第3話 開会式

パリの夜空は、星々が輝きを放ち、その下でセーヌ川が銀色に輝いていた。川沿いには無数の観客が詰めかけ、オリンピックの開会式を見守っている。パリの歴史的な建物がライトアップされ、壮大な風景が広がる中で、セーヌ川を舞台にした開会式が今まさに始まろうとしていた。


佐藤翔太は、日本代表チームの仲間たちと共に船に乗り込んだ。船は豪華に装飾され、日本の国旗が風になびいている。翔太の心臓は高鳴り、手のひらには少し汗が滲んでいた。「この瞬間をずっと夢見ていたんだ。」彼は胸の中でそう呟き、深呼吸をして気持ちを落ち着けようとした。


船がゆっくりと動き出し、セーヌ川を進み始めた。川沿いの観客からは大きな歓声が上がり、彼らの声援が川面に響き渡った。日本代表の船がセーヌ川を進む姿は、観客にとっても圧巻の光景だった。


中村美咲は、隣を歩く仲間たちと微笑みを交わしながら、船の上からパリの美しい景色を眺めていた。彼女は家族や師範の顔を思い浮かべ、その応援に応えたいという思いを強くした。「ここで全力を出し切るんだ。誰にも負けない。」彼女の目には、強い決意の光が宿っていた。


田中大和は、セーヌ川にかかる橋の下を通るたびに、橋の上から手を振る観客たちに応えた。「ここが僕の舞台なんだ。」彼は心の中で自分に言い聞かせ、胸を張って前を見据えた。


松本結衣は、ペアの相手と手を取り合いながら船上で進んでいた。彼女は川沿いに並ぶエッフェル塔やノートルダム大聖堂の美しい景色に感動しながら、「この瞬間を楽しむんだ。そして、全力で戦う。」結衣はその思いを胸に抱きながら、セーヌ川を進んでいった。


船がパレードのクライマックスに差し掛かると、夜空に向かって花火が打ち上げられた。鮮やかな色彩で空を染める花火は、まるでパリの空全体が祝福しているかのようだった。花火の音が空気を震わせ、その光の美しさに観客たちは息を呑んだ。


開会式のスピーチが始まり、世界各国の選手たちが船上から紹介される中、翔太は自分の胸に手を当てて、その鼓動を感じていた。「これが僕たちの舞台だ。全力でやり切る。」彼は再び深呼吸をし、心を落ち着けた。


スピーチの後、各国の選手たちは互いにエールを送り合い、友情と尊敬の念を交わした。美咲は隣の国の柔道選手と握手をし、大和は隣にいた水泳選手と励まし合う言葉を交わした。結衣は、ペアの相手と共に笑顔で写真を撮り、記念の瞬間を残した。


開会式のクライマックス、オリンピックの聖火が点火される瞬間が訪れた。聖火ランナーがセーヌ川沿いに現れ、船上から火を掲げて進む姿に観客たちは立ち上がり、声援を送った。聖火が高々と掲げられ、セーヌ川沿いに設置された聖火台に点火されると、火の光が夜空を照らし出した。その光は、選手たちの心に希望と決意の炎を灯した。


「ここからが本番だ。」翔太は自分にそう言い聞かせ、心の中で新たな誓いを立てた。美咲も、大和も、結衣も、それぞれの決意を胸に、パリの夜空を見上げた。

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