第29話
「君、私とギャンブルしませんこと?」
黒スーツをビシッと着こなした厳つい顔のおじさんのが声をかけてきた。
そうこのおじさんこそがこのカジノのオーナーだ。この見た目でお嬢様言葉ギャップが凄くて俺は一瞬思考が停止した、十秒ほどして再び思考が巡り始めた。
「オーナーとギャンブル⁉一体何故俺に勝負を挑んで来るんだ?」
意味が分からない……。オーナーの喋り方も理解できないが何故オーナーが俺に?
「そちらの殿方と姫君がこちらのカジノで大勝をしたことでカジノの経営が何度も危険に陥りました。故にそのお仲間である貴殿もまた大勝をなさるやもしれませんので私おんみずから勝負をしに来たという訳ですわ。」
と、オーナーはニヤッと笑って答えた。
あの二人オーナーに警戒されるほど勝ってたのか……。
「でも二人とも大勝ちした後に大馬鹿行為してますよ」
そうあいつらは大勝ちしてた、しかしその価値額を全て無に帰す行為をしたのだ。詩織は一本一億ギラの酒を十五本買って一文無しとなったのだ。和は俺と詩織、レベッカの三人の静止も聞かずにポーカーでノールックオールインという奇行をしてその勝負に負け一文無しとなった。本当に救いようのない二人だ……。
「すいませんでした……。」
和と詩織は正座し、小さな声で申し訳なさそうに謝った。
正直二人合わせて四十億ギラのミス謝られても許す気にならないので無視する。
「貴殿からしたら愚行だとしましても姫君の十五億ギラの飲酒は経営に大きなヒビが入っていましてよ。それに貴殿はその様な愚行することなく借金返済に充てるのでしょう?」
「そりゃ勿論」
俺は即答した。
当たり前だ、誰が四十億ギラの借金があって、十五億ギラの飲酒、二十五億ギラのノールックオールインポーカーなんてやるか、世界中探してもそんな狂人この二人しかいない。
「屑聞いた?私の飲酒は相手にダメージを与えたそうよ。つまり無駄じゃなかったんだわ」
詩織は無い胸を張って言った。
こいつは一体どうしてこれほどまでに胸を張っていられるのだ。何をどう考えて今の発言をしたのだろうか……、頭がアルコールにやられた奴の考えることは理解できないな。
「無駄だったろ、別にカジノを潰しに来てるわけじゃないんだから」
軽くあしらうように答えた。
こいつと話してると話が全く進まない。
「それでギャンブルの勝負は受けてくれるのでありまして?」
「……いいでしょう。勝負しましょう。」
「屑さんいいんですか?相手がこうやって挑んで来るってことは何かしら勝つ方法があるからってことですよ」
レベッカはとても不安そうに言ってきた。
レベッカの言いたいことは分かる滅茶苦茶勝つかもしれないような人間とギャンブルするっていうんだイカサマをしてくるのは分かり切っている。
「でもやるしかない。断ればギャンブルさせてもれなくなるかもしれないからな。」
そう大勝ちしそうな人間と進んでギャンブルするということは余程自分の運に自信があるのだろう。それほどの人間とのギャンブルは確かにリスクだ。
だがギャンブルできなくなるというのはそれ以上の大きな問題なのだ。
「良くお分かりでありましてよ。勝負はポーカーで良くって?」
と、オーナーは近くにあるポーカーテーブルを指差した。
「ああ、問題ない」
そして俺とオーナーは、向かい合うように座った。
「屑大丈夫?ギャンブル最強の私がやろうか?」
詩織は自身を指差し、楽観的な口ぶりで言ってきた。
「結構だ」
こいつに任せたらどれだけ勝っても酒にされてしまう。
「頑張ってください屑さん。」
レベッカがファイティングポーズで応援してくれた。
正直言って詩織の言葉よりこういう応援が欲しいものだ。
「任せろ!」
と。俺もレベッカに合わせてファイティングポーズを取った。
「それではカードを配りましてよ」
ディーラーはトランプを良く切りカードを俺とオーナーにカードを五枚づつ配った。俺とオーナーは左手でカードを受け取った。
「因みにですが、百五十万ギラ支払い頂くことで賭け金を青天井にすることができましてよ」
「え⁉まじか勿論払う。」
