第41話 戦時下の追憶4

「道を開けろ、バクが通るよ」

「アーネス、何だ。あの馬鹿は一体何なんだ。僕の作戦を聞いていたんだろう? なぜ、敵が多い所に上半身裸で突撃するんだ」

「クライ、彼の考えは、私にもわからないよ」

「うちもびっくりだよ」


 バクの能力は、体の硬度を上げる能力者だ。その硬度は、7,000〜8,000のダイヤモンドに匹敵する硬さだった。


「この気色悪い男は、何なんだ。攻撃が通らない」

「バクには、何も効かない」


 銃弾、槍、剣で攻撃されても傷1つない無敵な体。筋肉美を固執する彼には少し近寄り難い。


「私の防御壁がいらないとは、驚いたね」


 ヘーゼルは、半径100km程に防御壁を張れる。しかし、その機能は、銃弾、飛び道具から身を守るくらいに役立つが、接近戦に弱い欠点があった。


「さぁ、バク。突撃するよ」


 この男は「馬鹿で無鉄砲」だが、戦争をする上での「重要なこと」を肌で感じ能力としたのだ。それは「怪我をしない」こと。負傷兵は戦争においては「邪魔者になること」が多い。なぜなら、怪我を1人負ったら、その「運搬や介助が必要になる」からだ。


「アーネスよ。こんな男を仲間にするとは」

「あー、うん……」

「うちもあそこに行っていい?」

「よし、シルカとセーレは、バクと共に中央突破だ。ヘーゼルは私と待機。テマとルーサーは協力し後方支援。以上」

「アーネス、僕は?」

「クライは、待機だ」

「何でさぁ、そろそろ暴れたいんだけど」


 アーネスの未来予知では、クライからフライに人格が変わり、バクと「暴走する」と感じ取った。これ以上、「戦局を荒らされては敵わん」と首を横に降った。


「さぁ、行くよ。セーレ!」

「えぇ、行きましょう。シルカ」

「さぁ、ここで。洗脳爆発イミテーションだよ」

「わかったわ、洗脳爆発模造……って何?」


 セーレとシルカは、お互いの長所を活かして洗脳と爆撃の荒らしを巻き起こした。


「ルーサー、さっさと眷属で撹乱かくらんしろよ」

「今やってるよ。行け、動物の卵子を培養し合成させた新種のオークよ」


 オークは、豚を顔にしたゴリマッチョで棍棒を手に持っていた2mの巨漢だ。


「ほう、やるじゃねぇーか」

「見たかい、テマ。私だって、やるときはやる男なんだよ」

「あーん、うるせぇな。冗談は顔だけにしろよ」


 テマとルーサーは後方から来る敵をひたすら迎え撃っていた。その様子を退屈そうに見るクライ。


「僕の能力なら、面白くなるんだけどな。でも、あの事件以来、僕の能力は戦線離脱以外と仲間がいない時でしか、使わないことになったからな」

 

 クライ、高台からうつ伏せで足をバタバタさせていた。欠伸をして、退屈そうに戦況を眺めていた。


「さぁ、後少しだ! 全体突撃!」


 アーネスの号令で、兵士が突撃した。突撃を受けた敵将も突然の出来事で対応に追われた。徐々に崩れていく、作戦プランに敵将は撤退を兵士達へ伝令した。そうして、第4拠点敵陣も撤退しアーネス達の勝利が確定した。


「我らの勝利だ」


 アーネスは、兵士の士気を高めるため、高らかに雄叫びを上げた。その声は、戦場の兵士達の活力となり、喉が枯れるまで叫び声で応対した。


 その夜。アーネスは、能力者全員を拠点テントに集めた。


「皆、第4拠点を落とした祝い酒と細やかながら食事を用意した。今回は君達の功績による手柄だ。感謝する」


 各能力者は、黙ってアーネスの話を聞いた。


「さて、残るは第1、2、3拠点と王城の神器奪取だ。この命令は追って通達する。さて、そんなことより、今は我らの勝利に」

「(全員)勝利に」

「(全員)乾杯」


 その日は、セーレとシルカ以外の全員がお酒を飲み明かした。


「お酒って美味しいのかしら?」

「うちも知らんけど、その内飲めるようになるから、気にしなくてもいいんじゃない」

「そう言うものなのね」


 セーレとシルカは、2人でオレンジジュースで乾杯をした。


 宴会は深夜0時近くで終わりを迎えた。最後にクライから急に一本締めをしたいと要望を受け、アーネスは渋々、それを了承した。


「では、皆さん。お手を拝借」

「(全員)よー」


 そのとき、アーネスの未来予知は何かを感じた。これからクライが能力を使う。何で「今」なんだ「納得がいかないが、もうどうすることもできない」アーネスは、諦めた表情でその瞬間を迎えることになる。


「よーぽん」


 クライから、ピンクの煙がもの凄い速さで広がった。テント内から煙が漏れ出し、拠点全体に舞い広がった。その煙は、兵士全員も巻き込んだ。


「ふー、スッキリ」


 クライの満足そうな表情とは、別に周囲の人間は泥酔状態になっていた。


「うち、だってね……」

「何よ、私は……」


 セーレ、シルカは、お酒を一滴も飲んでいないのに、泥酔状態であった。そう、クライの能力は、相手を泥酔状態にさせる能力だ。この能力は強力だが、敵味方関係なく、効力が及ぶことにアーネスは頭を抱えていた。最終的には、手に負えず「アーネスの許可なしに使うな」っと禁じられていた。


「クライ、ど…うして……」

「アーネス、ごめんよ。使うなって言われると使いたくなるんだよ」

「私が悪い…のか……」


 アーネスは、泥酔状態となり気絶した。


「全く、何やってるんだい」


 クライは、驚いた。アーネス、セーレ、シルカ、テマ、バクが酔っ払っているのに、ヘーゼルだけピンピンしている。このとき、クライの欲求は、かつてない程の探究心と知的好奇心が最高潮に達した。


「ヘーゼル、頼む。今すぐに君を解剖させてくれ」

「嫌だ」


 ヘーゼルは、右ストレートでクライを黙らせた。

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