第26話 森からの帰還

 わたしがエルフ達の所に着くと、もう完全に夜が明けていた。


「先に街に帰ってくださいって言ってました」


 弓使いの手当てをする剣士に向かって言った。剣士は頷くと弓使いを背負い、荷物を取りに歩き出した。剣士が持てない荷物は、わたしが持つ。


 道の無い木々の間から小道へ出る。警戒しながら進んだ昨日までと違って、速く歩けている。今日も暑いし、荷物も重いが気持ちは楽だった。森が少し明るくなったように感じた。


 剣士の背中で揺られていた弓使いは、途中で目を覚ました。弓使いは、混乱していた様子だったが、すぐに剣士に対して言う。


「アクロ、アクロ、大丈夫?」


 剣士の名はアクロというのか。アクロが答える。


「大丈夫だ。仕事は終わった」


 剣士はわたしに一言も喋らなかったし、ずっと真剣な目つきで怖かったけれど、この一言は優しい声色だった。表情も柔らかくなって、わたしに対して、荷物を持ってもらって済まないと言った。二人が無事で良かったと思った。






 俺は、クローのところから逃げ帰り、荷物の場所に戻って来ていた。


 狼の傍に座り込んで治療魔法を使う。足の怪我さえ治ればいいだろう。治療の間、何かを悟ったように狼は暴れずに待っていた。縄を解いてやると森の奥に去っていく。


 喰いつかれてもおかしくなかったが、足に怪我をさせたのは俺じゃない。元の大きさに戻れば、こちらの方が大きいはずだし、喰いついて来ないのも当然か…。


 剣士が言っていた猫は居なかった。木に縛った縄だけが落ちていて、元の大きさに戻って縄が外れたと想像出来た。


 蜘蛛は小さくなってしまって、どこに行ったか分からない。


 小さくなった猿には土をかけておく。後始末は終わりだ。さあ俺も早く街に帰ろう。


 日が暮れかけた頃、やっと街に着く。リージュ達が気を回して、馬車馬を一頭置いていってくれたおかげで森から歩かずに済んだ。


 組合の事務所に入ると、リージュが机に頬杖を突いて眠っていた。エルフの二人は見当たらない。


 事務所の連中に抗議すると、事前に報酬は預かっていると言った。この事は意外な事で、俺にはあの男が分からなくなった。


 貴族に与えられた任務に忠実で、手段を選ばない行動が印象を悪くしているだけなのか? 立場を利用しながら宝石を集め、何か悪い事を企んでいる奴なのか?


 どちらであっても報酬を受け取らない理由にはしない。森で殺されていて、クローの手に戻るかもしれなかった金貨はもらって帰る。


 リージュが目を覚ましたようなので、声を掛ける。


「剣。持って帰って来たから、そこに置いとくぞ」


 寝ぼけたリージュが言う。


「ジオ。ありがと。しばらくの間、よろしく」


 暫くは身の危険がありそうだし、一緒に居るのも仕方無い。また俺の仕事が増えるのかと思うと大きな溜め息が出た。

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