その9

「どうしてこの靴を飾っているの?」


「これは父さんと母さんの大切なものなんだ」


そう私は我が子に伝えた。


我が子はケースに入った靴をじっと見ていた。


懐かしい。初めて彼女とあった時、私は衝撃が走った。


あぁ私だけではなかっただろう。


誰もが、彼女が舞踏会に到着しただけで息をのんだ。


「ねえ父様、父様ってば」


「なんだい?」


「大切なものなのに、どうしてこんなに汚れているの?」


「それは……内緒だよ」


「えー!!」


かわいい我が子には、この靴の汚れがなんなのかを教えるにはまだ早い。


怖くない怖い話 シンデレラ

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