第123話 馴染まない仕事
今日のわたし達は、重い荷物を引いて歩いている。
広い放牧場の周囲を囲う柵と杭。その間に張ってある有刺鉄線が切れている所を歩いて探して回って、張り替える。単純だけれど、広過ぎて簡単には終わらない。
「はぁぁ。移動中に台車の上の荷物がすぐ落ちるのって、何とかならないの?」
「道が悪くて荷物が揺れ過ぎです。紐で縛るといいですが、持っていません。それに、止まるたびに解くのも面倒です」
風邪で休んでいる人の代理で入った今日だけの仕事だけれど、その人達は文句を言わずに普段どうしているのか? 疑問が浮かんで仕方が無い。有刺鉄線の束は、担いで運ぶわけにはいかない。
「すぐに針の部分が手に刺さるし、もう最悪。魔法で浮かせて運ぶのは、すぐに疲れるし…」
荷物を浮かせて運ぶのは風の魔法使いの特権だけれど、慣れていないと疲れてしまう。探知魔法と併用が難しいから、殆ど練習していない。練習に少し時間を割かないといけない。
ルオラは、車輪みたいに丸く巻いて束ねた有刺鉄線を地面に転がしながら器用に運んでいる。片手だけ腕捲りをして、細い両手ともに大きな皮手袋。転がる鉄線が倒れないように棒で突いて操作している。軽やかに歩く姿は、なんだか格好いい。
「はぁぁ…」
「何回溜め息をついたか数えておきましょうか? 今は、五十六回です」
「そういうの、いいかな…。余計に疲れちゃう」
一日二人で働いて銀貨が一枚。慣れていないと疲れ過ぎる。割が悪い仕事だった。
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