第33話
「ワイがどこから来たかやて?ワイは闇魔法使いが最も多いカガクの国からや。」
ハムスターは、腕を組み胸を張って自慢げに答えた。
「科学の国~⁉」
俺と詩織は同時に言葉を口にした。
科学の国だと⁉もしかして俺達と同じ転生者が創った国じゃないのか。ついに俺達と同じ境遇の人間と出会えるのか?
「せやで」
「ん?闇魔法って何なのよ」
ナイス質問だ、詩織。もし闇魔法が科学的なことならカガクの国は転生者の国だと確定する。
「なんや、闇魔法知らへんのかい。さっきワイのことを窓から投げたから絶対教えへんで。」
クソ生意気なハムスターは、俺達に中指を突き立てた。
何なんだこのハムスターは。生意気なんてもんじゃないぞ。
俺はレベッカの手の上に乗っているハムスターを掴もうと近寄った。
「屑さん待ってください。私が説明しますから」
レベッカは投げられないよう、ハムスターを両手でわき腹バラに抱えるように持った。
流石に五回目のボール投げは防がれたか、ここはひとまずレベッカに教えてもらうがいつか必ず人間様の素晴らしさをこのハムスターに教えてやる。
「いいですか、闇魔法とは本来の物質とは逆の特徴を持つ物質を創造することです。分かりますか?」
「ん?ちょっとまだ分からない。」
俺は首を傾げ答えた。
本来の物質とは逆の特徴を持つ物質の創造?どういうことだ?
「一番有名なのはコールドフレアです。炎は熱いのですが冷たいという真逆の特徴持っています。このような常識と異なるところから闇魔法と呼ばれています。」
「え?冷たい炎って強いの?」
冷たい炎なんて氷水みたいなもんだろ、強いイメージが湧かないな。
「何言っているのですか?とても強力ですよ。闇魔法は扱いづらくごく一部の上級者にしか扱えません。」
「じゃあ強いのか。」
やはり転生者には何かしら隠された力やチート能力を持っているものなのか、なのに何で俺らにはそれが無いんだよ。あのクソ女神が俺達だけに渡し忘れただろ、俺が死んで再会したら絶対に殴ってやる。
「もしかして私も闇魔法を使ってるのかも。」
衝撃の一言が詩織の口から飛び出した。
「え⁉」
俺達は驚いてグルン!と、首を曲げ詩織の顔を見た。
闇魔法を使っているだと?ごく一部の上級者にしか使えないはず、確かに剣の扱いは上級者だが一体どういうことだ?
「前々からおかしいと思っていたのよ、南詩織さんの胸なのにツルペタだなんて。本来の物質とは真逆の特徴……、間違いないわ、私の胸は闇魔法の影響を受けていたのよ」
詩織は迫真の顔で言った、その顔の中にはどこか狂気じみたものを感じだ。
「詩織さん本当なのですか?」
何で信じるの?バカなの?ねぇバカなの?
