。


さて、ここで地縛霊についての初めの定義を訂正させてもらおう。


地縛霊じばくれい:目撃者の概念によって縛られた不確定な存在


これが地縛霊の定義とする場合、この世に存在する様々な“霊”に対する考えというのは、我々によって形作られていると言えないだろうか。


この世に存在する霊は我々が作り出し、我々の中に霊が常に存在しているのではないか。



――とある心霊研究家の提言。

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