第67話 天気を利用する商売

 翌朝、わたしはジオを探しに厩舎に戻って来た。


「ジオ、起きてる?」


 ジオは起きていて、荷物が濡れていないか入念に調べていた。返事をするが、こちらを見ない。


「起きてるよ。雨だな、外は…。止むかどうか分からないな」


 わたし達は天気の変化には勝てない。その土地にずっと住んでいる人は、その日の天気くらいはなんとなく予想出来るようだが、明日の事は分からないと言う。昨日降り出した雨は、今日になっても降り続いていた。


 宿の係員は朝の空を見て、暫くしたら止むと言うが、お昼頃に止んだって出発出来ない。中途半端に進んでも、二日ごとに宿場町に着くという計画が上手くいかなくなるからだ。


 明日の天気が分かるなら、お金を払ってもいいと思う人は、たくさん居ると思う。わたしに予知能力があれば、これが商売になると思う。


「今日は足止め?」


「そうなるな。もう一泊するといいぞ。まだ先は長いしな」


「うん。丁度よかった。ルオラが風邪を引いたみたい。部屋に閉じ込めてきた」


「そうなのか。様子見に行った方がいいか?」


 ジオは治療魔法兵士だから、具合が悪いと当然気にする。


「いいよ。簡単な薬は持ってるから」


「そうか。なら、あれだな」


 そう言ってジオは、右手の人差し指を真上に立てた。何の事か分からなかった。






 俺は宿の係員と交渉し、厩舎の屋根に上った。


 旅費の節約になればと思い、係員に申し出て、屋根の修理の仕事を請け負った。梯子を借りて屋根に上がり、その屋根に張られている板のうち、悪くなっていそうな部分を金槌で叩く。雨が降っている時なら、修理する場所が特定しやすい。


 厩舎の中で、真下に居るリージュが雨漏りしている部分かどうかを大声で教えてくれる。


 俺がずぶ濡れだが、屋根修理は戦場に行くより楽な仕事だ。用意してあった板に次々と張り替えていく。農家の男手は本業に忙しく、建物の修理なんて後回しだろう。修理をすれば、下に居る馬にだって感謝してもらえるはずだ。


 報酬は小麦粉と薪を少々だった。リージュは銅貨で払って欲しいと食い下がっていたが駄目だったそうだ。しっかり休めたから、明日は晴れて欲しい。

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