第2話 特訓

「ただいまシスターリサ」

「おかえりなさい香ちゃん」


 孤児院に帰ってシスターリサに挨拶をする。私はこの御神孤児院に拾われた。捨て子だったらしいが、特に不便はない。それに普通の家庭なら探索者になるのは反対されそうだからむしろ好都合だし。


「それでダンジョンに行ってきたんでしょ、スキルはどうだったの?」

「良かったよー」


 そしてスキルについて話すと、良いスキルねと喜んでくれた。


「それでねシスターリサに相談があるんだけど……」

「何かしら?」

「アビリティの魔刃剣についてなんだけど、どんなスキルかわかる?」

「それだったら意識してみればなんとなくわかるわよ」


 そう言われたから試しに意識してみると、剣身に魔力を流して強化するイメージが浮かんだ。なんとなくそれだけじゃない気がするけど、とりあえずこれ以上はわからなかった。


「どう? ちゃんとわかった?」

「うん、明日またダンジョンに行って試してみる」

「そう、それじゃあたくさん食べて英気を養わないとね。といっても他の子たちが食べ始めてるからもう残ってないかもしれないけど」

「うわああぁ! それを早く言ってよ!」


 そうしておかわりできずに寝て、次の日。ランク1ダンジョン1階でスライムを相手に実験しに来た。


「さて魔刃剣を試してみようっと」


 手近なスライムに近づいて魔刃剣を使うと、2割近くの魔力が包丁に流れた。どうやら属性変更と違って継続的に魔力を消費するのではないようだ。


「さて、シッ!」


 スライム目がけて包丁で切りつけると、真っ二つに切り裂いた。もちろんスライムは一撃で倒れた。


「うわー強い、さすがは魔力を2割使った威力かな」


 それに切りつけたときに魔力で出来た刀身が伸びていたように見える。


「試しに魔刃剣、ハァっ!」


 空ぶってみると、魔力が軌跡を描いて飛んで行って段々小さくなって消えた。一応消えた距離としては5mくらいかな? でもその分威力は低くなってると考えると3mくらいが有効距離かな。


「それにしても消費が重い。2割は重いなー、消費を抑えられないかな?」


 まあやるにしても属性変更のアビリティのほうがやりやすそうだ。


「今日はとりあえず属性変更でスライムを倒して、明日の学校に備えて特訓用品揃えないと」


 そうしてスライムを倒したお金で、ちょっとしたものを買った。




 次の日、学校に行って勉強を受ける……ふりをする。この体のスペックが良いからか、聞いてるだけでだいたい理解できる。それで勉強をしないで何をするのかというと、魔力を動かす特訓だ。


「(高位の探索者は自由に魔力を動かして、身体強化やアビリティの消費を少なくできるらしい。それにこうして鍛えれば魔力も上がると言われてる)」


 もちろん鍛えるだけでなく、魔物を倒すことでも魔力は上がるし身体能力も上がる。でもより強くなるのなら特訓は欠かせない。

 そんなわけで用意したのがこれ、鞘付きペティナイフ! 机の下にペティナイフを持ってきて、属性変更のアビリティを使う。魔力がペティナイフに流れるのを感じながら、流れる魔力を少なくなるようにコントロールする、が。


「(うぐぐぐ、すっごく動かしずらい。というか動いてるのかなこれ)」


 そう疑問に思ってしまうほどまったく動かない。手応えはあるが、少しも流れる量が減ってる気がしない。そうしてしばらくやって、魔力が無くなってきた。もちろん今度は魔力が回復するまで、違う特訓をする。


「(といっても今までやってきたことだけどねー)」


 ペティナイフをしまって、ハンドグリップを取り出す。今までも使っていたが、今度のはもっと力が必要なやつだ。これを隠しながら握っていく。

 そうして魔力操作と握力強化を交互にやりながら、学校で過ごした。その中でなんとなく魔力の回復速度が一定ではないことに気づいた。なんとなくではあるが、落ち着いているときの方が速く回復してる感じがする。


「(それならハンドグリップを握りながら瞑想みたいなことできないかな?)」


 もしかしたらこれも慣れてきたら、速くなっていくかもしれないし。それと放課後も特訓に当てることにした。一回ダンジョンに行ってみたが、ろくに倒すことが出来ずに門限になったからだ。これなら特訓の方が強くなれそう。


「といってもダンジョンに入る前とやることはほとんど同じだけど」


 ダンジョンに入る前は、走り込みをして体力を付けて竹刀を振って特訓をしていた。今はこれに加えて魔力操作もやる。実践では常に魔力操作をして身体強化しながら動くのが理想だ。それならこの特訓のうちからできないと話にならないだろう。


 そうしてこれからの平日は特訓に当てることに決めた。

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