第109話 新しい部屋

 昨晩のわたしは体を伸ばしてベッドで眠り、夜明けとともに目を覚ました。


 秋の始まりの太陽は、夏に比べて少し柔らかだ。数分間、何もしないで横になったままでいる。窓から差し込む光は、少しずつ強さを増す。


 明るくなってくる室内を見回し、あの子が居るのを確認する。一緒に眠ったベッドの隅で丸まり、寝息を立てている。何も問題は無い。


 今日からは、昨日までと行動を変える。


 そのために昨日からの状況を整理し直す。


 この家の主は、冗談が過ぎた事を謝った後、わたし達を残して病院を去った。そして、この部屋を掃除しておいてくれた。


 わたしは、お見舞いに来た子供の事をルオラに説明し、一緒に居る事を納得させた。といっても説得する作業なんて全く必要無くて、彼女は少しだけ考えて、すぐに「いいですよ」と言った。彼女も、あの子の気持ちに共感出来る何かがあったに違い無かった。


 三人ともが疲弊していて、体を休めるべきだったけれど、ジオの傍には誰か居ないといけない。どちらがこのまま病院に残るかを話し合った結果、昨日はルオラが残る事になった。


 お昼の僅かな時間でもあの子と一緒に居たわたしと、そうでない彼女。あの子を良い環境で休ませたいと思った時、この家に一緒に来る役割はわたしが適任だった。


 病院に居座る事に一番固執したのは、あの子だったかもしれない。何度も諭し、優しく抱きしめた。明日もここに来るからと言って、頬を撫でて立ち上がらせ、漸くこの家まで連れて来た。ここに着いてからは素直になって、一緒のベッドで眠った。


 今日のわたしは、ジオの付き添い。昼間に仕事を探しに行きたかったけれど、病院に居る事にして、この部屋でルオラに休んで欲しい。まだ夜が明けてすぐだけれど、もう病院に行きたかった。


 病院に着いたらすぐ、待合室の彼女を起こして付き添いを交替する。あの子と一緒にジオの病室を見張る。組織の連中は謝罪を申し出てきているのだから、襲われる心配はほぼ無い。状況は、少しずつ俯かずに済むようになってきていた。






 私は、リージュさんと交替した後、借りた部屋に行って休みました。


 疲れていて考える事に集中出来ていなかった私は、彼女に言われた通り、街のお風呂屋さんに寄り、朝食を摂ってから部屋に行きました。


 その後は記憶がありません。数時間は眠ったでしょうか? 気が付くとお昼頃になっていて、ベッドで体を起こします。


 居間の机に置いてあった書き置きを読みます。あの男性も出掛けていて、誰も居ない事、出掛けるのであれば鍵をかけて欲しい事、その鍵は持っていて構わない事などが書かれていました。


 十分に休んだので、私も病院に行く事にしましょう。


 待合室には、リージュさんとあの子が居ます。今日の昼間は三人で居て、私もあの子に少しだけ心の扉を開けてもらいましょう。嫌われてしまっては困りますから。

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