「間違いないわ」
「ヘッ!ただ貧乳なだけやろ、何言うとんねん。」
ハムスターは、胸の前で両手をヒラヒラさせ、壁というジェスチャーをしながら言った。
「ああ、そうだぞ。舐めていたが胸を見る目はあるようだな」
聞いて損した。全く闇魔法使えるのかと思ったらただの貧乳が実は自分が巨乳だと夢を見ているだけかよ。
「何?何が言いたいのよ?」
やばい……、やらかした。詩織の貧乳いじりは自殺行為だった。このままだとそこの殴られて意識を失った和のようにボコボコに殴られてしまう。どうしよう……。
絶望の中俺の頬に、一滴の冷や汗が流れた。
「その胸は闇魔法は関係ない言うとんねん、文句があるならカガクの国に行って調べてもらおやそうすればはっきりするで」
「べっ、別にそこまでしなくていいわよ。」
助かったー、てかもう答え出たじゃん、自分で闇魔法のせいじゃないって自白したようなものだろ。それにしてもあのハムスター肝が据わっているな、あの詩織にあそこまで言うなんて見直したぜ。
「いつカガクの国に行きますか?」
「まあお金ないから十万ギラぐらい欲しいから二回ぐらい任務いかないとだから一週間後とか?」
そう俺達はついさっき四十億ギラの借金を返済したばかりでお金が無いのだ。カガクの国に行くなら旅行費としてある程度の金は欲しいからな。
「なんや、お前ら金無いんかい。」
「ハムスターのお前が言うな」
「別にええやろ、君らと違ってワイは金持ってるねん。」
俺達をバカにするように鼻で笑って答えた。
え?こいつ金持ってるのかよ。
「お前を送り返すためにカガクの国に行くんだからその金寄越せよ」
金集めるために任務に行かないといけないのかと思ったがこいつから奪うだけの簡単な内容に変わったな。
「嫌に決まってるやろ、屑ってバカなん?」
「てめぇこの野郎。」
と、ハムスターの頬袋を引っ張った。正直フワフワしていてモチモチで気持ちよかったが、しかしハムスターは俺とは違ったらしくじたばたと暴れた。
何これ……、癒される。
ハムスターのフワフワな快楽に溺れ、俺一心不乱に頬袋を引っ張っては戻す、引っ張っては戻すを繰り返した。
「屑さん止めてください。」
と、詩織は俺からハムスターを奪い取った。
「うーイチチチ……、全くよくこんなに愛くるしい生き物にそんなことできるな。さっきのこともそうやけどとんでもないな。」
「え?」
俺何かしたか?困ったな本当に身に覚えがない。
「嘘つくなや!ワイをそこの窓から投げたやろ!」
ハムスターは窓を指差して言った。
「俺そんなことしたっけ?」
へー、俺そんなことしてたんだ。どうでも良かったから忘れてた。
「そんなことより金渡す気ないんだな?」
「当たり前や!」
はぁーあ、面倒くせぇな。何でこいつのために危険な任務に行き金を稼がないといけないのかよ。
「え~、じゃあ任務に行かないといけないってこと?危ないから嫌なんだけどー。」
体がガクンと折れた詩織が溜息交じりに言った。
「詩織さんの実力なら大抵の討伐系任務は軽く達成できるじゃないですか。何が嫌なんですか?」
「え?詩織って強いん?」
「はい、詩織さんはとても強いですよ。剣の腕前は五本の指に入っているくらい強いですよ。」
え?詩織ってそんない強かったの?そんなに強いのになんであいつあんなにビビってんだよ。あいつやはり戦士にさせれば良かった。
「へー、そんない強いんならワイと勝負しようや。もしかてたら五万ギラあげるで、ワイが勝ったらお前ら全員に謝ってもらう。どうや?」
ハムスターは自信ありそうに答えた。
あのハムスター何で強気なんだよ。さっきポンポン投げられていたのに何で勝てると思ってるだ?やはりどれだけ饒舌だろうとハムスターはハムスターあの小さな脳みそではまともな判断は出来ないかのか?
「どうするんや?」
「それは勝負内容によるわよ」
「それもそうやな。ワイの先天性の得意魔法アルティメットバリアに五秒以内にカスリ傷一つでもつけられた詩織の勝ちや、傷つけられへんかったらワイの勝ちや。やるか?」
「勿論やるわ」
「五秒?なんの五秒?」
「ワイのアルティメットバリアは先天性の魔法や、使えはしても魔力の消費が激しくて持続できへんねや」
「先天性の魔法?」
は?なにそれ?また聞いたことない言葉だな。
「生まれつき使える魔法です。」
ほうそういうものがあるのか……。
「え?詩織大丈夫なの?俺絶対あのハムスターには謝りたくないんだけど」
「任せなさい、私も五秒には自信があるのよ」
自身の胸を叩き、詩織が答えた。
「どういうこと?」
俺は眉間にしわを寄せて尋ねた。
五秒に自信がある?どういうことだ?
