第14話 炎天下の避暑地

 セーレとマークは、正面入り口まで到着し、整備士のコーンと再開を果たした。


「おぅ、マーク。バイクを派手に壊したみたいだな」

「すみません、おやっさん」

「構う事はねぇ、バイクは壊れるもんだ。壊れたらまた修理すればいい」

「おやっさん!!」


 コーンとマークの男同士のやり取りを見て、セーレも少しバイクの話を聞いてみようと耳を傾けた。


「いいか、バイク乗りに必要なのは心だ」

「はい、勉強になります」

「それでな、バイクは風と一体化することが大事でな」

「それは、自分も体験しました」

「それでよ……」

「(…やっぱり好きになれない……)あのぅ、バイク乗りの心得とかどうでもいいので、さっさと私達のバイクの引渡しを済ませてください」


 セーレの指摘を受け、コーンがサイドカー付きのバイクを工場から持ってきた。サーメスとの戦闘時の転倒による傷はなく、表面は丁寧に研磨されていた。


「おやっさん、ありがとうございます」

「いいってことよ」


 マークとコーンは握手を交わした。その間にセーレはバイザー付きヘルメットを頭に被り、サイドカーへ乗り込んだ。コーンとマークの話し込む姿を見ながら、頬杖をついた。


「では、お世話になりました」

「マーク、そのバイクを頼んだぜ」

「はい、おやっさん」


 マークは、バイクのエンジンをかけ、最牡さいおす正面入り口から外に走り出した。アスファルトを走るバイクは、太陽の光を受けて表面が反射し、輝いて見えた。

 

 暫く走るとアスファルトの道から砂漠地帯へ変わり、道と呼べない道になった。


「さぁ、次は私の神器探しよ」

「セーレ」

「何よ」

「神器探しだが、君の神器はどんな形をしているんだ」

「うーん、見た目は槍ね」

「槍?」

「そう。穂は十文字、柄は赤色、石突には獅子がついているわ」

「そうか、わかった。クライさんから貰った探査機に反応はあるかい?」

「全くないわね」


 マークは砂漠の道なき道を暫くバイクで走らせだが、神器の反応は掴む事が出来なかった。気がつけば、夕刻の時間であった。


「セーレ、今日はもうこれくらいにしよう。そろそろ野営の準備をしよう」

「えぇ、そうね」


 マークはバイクを止め、パーキングブレーキレバーをしエンジンキーを引き抜いた。セーレは、マークの鞄から小さな箱を手に取った。


「セーレ、それは何?」

「クライからの貰い物」


 セーレが箱を地面に置き、箱の蓋を開ける。箱の中身が風船のように膨らんでいく。風船は四角形となり、20畳くらいの大きさになった。そして、四角形の物体の表面は硬くなり、石のような高度をもつ。何とも立派な簡易施設が完成した。


「これは、もはや凄すぎて、クライさんの発明は何でもありだな」

「さすが、天才ね。これなら、朝方の炎天下でも快適に寝られるわね」


 セーレが施設のドアに手をかけ中に入る。ドアは4つあり、各々の部屋が構成されていた。1つの部屋を開けると、食材がびっしり入っていた。それも殆どが固形食料だ。


「今日は、これ食べたらさっさと寝ましょう」


 セーレは、マークに固形食料を手渡した。袋に入った固形食料の見た目は、ビスケットに近い形だ。1枚1枚手に取り、食べてみる。その味は、苺を生で食べているようだ。


「何だこれ、見た目はビスケットなのに。まるで生の苺を食べているようだ」

「美味しいわね、気にせずどんどん食べちゃって」

「セーレ、こんなペースで食べていたら食料はあっという間に無くなるんじゃないか。今後のためを考えて、食料の節約も必要なんじゃないか」

「大丈夫よ」


 セーレは、食料庫から小さな冷蔵庫を持ってきた。冷蔵庫を開けると、袋詰めにされた固形食料がこれでもかっと、びっしり敷き詰められていた。


「クライのワープ機能で、定期的に送って貰ってるから。これで食料に困ることはないわね」

「そうだった、クライさん大総統でもあったな。ワープってどんな技術なんだ」

「ほら、そんなこと気にせず、明日活力のために食べな」


 セーレは、マークの口にビスケットを投げ入れた。投げ入れた当人は大笑いしたが、マークの気持ちとしては「もう少しあーん」とかしてくれてもいいんじゃないと反抗心をもった。


「じゃあ、私寝るから。アンタもいつまでも起きてるんじゃないわよ」

「あぁ、おやすみ」


 セーレは、簡易施設に入ろうとノブに手をかけようとした瞬間。その手が止まった。周囲には深い霧が発生し、何やら不気味なうめき声が響く。


「こんな夜更けに誰かしら?」

「セーレ、どこにいるんだ。また優勢思考の連中かもしれない。警戒を」


 マークの声は近くに聞こえるが、ギィー、ガァーという声が響き、セーレは、「彼がどこにいるか」はわからなかった。

 

「ふふふ、やっと見つけた」

「また優勢思考かしら?」

「いいえ、違うわ」

「なら誰よ」

「私はビィシャア=エドモンド。私はあなたを絶対に許さない。あの戦争でパパを殺した殺人鬼をこの手で仕留めてやる」


 セーレの顔が少し引きつった顔になった。


「エドモンド!? まさかあなたは私達の補助をしてくれた」

「えぇ、そうよ。殺人鬼セーレ、無関係な人間を巻き込んだあなたを私は絶対に許さない。覚悟しろ、セーレ!」

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