第2話
藤堂はベトナムにあるハロン湾にも行った。ハロンには龍が降り立った湾を意味しており、その昔、敵を討った龍が吐き出した玉石が岩山となり、外敵からの侵入を防いだとされる。
藤堂はハロン湾に到着すると、まずはその壮大な景色に圧倒された。青い海と無数の石灰岩の島々が織り成す光景は、まさに自然の芸術だった。彼は観光船に乗り込み、湾内を巡ることにした。
船が進むにつれ、藤堂はティエンクン洞窟に立ち寄った。洞窟の中は涼しく、巨大な石筍や鍾乳石が天井から垂れ下がり、まるで幻想的な地下宮殿のようだった。ガイドは洞窟の形成について説明し、その独特の形状と色合いに藤堂は驚嘆した。
次に香炉岩を目指した。香炉岩は湾の真ん中にそびえ立ち、その独特な形状から名付けられた岩で、香炉のような形をしている。その神秘的な姿は、まるで自然が彫刻した芸術品のようだった。藤堂はカメラを取り出し、その美しさを写真に収めた。
夕方になると、藤堂は船のデッキに座り、ハロン湾に沈む夕日を眺めた。空がオレンジ色に染まり、海面が金色に輝く中、彼はこの美しい瞬間を心に刻んだ。
藤堂はベトナムの自然の壮大さと、その歴史に思いを馳せた。龍の伝説や、それにまつわる物語に触れながら、彼はこの地の持つ神秘的な魅力を深く感じた。そして、この旅が彼の心に深い印象を残し、新たな発見と感動をもたらしたことを実感した。
ハロン湾での旅を終え、藤堂は首里に戻った。首里の町並みは変わらず美しく、歴史と文化が色濃く残る場所だった。しかし、彼が戻ってきた時、町はいつもと違う緊張感に包まれていた。
藤堂が町の中心部に到着すると、警察車両や警官が多く配置されており、住民たちは不安そうな表情を浮かべていた。彼は地元の友人である中村刑事に事情を尋ねた。
「中村、何があったんだ?」
中村は困惑した表情で答えた。「藤堂さん、大変なことが起きたんだ。今朝、首里城の近くで不審な死体が発見された。遺体は地元の有名な実業家で、首里の発展に大きく貢献してきた人物なんだ」
藤堂は驚いた。「それは大事だな。何か手がかりはあるのか?」
「今のところ、現場には何も特別な証拠が見つかっていない。ただ、彼のビジネスに関連する書類が何者かに持ち去られているようなんだ。」
藤堂は考え込んだ。「なるほど、これはただの殺人事件ではないかもしれないな。ビジネスの利害関係が絡んでいる可能性が高い」
中村は深くうなずいた。「そうだ、藤堂さんの助けが必要だ。あなたの洞察力と経験があれば、この事件を解決する手がかりが見つかるかもしれない」
藤堂は決意を新たにした。「わかった。協力しよう。まずは現場を見せてくれ」
中村と共に現場に向かい、藤堂は慎重に周囲を観察した。首里城の近くで発見された遺体の状態や、周囲の環境、細かな手がかりを見逃さないようにした。
彼の心には、この地の平和を守るために事件を解決する決意が強く刻まれていた。藤堂は首里の人々を救うために、真実を追い求めることを誓った。
被害者は地元の有名な実業家、田中宏である。彼のプロフィールは以下の通りである。
**名前**: 田中 宏
**年齢**: 58歳
**職業**: 実業家
**出身地**: 沖縄県首里
**家族**: 妻と二人の子供(息子と娘)
**経歴**:
- 20代: 東京の大学を卒業後、地元に戻り、父親が経営していた建設会社に入社。
- 30代: 父親の後を継ぎ、会社の社長に就任。地域の発展に尽力し、複数の大規模プロジェクトを成功させる。
- 40代: 首里の商工会議所の会長に就任し、地域経済の活性化に寄与。首里城の修復プロジェクトにも関わる。
- 50代: 自らの会社を多角化し、不動産、観光、エネルギー分野にも進出。地元での影響力をさらに強化する。
**人柄**:
田中宏は温厚で人当たりが良く、多くの人から慕われていた。地域の発展を第一に考え、常に地元住民の利益を考えて行動していた。しかし、その成功と影響力の高さから、ビジネス上の競争相手や敵も多かった。
**趣味**:
ゴルフ、茶道、地元の歴史研究。特に首里城の歴史に深い関心を持ち、休日には城周辺を散策することが多かった。
**事件との関係**:
田中宏は首里城の近くで不審な状況で発見された。彼のビジネスに関連する重要な書類が何者かに持ち去られており、ビジネス上の利害関係が事件の背後にある可能性が高いとされている。警察は彼の経営する会社や彼と関わりのあった人々に対する聞き取りを進めており、特に最近のビジネス取引やライバル企業とのトラブルが注目されている。
このような背景から、藤堂と中村刑事は事件の真相を解明するために、田中宏のビジネスと人間関係に深入りして調査を進めていくことになる。
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