第124話 冒険者らしい仕事

 今日のわたし達の仕事は、お風呂屋さんの掃除だった。


 朝からお昼前までに掃除を終えて、次の仕事を探しに仕事の斡旋所と冒険者組合を回る。ルオラと二人で、今日はもう帰ろうかと話していたところだった。


「す、すみません。この間の方ですよね?」


 誰だか知らない二人組は、遠慮がちに話し掛けてきた。わたし達に話し掛けてくる人なんて居ないと思っているから、すぐには返事をしない。横目で見てから、二言目を待つ。


「この間、見学に来た方ですよね? その、うちの代表と一緒に来て…」


 話が具体的ではないけれど、想像はつく。隠し事が多いんだろうなと思って、小声で答える。


「あの地下室の?」


「そうです。ガーネット代表と一緒に来てましたよね?」


 わたしより少し背が低い男は、一緒に来た男とわたしを交互に見ながら小さな声で話す。そして、相談を始める。


「どうしようか? 頼んでみるか?」


「迷ってしまうな。秘密は守ってくれそうだけど…。断られるんじゃないか?」


「あの男を倒して遺跡から出て来たんだぞ。実力はあるんだろ? 華奢な印象だけど…」


 この男達と話をした事は無い。組織の人間なのは何となく分かった。地下室に行った時、擦れ違った誰かのうちの一人だろう。わたし達は仕事を探しているから、地下室の掃除くらいなら請け負ってもいい。


「何ですか? お仕事ですか? 掃除でも調理補助でも何でもしますよ」


 ほんの少しだけ身構えていたルオラが警戒を解いた。それでもまだ黙っている事に決めたみたいで、わたしが交渉する。


「その…。冒険者なんですよね? お二人は…」


 ルオラと顔を見合わせてから答える。


「そう。そうだよ。何でも言ってみて」


「ちょっと、外で話しましょう…。」

 

 人気の無い広場の隅で話を聞いた結果、わたしとルオラは動物を捕まえる仕事を請け負う事になった。明日の朝に集合して、日暮れまでに終わる仕事。なんとかなるだろうと思った。

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