回る男性

影神

落とし物

学校の帰り道に携帯を拾った。


そのまま置いておいても、


誰かが交番に届けるだろう。


とも思ったが。


気が付いたら私は携帯を拾っていた。



最近遊び過ぎてお母さんに門限を早められ、


次破ったらお小遣いを減らされてしまう。


そんな不安が過り、私は家へと急いだ。


「ただいまー?」


家に、お母さんは居なかった。


「さーて、とっ。昨日の録画でも見るかな。」


私はドラマに夢中になり、


拾った携帯の事等忘れて居た。



何しろ。今日から【夏休み】なのだから!!



お母さん「あんたー、宿題やったの?」


「んー。」


お母さん「今日から夏休みだからって。


気を抜いてると、あっという間に。


休み何か終わっちゃうんだからね!?」


「もぉー。分かったよ、、」



私の事を考えてくれるのは有難いけど、、


少し。過保護過ぎるんじゃないかな?と思う。



「せっかく海外ドラマ見ようと思ったのに、、」


バックから夏休みの宿題を取ろうとした時。


ガタ、


床に重い物が落ちた音がした。


「ヤバっ、」


そこには帰りに拾った携帯電話があった。


「傷。付いて、無いよね、?」


恐る恐る携帯を見たが、大丈夫だった。


「良かった、、」


携帯のボタンを触るも、


携帯は真っ暗なままだった。


充電口を見ると。幸い、


私の携帯の充電器と一緒のタイプだった。


勝手に見るのは悪いとも思ったが、


何かその人の手掛かりがあるかも知れない。


そう思い、携帯にケーブルを刺した。



勉強をして暫くすると。


ヴゥ、ヴ。


と、携帯は音を立てた。


「やった。」


私は気になって携帯の画面をスクロールした。


無用心にも、ロック等は掛かって無かった。


しかし。


そこには何も無かった。


まるで買ったばかりの状態の様だった。


携帯もわりかし状態が良いから、


もしかしたら、、新品なのかもしれない。


だとしたら、、


「余計に困ってるかも知れない!」


そう思い立ち上がろうとした時。


私は画面をスクロールしたらしく、


次に見た時にはファイルのアイコンがあった。


指は必然とファイルのアイコンを押していた。


すると。ひとつの動画があった。


「何だろう、」


気になってクリックする。


その動画は男性が車の周りを回る。


と言う何ともシュールなものだったが。


見ている内に、おかしい事に気付いた。


「何、これ。」


車は何かにぶつけた様にへこんでいた。


それに、動画はゆっくりと早くなり。


男性が車の周りを回る速度が、早くなる。


「、、気持ち悪い。」


どんどん。


どんどん。早くなる。


「どういう事、?」


恐怖と好奇心が鬩ぎ合い。


私は動画から目が話せなくなっていた。


すると、急に動画の速度が普通になった。


「、あれ?」


どうやら次は、ゆっくりと。


男性が車の周りを回り始めた。


、、全身に鳥肌が立った。


気味が悪かった。


けれど、動画から目は離せ無かった。


男性はゆっくりと車を回る。


でも。何か、おかしかった。



動画がゆっくりになったから。


私はそれに気付く事が出来た。



男性の目線が、あきらかに私を見ていた。


「、、嫌ッ、」


男性が車の陰から出て来る度に。


男性は私を見つめながら歩いて来る。


何だかそれが、


"そこからこっちへと来ている様に見え始めた"


「、、嫌っ!」


動画は止められない。


私はいつの間にか動けなくなっていた。


「何、、!??これっ。」


口も動かない。


顔も動かせない。


目も。動かなかった。


ただ、私は動画を見せられていた。


「、、嫌。」


男性がこちらにゆっくりと近付いてくる。


「嫌だ。」


ゆっくり。ゆっくりと。


「嫌、」


反らす事も。目を瞑る事も出来ない。


「嫌、!」


男性はゆっくりと私に手を伸ばし、こう言った。



「俺の携帯。返してくれぇ。。!」























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回る男性 影神 @kagegami

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