第30話
イライラする……。絶対に覚えてろよ、このキモジジイが!このカジノをぶっ潰してやる‼
この瞬間俺の目的は借金返済からカジノを潰すことに明確に変わった。
「カードヲステマスカ?」
「二枚捨てますわ」
「五枚捨てる」
俺とオーナーは宣言通りの枚数カードを机の上に捨てた。そしてジャッジゴーレムがそれぞれが捨てた枚数それぞれにカードを配った。二人とも配られたカードを右手で受け取った。
「ベットガクヲドウゾ」
「お……」
「オールインの六千二百五十万ギラでしょう?」
俺の発言を遮るようにオーナーが言った。
こいつ分かっててあの金額ベットしてたのか……。
「そうだが何故そうだと分かったんだ?」
和が会話に割り込むように質問した。
「それは私があえてその数字になるようにベットしたからですわ。」
「なるほど……」
「どういうこと何ですか?」
レベッカが首を傾げて、和に尋ねた。どうやらレベッカはまだ理解していないようだ。
「あなた達の借金四十億ギラ返済するには二連続オールインファイブカードの八倍付けしかないようにするために、そしてオールインならば二戦のうち一戦勝利するだけであなたの有り金全回収できるからですわ。」
オーナーは誇らしげに答えた。
「そんな……ずっと掌の上で踊らされていたなんて……。」
レベッカはが絶望の淵に立たされた。
あと二戦残ってるのにもう負けると思われてるの心外だな。レベッカにはギャンブルの後、教育的指導が必要だな。
「その通りだオールインベット額は六千二百五十万ギラだ。」
俺のカードは揃ってる。絶対に勝てる。
「カケキンハ六千二百五十万ギラデス。カードオープン。」
屑とオーナーはお互いにカードを表にして出した。オーナーは二のフォーカード。屑はエースのファイブカードだ。
「クズサンノカチデス。オーナーは六千二百五十マンギラのハチバイノ五億ギラオシハライクダサイ。」
「よし!まずは俺の勝ちだ!」
と、俺は右手で寄越せ、寄越せと言わんばかりに高速で手招きをする。
よし、復讐の始まりだ!あと一回ファイブカードを出して、四十億ギラを手に入れ、このカジノをぶっ潰してやる。
「屑でかしたわ。あと一回ファイブカードを出すだけよ」
と、詩織がグッドサインを送った。
さっきまで俺が負けて怒ってたくせに、物凄い掌返しだな。
「屑さん凄いです。あと一戦頑張ってください」
こっちもさっきまでもう俺が負けるみたいに思ってたくせに、俺の周りは敵だらけだな。だがレベッカの言った通りあと一戦、この一戦こそが俺が全てを賭けた大勝負だ。
「ふん、何を喜んでいまして?次もオールインなさるのでしょう?ならば次負けたら再び一文無しになるだけではなすって?」
余裕そうに言葉を放ち五億ギラを俺に手渡した。
「ソレデハカードヲクダサイ」
俺とオーナーは手に持っている全てのカードを机の上に置いた。ジャッジゴーレムは机の上のカードを集めた。
「ソレデハヨンホンメデス」
ジャッジゴーレムはトランプを良く切りオーナーと屑に五枚づつカードを配った。二人はカードを受け取った。
「カードを捨てますか?」
「二枚捨てますわ」
「俺は捨てない」
「あらあら随分とお強い役がそろったらしいですわね」
と、オーナーは宣言通りカードを二枚机の上に捨てた。
オーナーはそう言ってるがこの勝負もう俺のハンドカードは関係ないのだ。
「ソレデハベットガクヲドウゾ」
「オールイン五億ギラ」
俺は勢いよく言った。
この最後の一戦が全てを決める。昨晩考えるだけ考えた究極のイカサマ出来れば最強、出来なきゃただの馬鹿……、これこそまさにギャンブルだ。
不安という感情が鎖となり俺の心を縛る。
「カケキンハ五億ギラソレデハオープン!」
そして、俺とオーナーは同時にカードの表が見えるように机の上に置いた。俺は二、三、六、七、十の役無し、オーナーは二のワンペアに五のスリーカードでフルハウスだ。
「おほほほほ!私の勝ちですわ。それでは五億ギラお支払い頂けますぅ?」
オーナーは喜び、高笑いしている。
「クズサンエースノファイブカード、オーナーヤクナシ。クズサンショウリ、オーナーハハチバイヅケノ四十オクギラワタシテクダサイ」
