第13章 13の怪談。

第1話 13の怪談。

《不吉な数字、ですか》

「はい、西洋では不吉なんだそうで、特に13日の金曜日が最も不吉なんだそうです」


《何故》

「主な要因は宗教だそうで、13日の金曜日に宗教上重要な方が亡くなった日、だそうです」


《あぁ、でもコチラでは寧ろ祝うと言うか、そう不吉とは言われないかと》

「ですよね、コチラは多神教だとか自然崇拝だからでは、だそうです」


《あぁ、成程》


「こう、数字にまつわる怪談とか、神宮寺さんにも有りますかね?」


《本当に、ありきたりなモノしか無いですよ?》

「取り敢えずお願いします」


《じゃあ……》


 修行もそこそこに、お盆休みに恩師に同行し、お祓いに行った先での事。

 奇妙に改築した家に。


「あ、それ知ってます、増築を繰り返した家」

《ですよね、もう観光名所ですし》


「ですねぇ、すっかり有名ですから」


《では、学校のは》

「既に出てますねぇ」


《んー、他には無いかな、西洋の諸説》

「あー、招かれざる者が13番目、だとか」


《あぁ、有った有ったよ。招かれざる者を呼ぶ為にって、金持ちに呼ばれた事が有るんだ》


 神宮寺さんが恩師と共に招かれたのは、洋館。

 幽霊や怪異にすっかり魅了された夫の目を覚まさせる為、招かれざる者を呼び出す儀式を考え出した、協力して欲しいと。


「行ったんですか」

《金が良かったし、他にもそれなりのが居たそうで、顔合わせも兼ねてと》


「あぁ、成程」


 そこには有名では無い、けれども能力を持ってらっしゃる方々が居たそうで。

 奥様と旦那様を加え、丁度12人が揃っていた。




「お時間になりましたら、コチラにお座り下さい」


 奥様が既に用意していた場には、椅子が13脚。

 円卓に均等に並べられ、その1つだけには、決して座らない様にと。


 何故なら、丁度真夜中の丑三つ時に月光が刺し込む場所に、招かれざる者が現れるからと。


 その時間まで好きに過ごしてくれて構わない。

 ただ、決して触れないで欲しい、と。


 そして俺達は案内された部屋へで仮眠を取る事に。


《先生、聞いた事は》

『いや、聞いた事も無いね、西洋の術式となれば余計にだ。ただ、J先生なら何か知っているかもだ、ご挨拶してきなさい』


《はい》


 そのJ先生がまた強烈な人で、その事を暴露したいが。

 まだ生きているし、止めておこう。


『おぉ、I先生のお弟子さんか』

《はい、宜しくお願いします。西洋の術式なら、J先生だとお伺いしました》


『あぁ、アレは良く有る交霊会に近いね』

《こうれいかい》


『幽霊と交流する、または幽霊を降ろす会、だ。ただ向こうの交霊会では中央に席を置く事が多く、あの様に1席だけ空けるのは、寧ろ東洋的。ココの慣習も混ぜているね』

《へー、そうなんですね》


『そうか、そう儀式的な事はまだまだか』

《はい、やっと制御出来る様になったばかりですから》


『成程、もう少しお話してあげよう、ココにお座り』

《はい》


『よし、先ずは何故空けるか、影膳は知っているかい』

《あ、招く為なんですね》


『そうそう、交霊会とは霊を降ろす会でも有る、それは人に対して降ろすからこそ空席は無い』

《イタコさんやユタさんですね》


『そう、交霊会とは謂わば口寄せ、口寄せの種類は知っているかい?』


《いえ、すみません》

『良いさ、君はまだ幼いんだ、制御が先だ。それに以降分からない事が有れば、僕らに尋ねれば良いんだよ』


《はい、ありがとうございます》


 先ずは神口、神霊からの言葉を伝える。

 そして死者からの言葉は仏口、更に細かくすると生者やまだ葬儀が行われていない者は生口、葬儀後なら死口とも呼ばれる。


『ただ、今回はそのものを降ろすつもりなんだろう、それだけの人員も揃っているしね』

