第3話 ターミネーターとカラフル

いよいよ夜が来て風呂に入り、僕は先輩のことを考える。ああ、風邪引いてないといいな、足折れていないといいなと。隣の家、先輩の家の風呂からは相対性理論の小学館が聞こえてくる。よく似ている、やくしまるえつこによく似た声だ。風呂も隣同士の僕らは寂しくなった日、窓を開け合って互いの所在を確かめたこともあった。もちろん性的に確かめたこともあったが交わることはない。お互いプランターの中で愛を育んでいた。

母の眉毛カッターを手に取り、陰毛と脇毛と足の毛を剃る。電池が切れかかったそれは、僕の陰毛を剃り落としたところで止まった。インモラルだろ!!と叫ぶ。いやお前がな!!と先輩は言った。歌う曲(ナンバー)は変わってペペロンチーノキャンディ。石焼き芋と外からメガホンで叫ぶ男の声、バタバタと風呂から飛び出す音が隣から聞こえた。僕もそれにならって全裸で居間に飛び出す。電池は!と叫ぶ。母は何も言わずにボタン電池を渡してくれた。ああ愛だなって思った。

僕は涙に濡れ寂しさの中にいるようだった。窓を開ける。先輩もお風呂に戻ってきており窓を開けサツマイモを食べていた。お互い網戸越し、僕はレモンを歌う。先輩はアンビリーバーズを歌い逆を張る。寂しさも消え、僕は体を洗って、タオルで水気を取りながらちらりと先輩の白くてしなやかで小さい背中を見た。見惚れていると芋の黒くて硬い部分がお湯に落ちた。投げ込まれたのだ。サツマイモの食べカスを。僕はもう、先輩が愛おしくて愛おしくてたまらなくなって、それを食べ、

湯にも入り、90分後風呂から上がった。眠ったのは深夜、12時47分だった。家族からは風呂が長すぎる、毛を剃るだけなのに長すぎる。浴槽が汚すぎるなど家族からの文句の嵐をくらい、色々あったが今日の僕は無敵だった。

 

朝が来るのが夢の中でさえ待ち遠しい、夢うつつの中、着信音にしているバックトゥザヒューチャーのテーマとターミネーターとファイトクラブとジュラシックパークの曲を編集して五重奏にしたものに眠りを覚まされる。先輩からだった。5時だった。ゴジラのテーマも含まれていた。


なんですか…先輩。


やかましい着信音だね。


聞こえてました?


いつも聞いてるよ。隣だし。うっさいなぁって。


変えましょうか。


デデンデンデデン、デデンデンデデン、デデデーデーデーデーェーデデデーデーデーデーデェ。の奴だけにして、私それ好きだから。


ターミネーターですね。僕はバックトゥザヒューチャーのが好きです。ドクが好き。


わかるけど、私はシュワちゃんのが好きだから。


わかりました。


僕は電話を切り、さっき録音したターミネーター、先輩バージョンへと着信音とアラーム音を変えた。すかさずバイブへと変え、着替えを済ませて先輩からの着信を椅子にでも座り、待つ。着信は来ず開けていた窓から紙飛行機が飛んできた。ピンクの紙、手紙用でカラフルなうんこのキャラクターが踊っている。

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