第68話 続く会話
今日は快晴で、俺達はまた馬車の旅を続ける。十日目だ。
今日は荷台が騒がしい。
「ダークエルフ領地はどんな所なんですか?」
「変な柄の服が流行った事、あったよね?」
「上着の肩のところがほつれてます。止まった時に縫ってあげますね」
「この槍って重たい?」
「街で借りていた部屋は広かった?」
どうやったら一日中話していられるのか?
俺には信じられない。急に静かになったと思ったら、二人揃って寝ていて、起きたらまた話している。もう心理を理解しようとする気さえ無くなってきた。
わたしは、ジオが夕食を作るのを黙って見ていた。
この日の夕食は、お米と茸を簡単に煮込んだ料理で、手早く作っていた。この男は、料理の才能があると思う。
食事中に会話をするのが楽しい。
街での初仕事の時は、ジオ達が仕事の話をしていて、黙って聞いていた。一人で旅をしていた時は、手伝っていた農家の人と話をしたけれど楽しい話じゃなかった。旅立つ前のダークエルフ領の家での事を思い出した。食事中に会話があると料理がおいしい。大切な事を忘れかけていた。
そっか、一年くらいはこんなの無かったんだ。
ルオラは真面目なだけかと思ったら、案外冗談が通じる。からかっても意図が分かっていないのはジオの方だ。わたし達の会話に少しずつ慣れて欲しい。
私は、二人を説得して、漸く夜の見張りに着く事が出来ました。
もう日付が変わったので昨日の事ですが、雨が降っていなかったら、私のせいで旅が一日遅れてしまうところでした。
私の事を気遣うジオさんは、日中の薪拾いも木の実集めもしないでいいよと声を掛けてくれましたが、そんなに心配しなくても大丈夫です。
夕方になってからは、ややきつめの口調に変わって、夜の見張りはさせないと言って譲りませんでした。もう大丈夫ですと何回も言って、時間を短くする事を条件に渋々考えを変えてもらえました。
気遣われるのは慣れていなくて、有り難いですが不思議な気持ちです。何かあれば、お二人を起こしますし、見張っているだけなら大丈夫なんですよ。正直なところ、説得のやりとりの方が疲れたかもしれません。
明け方の兎の犯人を今日こそ見つけたいと思って見張りに立ちましたが、今朝は来ませんでした。残念です。
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