第14話 いざ、小屋作り。
クラフトブックで制作した炉とかそういう何かを作る為の道具のことをまとめて『
これの前でクラフトブックを開くと専用レシピが出てくるという話は調理レシピの時にしたと思う。
残念ながら調理レシピはなかったが、幸いにもそれ以外の専用レシピは色々と解放されている。
ただし、基礎クラフト……生活に関する物ではないから解放ボーナスの対象外なのが痛手だ。
「エタデではジョブがあったからなぁ……専用ジョブなら基礎プラス専門レシピで解放ボーナス貰えるから、今の俺はジョブなし……無職なんだよなぁ」
まさにその通りだった。
だから調理レシピが解放されないのか?
とも思ったが、こうして炉の前で専用レシピが使えているのだからそれはない。
やはりエタデのシステムであるクラフトブックとこちらのスキルであるクラフトブック、殆ど同じだが、現実用に改変されている部分が多かった。
「それでもエタデの力を現実に使えるのはとても有難いことだよな」
俺がクラフトブックを使うと、俺の周辺だけはエターナルデイズの世界へと様変わりするのだ。
まさに現実改変。クラフトブックを起点にエタデがこちらの世界に侵食しているみたいだった。
さて、そんな俺が炉の前でクラフトブックを開いて何をしているのかというと、炉で土を使った専用レシピを繰り返し行っていた。
鉄鉱石を掘る際に出てくる土はすべてクラフトブックの上に落ちるようにして自動回収をしてる。
お蔭様で土のストック量は俺の在庫の中で一番の数になっていた。
この大量の土を使って何をしているのかというと、【レンガ】を作っていた。
クラフトブック内で土を10個消費して作る【土レンガ】。
これを本の中から直送で炉へ入れて焼成作業をしていた。
そして焼けて完成した【レンガ】はクラフトブックの中へと入る。
なので、俺はずっとここから動けずにいた。
「モチ~。遊びに行ってきていいよ」
「……」
動けない俺の傍でずっと寝転がっているモチ。
時々俺の背中をでっかい肉球でぺしぺしと叩くから暇なんだろうなと思って提案したのだが、離れる様子はなかった。
結局レンガ焼きは昼過ぎまで続いてしまい、遅めの昼食を食べた後、いよいよ小屋作りに取り掛かった。
これまでは材料を拾ってきてポン、と作っていたが今回は少し違う。
クラフトする為のクラフトが必要だった。
先程まで焼いていたレンガもその一つだ。
そして他にも小屋の中に必要なものがある。
床になる為の板や、寝る為のベッドだ。
台所やお風呂場なんてのはこの小屋にはない。
そういった物は家の外に作るつもりだ。
「大きな丸太、レンガ、それに板材にベッド……もちろん、モチ用のも」
指折り、材料を確認していく。
それが終わったらこの一週間の間に新たに作った
ちなみに板材はこの作業台で作ったものだ。
作業台は木材といくつかの鉄製道具を使ってクラフトすることができる。
炉を作って鉄鉱石を手に入れないと作れない作業台だが、これが完成すると一気にクラフトの幅が広がるのだ。
「こうして家を作ることもできるんだ……すげぇなぁ」
クラフトブックに記されたのは【丸太小屋】。
だが俺の中ではこれは家だ。
エタデでは倉庫扱いされる場所だが、俺にとっては唯一の家なのだ。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸をして、丸太小屋を選択する。
視線の先に大きな黄色いホログラムが見える。
建てる場所はテントが置いてあった場所だ。
すでにテントは撤去している。
「よし!」
作成と頭の中で念じると、ホログラムは実体を持ち、現実に出現する。
「できたぞ、モチ! 夢のマイホームだ!」
本当に夢にまで見た家が完成した。
起き上がったモチ先生がフンフンと鼻を鳴らしながら家の周りを歩いてチェックしてくれる。
ぐるりと一周してくる間に作業台でベッドを二つ作成し、本の中に入れておく。
戻ってきたモチがその足で俺の方へとやってきた。
「どうだった? 合格か?」
「にゃあん」
「そりゃあ良かった!」
ぐにぐにとモチのほっぺたを揉み倒して感謝の意を伝えておく。
嫌そうに前脚でしばかれた。
気を取り直して家をぐるりと一周する。
うんうん、立派な家だ。
四方の柱はひと際大きい丸太で組まれている。
そして柱を繋ぐ壁はそれよりも少し細目の丸太だ。
これを鉄鉱石から製錬して作った鉄でクラフトした釘で打ち込まれている。
しかも丸太をくり抜いて、板で木製の押し上げ窓まで作られている。
「風通しも良さそうだな」
ゲームと違って実際に目で見て見ると様々な工夫がみられる。
これをデザインした人はとても優秀だなぁ。
先程まで作っていたレンガはというと、玄関口の土台になっていた。
ちょっとした雨くらいなら沈没しなさそうだ。
もしかしたら土台にも使われているのかな?
「中も見てみよう」
玄関口のレンガの短い階段を上り、木製のドアを開ける。
中は思っていたよりも広かった。
新しい木の香りがする良い家だ。
何もない正方形の部屋。
その右奥と左奥にそれぞれ、俺とモチのベッドを配置した。
早速モチが左奥のベッドを選んで寝転がる。
自分の匂いを擦りつけるように何度も寝返りをうつ姿は猫にしか見えなかった。
「十分だな……十分だ」
耐久値も破格の10000。
相当なダメージを負わない限り、壊れることもないだろう。
例え耐久値が0になっても、その頃にはもっと良い家を建てられるようになっているはず。
こうして俺は食に続いて住が充実した。
残るは衣。
「しかしこればっかりはな……専用ジョブもないから服のレシピもないし」
時間の問題だとは思っていたが、いよいよ行くしかなくなってきた。
そしてそろそろ塩味が恋しくもある。
「行くか……町!」
このスケアグロウ大森林に初めての外出だ。
目指すは隣領、クライゼル公爵領にある町アンスバッハ。
クラフトの為に集めた物を売って、お金を用意できたら服と塩と……あと良さげな物を沢山買って帰るとしよう。
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