よし!狙い通り上手くいった。ずっと不安だったが何とか成功だ。
「な……、何故ですの?ちゃんとご覧になさい。どう見てもお相手が役無しで私がフルハウスの私の勝利ですわ。」
オーナーは必死になってジャッジゴーレムに説明した。
バカめ、目に見えるものだけが真実とは限らないんだよ、バカ‼ あの厳つい面のおじさんが、お嬢様言葉で俺のことを馬鹿にしていたオーナーが滅茶苦茶に焦って哀れな顔になっているのを見ただけでこれまでのストレスがすっきりした。
だが払うものはしっかりと払ってもらう。
「おぅーい‼とっとと四十億ギラ寄越せよ‼」
自分の借金を他人に押し付けるような形にはなったが罪悪感のかけらも感じることなく俺は寄越せ、寄越せと急かすように手招きをした。
フハハハハ!良い!最高に気持ちいい、さっきまで俺のこと煽ってたのになぁ。
「あ……あぁ」
オーナーは放心状態になって、目の焦点が合わず、フラフラと頭が揺れた。
今の無様なオーナーを見てるとより一層清々しい気持ちになった、だが勿論攻めの姿勢を緩めない。
「言葉が違うから理解できないのか?なら、あらあらお金を早くお支払い頂いても?」
「ああああああああああ‼」
オーナーは両手で頭を抱え藻掻いている。
どうやら俺のお嬢様言葉でようやく自分の負けが理解できたようだ。
「屑さんこれはどういうこと何ですか?」
「それは……、」
「説明しよう‼」
俺の説明を遮り、自信満々の和が言った。
せっかくの種明かしタイムが……、まあ今回は譲ってやるか。
「俺がジャッジゴーレムに寄りかかっていただろ?だからジャッジゴーレムに幻視の魔法で幻覚を見せたんだ」
胸を張って、誇らしげに言った。
「凄いです、和さん」
これはいけないこれでは和一人の大手柄の活躍だと勘違いされてしまう。
「そうするように和がジャッジゴーレムに寄りかかって起き上がったときに支えるふりをして和に触れ読心魔法の応用で俺の心を和に伝えたんだ」
俺は、自分の活躍を知ってもらうために補足説明した。
俺は和だけの活躍だと思われるのは嫌なのだ。
「そうなんですか?二人ともすごいですね」
レベッカが感心して言った。
「ちょっと二人とも、私のレベッカちゃんを奪おうとしないで!」
詩織は嫉妬して、レベッカを抱き寄せた。
「奪おうとしてないし、お前のじゃないしで突っ込みどころが多いな」
俺は呆れて嘆息を吐いた。
「でも三本目のファイブカードがなければ失敗だったんですよね?危なかったですね……」
レベッカは胸を撫でおろして言った。
仕方ない教えてやるか……。
「あのファイブカードは一戦目、二戦目のときに手に入れたエースのカードをジャッジゴーレムに返さずに見えないように膝の上に置いてたんだ。塵も積もれば山となるってやつだ」
俺は誇らしげに答えた。
このイカサマは元々は考えていないイカサマだった。何故なら多くの試合で負けることになるし、青天井でなければ時間がかかる作戦だったからだ。
「イカサマでしたの?卑怯ですわ!人として最低ですわよ‼」
オーナーは俺を蔑んだ。
こいつ、随分な言いっぷりだな。このバカに現実を教えてやるか……。
「ポーカーでイカサマしない訳ないだろ‼バカがよぉ‼」
「そ……、そんな……、でもイカサマならさっきの試合は無効にしてくれませんか?四十億ギラなんて払えませんわ……。」
オーナーは俺に縋りついて言った。俺に縋りついたオーナーの無様なさまは最高に気持ちよかった。
払えないと言って泣き付けば許されると思ってるオーナーにはもっと恐怖を与えないとな。
「ニーナさぁん!来てください!」
俺はニーナさんを呼んだ。
カジノの中にいつも怒ってばかりで審問官よりヤクザに向いているニーナさんが来た。
「人を呼び寄せといて待たせんじゃねえよ‼」
「グホッ‼」
俺はニーナさんに肩を掴まれ思いっきりみぞおちを殴られた。
相変わらずニーナさんの拳は重たい。だが、今日だけは我慢できる!
「どこのゴミカスが金を払わねえんだ‼クソがァ‼」
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