《でも、フリ、だけでは》


『本当に、そうだろうかねぇ』


《と言いますと》


『まぁ、折角だ、次はOさんの部屋に行ってみなさい』

《はい、ありがとうございました》


 そうして次は、隣のO先生の部屋へ。




「何だか、ミステリィが始まるのかホラーが始まるのか分からないですね」

《あぁ、確かに》


「それと、J先生の事が凄く気になるんですが」


《男色家と言うか、こう、少年愛の強い方でね》


「えっ」

《あ、いや、見るだけでなんですよ。決して触れたりだとかは無く、可愛がって頂いたのは事実ですし、害は無かったので》


「あぁ、眺めるのがお好きな方でらっしゃる、と」

《はい》


「神宮寺さんって、結構、色々と経験してらっしゃいますよね」

《まぁ、そこそこは》


「なのに未だに怖がり」


《林檎君には無いんですか、そうしたモノ》


「饅頭以外で、ですかね」

《ですね》


 僕の怖いモノって、少し不思議がられてしまうんですよね。


「コレが終わってからで良いですかね?」

《正直に言って下さるなら》


「はい、言います」


《では》




 Oさんを尋ねると。


《あぁ、いらっしゃい》

《お邪魔します》


《それで、どうしたのかしら?》

《今さっき、J先生に挨拶をして、あの術式や口寄せについてお伺いしてたんです》


《あぁ、私はイタコだからね、主に仏口だ。Yちゃんはユタさんで、神口、そう思うと色々と揃えたもんだねぇ》

《それは、他の方も能力が違うんですか?》


《あれ、西洋のお洋服を着た方々も居たでしょう》

《はい》


《アレは多分、神父さんだとか牧師さんで……》


 他にもお隣の国の鬼道師、風水師に陰陽の系譜。

 コチラ側が相当な者が揃っているのだから、つまりは向こうも相当の強者揃い、そうした者をそれだけ揃えられるとなると。


《と?》


《本当に、来てしまうかも知れない》


《えっ》

《向こうには、悪魔だとか魔王の伝承が有るのは知っているかしらね》


《はい、少し》

《もしかすれば、本当に呼び出す為に、敢えて私達が集められたのかも知れない》


《そんな者を呼んでどうするんですか?》


《ふふふ、きっと、悪霊や怨霊のする事と同じでしょうね》

《滅茶苦茶にしたい?》


《かも知れないし、本当に偶々かも知れない、だからもう寝て英気を養いなさい》

《はい》


 俺は恩師に今まで聞いた事を報告し。


『そうかいそうかい、なら、取り敢えずは寝るかね』

《何もしなくて良いんですか?》


『良いかい、何も起きていないのに手を出す事は、もしかすれば神様の邪魔をする事にもなってしまう。明らかにコレは駄目だ、そう思うモノでも無い限り、私らは簡単に手を出してはいけない。知らない土地なら余計にだ、その土地によって流儀ってもんが有る、コッチの都合で身勝手に変えても良い事は殆ど無いんだよ。何でも手を出せば良いってもんじゃない、良いね』


《はい》

『さ、お休み』


 丁度、昼寝の時間に良い時で、俺は直ぐに眠った。




「そして女性の絹を裂く様な」

《いや、普通に起きたよ、腹が空いて夕飯時には目を覚まして。西洋料理を期待していたんだけど、お手伝いさんが居たんで普通の夕飯を頂いて、それからまた少し仮眠して》


「そこで女性の」

《いや、今度は起こされて。厠に行って準備をして、その円卓に座った、空座の真正面にね》


「指定が有ったんですか?」

《うん、奥様にね。と言うか、どうしてミステリィにしたがるんだろうか?》


「怖くなるのかなと、半信半疑でして」

《あぁ、成程》


「怖くなりますかね?」

《まぁ、最後まで聞いてみてからで》


「はーい」

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