第13話 戦時下の追憶1
「さようなら」
敵の返り血を浴びて、銀髪から赤髪になったセーレ。彼女の真紅の瞳に映った敵を惨殺していく。目には大粒の涙を浮かべていた。
「凄いね、セーレ!うちも負けないぞ」
シルカの瞳が茶色から黄色となり、敵に視線を送る。目が合ったものが、次々と爆撃でも受けたかのように爆散していった。
「ねぇ、シルカは今楽しい?」
「どうしたの、セーレ。辛いの?」
「敵を潰したり、操ったりすると、その人の見た記憶が私に流れてくるの」
「記憶を覗き込むなんて凄いわ。これなら敵の情報を掴めるし、早く戦争も終わるね」
「でもね、そんな万能ではないの」
「どうして?」
「他人の情報量が多すぎて、名前くらいしか記憶できないの」
「そうなの、無理に覚える必要はないわ。辛くなったらいつでも言ってね、セーレ」
「ありがとう、シルカ」
金髪、黄色の瞳のシルカと銀髪、赤色の瞳のセーレが戦場を駆ける。
「同年代の2人。息が合ってるな、なぁアーネスよ」
「あぁ、ヘーゼル。彼女らも奮戦している。最後の取り分ぐらいは出張らないとな」
「アーネス、お前が出たらすぐに終わるだろうが」
「いや、2人に触発されたかな」
アーネスは、戦場を走る。敵が宙に舞っていく。
戦争は見ず知らずの命を多く奪う。セーレは、流れ出る涙を制御できず止めることができなかった。
「は、また戦時下の夢か。最近嫌な夢が続くなぁ」
セーレが
「やぁ、お目覚めかい」
「げ…クライ……」
「嫌そうな顔しないでくれ、セーレ」
「どの口が言うの」
「それより、約束の物ができたんだよ」
クライは、セーレに眼鏡と収納ケースを渡した。
「これは何?」
「この眼鏡を掛けると、半径1kmの神器に反応し、赤マーカーがつく探査機だ。しかも光で動いているため、太陽光を充電すれば半永久的に使える代物だ」
「そう、ありがとう」
「後、君のマフラーを改修させてもらって、ペンダントにした。真ん中にあるボタンを押すと、君の能力のオン、オフが可能だ。さらに、オフ時は君のオーラも完璧にシャットダウンできる。勿論、太陽光充電でこれも半永久的に使える」
クライから受け取ったペンダントをつけて真ん中のボタンを押すと、セーレは黒髪と黒目になった。眼鏡の方は先端のスイッチを押したが、何も反応がなかったため、収納ケースへ眼鏡をしまった。
「さて、バイクだが、整備士のコーンが直接引き渡したいらしい。入り口付近にいるから、声を掛けてくれ」
「わかったわ」
「クライさん、セーレ。2人とも揃ってるね」
マークがセーレの病室を尋ねた。すっかり、怪我も治り服装も新しくなり、腰に何やら武器を2つかけていた。
「あぁ、マーク。どうだい気に入ってくれたかい」
「それはもうとっても、良い出来です」
「クライ、彼に何を渡したの?」
「あぁ、彼には服とトンファーを渡したんだよ」
セーレは、服とトンファーの何が凄いのかわからなかった。
「説明不足だったね。まず、服は防御陣を貼っているので前より受ける攻撃を30%カットしてくれる。そして、2つのトンファーだが、電撃が流れる。しかも650Vを3回も流し込むことが可能だ。これを受けたら、常人はまず立っていられないね」
「ありがとう、これで俺も戦える」
「ちょっと、あなたは戦いには参加させる気はないわよ」
セーレはベッドから降りて、マークの目を見つめた。マークも頑張って見つめ返し、セーレの肩に両手を置いた。
「ちょっと……」
「大丈夫、君に迷惑は掛けないから、これから宜しくセーレ」
「足手纏いなら、その場に捨て置くわよ」
「望むところだ」
「…それと……」
「それと?」
「いつまで、肩に手を置いているのよ」
セーレの拳がマークの頬にクリンヒットした。クライがマークの側まで歩いて近寄ってきた。
「トンファーだか、1回使うと1日光充電が必要だ。つまり、3回使い切ると、1日経たなければ使えないということだ。ここだっていうときの切り札だから、慎重にね」
「何から何まで、ありがとう、クライさん」
クライとマークは握手を交わした。
「ちょっと、着替えたいからアンタは出て行きなさいよ」
マークは、セーレの足蹴りを受けて、病室の外に締め出された。セーレは、クライから支給された服に着替えた。上半身は白っぽい服。手には黒グローブ。黒スカートに黒のレギンスを履いた。
「因みに、その服にも仕掛けがあるんだよ」
「クライ、説明はいいわ。ただ身体能力向上とワープ能力がついただけでしょう」
「そのワープ機能の原理が凄いのになぁ」
「あなたの話が長くなるし、あんまり難しい話はわからないわ。さてお別れね、クライ」
「まだ僕は話し足りないし、また君を解剖できなかった。また必ず来てくれよ、セーレ」
「…えぇ……考えとくわ」
セーレは、病室の扉を開けマークと共に歩き出した。
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