「私はバフ魔法を自分に掛けて使う場合体への負担が大きくて五秒間しか体が持たないのよ」
分かりやすく五本指を立てて答えた。
「はぁー⁉お前僧侶としては回復魔法が使えない無能‼戦士としてはバフを使った全力は五秒間しか戦えない無能‼お前はどこで役に立つんだよ‼」
怒りに身を任せ俺は詩織の胸ぐらを掴み揺らした。
「仕方ないでしょ!体に合わない力を持っているんだから!それに私だって役に立つわよ、ダンジョンボス戦の時だってバフ魔法使って役に立ったでしょ!」
詩織は俺の手を払いのけ逆に俺の胸ぐらを掴み揺らした。
「でもそのボス戦も結局お前がボスを倒してただろ!そして悪魔戦の時戦えなくなってたんだろ!バカ‼」
今度は俺が詩織の手を払いのけ再び詩織の胸ぐらを掴み揺らした。
「二人ともやめてください。」
レベッカが俺と詩織の間に割って入り仲裁した。
「争っている場合ちゃうやろ?とっととワイと勝負して謝れや。」
クッ!このクソハムスターが、絶対人間様の素晴らしさを分からせてやる。
「詩織……、いけるか?」
「私を誰だと思ってるのよ、レベッカちゃん剣貸して。」
「どうぞ。アルティメットバリアには気を付けてください最強の物理防御魔法です。」
ハムスターを机の上に置き、腰につけていた剣を詩織に手渡した。
「レベッカちゃんありがとう。それじゃあいつでもいいわよ。」
「何で格好つけてるんか知らへんが負けるのはそっちやで、アルティメットバリア」
ハムスターは両手を前にかざしバリアを張った。
「プラスパワー」
詩織は杖を翳し、自身に筋力上昇のバフ魔法を掛けた。
「私はあんたみたいな雑魚に負けはしないわよ、くたばれぃ!」
ハムスターに向かって走り飛んだ、そして宙で回転して剣を振った。屋敷の中に、ベキッ‼と大きな金属音が鳴り響いた。見てみると詩織の持っている剣は折れていた。それと同時にピキピキッ!とバリアがひび割れる音がした。
「よし!勝ちだ」
「嘘やろー⁉ワイのバリアにヒビを入れたやって⁉」
ハムスターは大きく口を開け、両手を両頬に当てて驚いた。
「う~ん失敗ね。中々出来ないわね」
詩織は折れた剣を眺め、不服そうな顔で呟いた。
「失敗やて⁉今のが⁉もう十分凄いやろ!詩織は何を目指してんねん!?」
「私の親父に教えてもらった防御やカウンターなどそれら一切を無視する技よ。はぁーあ、出来ると思ったのに。剣返すわね」
溜息混じりに、折れた剣をレベッカに手渡した。レベッカは剣が折れたことに驚き口をパクパクしている。
「すごいお父様ですね、どんな人だったのですか?」
我に返ったレベッカは詩織に質問した。
「ん~……そうね、とにかく親父はクレイジーだったわ。特に私が十八歳になった頃から『護身術だ、詩織は顔がいいから五十人の男に囲まれても勝てるようになれ』って言って剣道の修行がより辛くなったわ」
「へー、滅茶苦茶ええ親父さんやんけ、大事にせえよ?」
何事も無かったかのようにハムスター言った。
「おい話ズラして無かったことにしようとすんな。とっとと五万寄越せ」
俺は寄越せと言わんばかりに、手をクイクイと振った。
「チッ!ほら受け取りや!」
今度は右の頬袋から五万ギラを出した。
汚ねぇ……、ふざけんなよ。ちょっと臭いし何でお金を頬袋に入れて持ち歩いてんだよ。人間様に勝負挑もうとしたことが間違いなんだよ、このバカがよぉ!
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