デスペレート・シチュエーション④首里殺人事件

第3話

**死因**:

田中宏の死因は鋭利な刃物による刺傷であった。検視結果によると、致命傷は心臓に達した刺し傷であり、即死状態だったと推定される。

**凶器**:

凶器はまだ現場では発見されていないが、検視の結果、長さ20センチメートル程度の鋭利なナイフが使用されたと考えられている。このナイフはプロの手によって使用された可能性が高く、犯人は刃物の扱いに慣れていると推測される。

**死亡推定時刻**:

田中宏の死亡推定時刻は午後10時から午前0時の間である。彼の遺体が発見されたのは翌日の午前8時であった。田中はその日の午後9時頃に家を出たとされており、最後に目撃されたのは首里城の近くで午後9時半頃であった。

この情報をもとに、藤堂と中村刑事は事件当夜の田中宏の行動や、その時間帯に首里城周辺にいた人物を調査することにした。また、田中宏のビジネス関係者や彼の周囲の人々への聞き込みを強化し、事件の背後にある動機を探る必要があると感じた。

藤堂と中村刑事は、田中宏の趣味であったゴルフについて調べることにした。ゴルフ仲間やゴルフ場の関係者に聞き込みを行い、彼の行動や人間関係を探ることが目的だった。

まず、田中宏が頻繁に訪れていたゴルフ場を特定するため、彼の家族や友人に聞き込みを行った。田中は近くの名門ゴルフクラブである「首里ゴルフクラブ」によく通っていたことが判明した。そこで、二人は首里ゴルフクラブを訪れ、関係者に話を聞くことにした。

**首里ゴルフクラブでの聞き込み**:

1. **クラブマネージャーとの会話**:

- **マネージャー**: 「田中さんは毎週土曜日にこちらに来てプレーしていました。非常に礼儀正しい方で、ゴルフ場でも人気者でしたよ」

- **藤堂**: 「最近、田中さんがゴルフを通じて関わりを持っていた人や、特に親しくしていた人はいませんか？」

- **マネージャー**: 「そうですね、彼はビジネスパートナーの山本さんとよく一緒にプレーしていました。二人ともゴルフが好きで、ビジネスの話もよくしていましたよ」

2. **ゴルフ仲間との会話**:

- **ゴルフ仲間A**: 「田中さんとはよくラウンドしましたが、特に最近は何かトラブルがあったとは聞いていません。ただ、ビジネスが忙しいようで、少しストレスを感じているようには見えました」

- **ゴルフ仲間B**: 「田中さんはゴルフを通じて多くの人とネットワークを広げていました。特に最近は新しいプロジェクトに関心を持っているようでしたが、詳細は教えてくれませんでした」

**山本との会話**:

- **山本**: 「田中さんとは長年の友人で、ビジネスでも多くのプロジェクトを一緒に手掛けてきました。最近、彼が取り組んでいた新しいプロジェクトについては、私も詳しくは知りませんが、何か大きなビジネスチャンスを掴もうとしていたようです」

**ゴルフ場の記録**:

藤堂と中村はゴルフ場のプレー記録を確認し、田中宏が最後に訪れた日時や同伴者を調べた。彼が事件前の週末にもゴルフを楽しんでいたことが確認され、その時に同伴していた人物のリストも入手した。

**田中宏のゴルフ用具**:

田中宏の自宅に戻り、彼のゴルフバッグや用具を調べた。バッグの中にはゴルフクラブやボールだけでなく、ビジネス書類やメモがいくつか含まれていた。それらの書類には、彼が取り組んでいた新しいプロジェクトに関する手掛かりが含まれている可能性があると考えた。

これらの情報を基に、藤堂と中村は田中宏のビジネス関係者やゴルフ仲間にさらに詳細な聞き込みを進め、事件の真相に迫る手掛かりを見つけることを目指した。

藤堂と中村刑事は、田中宏の会社について調べることにした。田中の会社「田中建設株式会社」は、地域の発展に大きく貢献してきた建設会社であり、その多角化により不動産、観光、エネルギー分野にも進出している。まずは会社を訪れ、関係者に話を聞くことにした。

**田中建設株式会社での調査**:

1. **会社概要の確認**:

- **設立**: 1975年（田中宏の父親が創業）

- **業務内容**: 建設業、不動産開発、観光施設の運営、再生可能エネルギープロジェクト

- **従業員数**: 約200名

- **主要プロジェクト**: 地元の商業施設、住宅地開発、観光リゾートの建設、太陽光発電施設の運営

2. **社員との会話**:

- **秘書との会話**:

- **秘書**: 「田中社長は最近、新しいプロジェクトに非常に熱心でした。特に観光業と再生可能エネルギーに力を入れていましたね」

- **藤堂**: 「その新しいプロジェクトについて、詳細を教えていただけますか？」

- **秘書**: 「申し訳ありませんが、プロジェクトの詳細は私も把握していません。ただ、社長室のデスクには関連資料があったはずです」

3. **田中のオフィスの調査**:

- **デスクの中**には、多くの書類とメモが残されていた。その中には新しい観光リゾート開発計画や、再生可能エネルギープロジェクトに関する詳細な資料が含まれていた。特に、いくつかの土地の取得に関する書類があり、それには複数の競合企業との競争が記されていた。

- **田中のパソコン**を調べると、最近のメールやプロジェクトファイルが見つかった。その中には、地元の政治家やビジネスパートナーとのやり取りが多く含まれていた。

4. **田中のビジネスパートナーとの会話**:

- **パートナーA**: 「田中さんとは長い間一緒にビジネスをしてきました。最近、彼は大きなリゾート開発計画に注力していましたが、それが原因でいくつかのトラブルも発生していました」

- **パートナーB**: 「特に、再生可能エネルギープロジェクトに関しては、一部の競合企業から激しい抵抗を受けていました。田中さんはそれにも負けずに前進していましたが、何か大きな圧力がかかっていたようです」

5. **田中の競合企業の調査**:

- 田中の会社と競合する企業についても調査を行った。特に最近、田中の会社と土地の取得を巡って争っていた企業があり、その企業の関係者との聞き込みを進めた。

- 競合企業の関係者は「田中さんの会社が進めているプロジェクトには、我々も大きな関心を持っていました。彼が多くの土地を取得していることに対し、一部の関係者が不満を持っていたことは事実です」と述べた。

これらの調査結果を基に、藤堂と中村は田中宏の会社のビジネスの背景と、それが事件にどのように関連しているかをさらに詳しく調べることにした。特に新しいプロジェクトに関するトラブルや競合企業との争いが、事件の背後にある動機として浮かび上がってきた。