俺は百五十万ギラをオーナーに渡した。
良かったポーカーの賭け金の最高金額が五百万だから時間掛かりそうだと思ってたから良かった。ずっち不思議だった和と詩織があの短時間であれほどの金額を稼いだのか、というのも青天井にしたからなのだろう。
「分かりましってよ。これで今日のギャンブルは青天井で出来ましてよ。」
「よし、それじゃさっそくベット一千万ギラ」
「コールでしてよ。それでは一度目のカード捨て時間でしてよ」
「二枚」
俺は机の上にカードを二枚捨てた。
「では三枚」
オーナーは机の上にカードを三枚捨てた。
そして各々捨てたカードの枚数だけトランプ束の一番上から引いた。
「レイズ一億ギラ」
オーナーは自信ありげに笑みを浮かべて言った。。
「レイズオールイン」
相手がどれだけハンドカード(手に持っているカード)に自信があろうとこっちは最強のイカサマをしている、つまり俺に負けは無い。
「随分と自信をお持ちだこと、そちらの度胸に敬意を表してコールでしてよ」
俺とオーナーは、互いにニヤッと笑った。
かかったな、厳ついおじさんがお嬢様言葉で頭をよく見せようとしたところで無駄だったな。バカはバカだ。
「オープン」
お互い右手からトランプ五枚の表が見えるように机の上に置いた。俺はエース四枚とジョーカー一枚のファイブカード。オーナーもエース四枚とジョーカー一枚のファイブカードだ。
「え……?」
俺の頬に一滴の冷や汗が流れた。
は……?、まじ……かよ……。トランプは同じ数字のカードは四枚しかない俺は他のテーブルから奪っておいたカードを袖の中に入れていただけの簡単なイカサマをしていた。つまりオーナーは自力でそのファイブカードを作ったということだ。
どれだけ豪運なんだ。
「お……同じ?こ……これは引き分け……?で合っておりましてよね」
オーナーは俺がイカサマしていることに気付いていないのか?
やはりお嬢様言葉を使って頭をよく見せようとしていただけの馬鹿なのか……?
「あ……あぁ」
ヤバかったイカサマしてなかったら二十億ギラ……危なかった……。
「危なかったですわ……イカサマしてなかったらどうなっていたことかしら」
ボソッとオーナーが呟いた。
お前もかーー‼こいつもイカサマしてたのか、だから絶対にありえない状況になっても問い詰めてこなかったのか。
「もう一度ですわ。」
オーナーに勝負を提案されるがまま、俺は何度もギャンブルをした、しかし、その後も常にお互いがファイブカードで引き分けというのが何度も続いた。
「これではいつまで経っても埒が明かないやり方を変えよう」
この終わることのない時間の無駄遣いを止めるべく、俺は新たな提案をしようとした。
「いいですわね。こんなのはどうかしら?四本勝負、お互い二本づつ賭け金を自由に決められる。」
好きに掛け金を決められるのはこっちとしてラッキーだ借金返済のためにどれだけ頑張ってもレートが上がり切る前にフォールドされては面倒くさいのだ。
「いいがジャッジゴーレムにディーラーをしてもらう、お互い袖を捲ることが条件だ」
「……よくってよ」
オーナーは一度深く考えて答えた。
どうやらオーナーは分かっているようだ、袖を捲ることでその場で配られたカードで勝負しないといけなく、ディーラーがジャッジゴーレムならイカサマが本当にできないということが。
「ではどの勝負でベット額を決める権利が欲しいですか?」
「後半の三番目四番目の二本だ」
俺は常に巻き返せるように後半に試合を選んだ。
後半ならば借金を返せるような金額をベットすればいいだけ、むしろ前半に勝っても後半の試合でお金を守れるとは限らない。
「分かりましてよ。」
そして、オーナーの指パッチン一つでディーラーはその場から離れ、ジャッジゴーレムが来た。
「リョウカイシマシタ。ソレデハカードヲクバリマス。」
ジャッジゴーレムはトランプを良く切り俺とオーナーに五枚づつ配った。お互い配られたカードを右手で受け取った。
「う……うぅ……」
俺と詩織にボコボコにされてた和がジャッジゴーレムに寄りかかって起き上がった。
ギリギリのタイミングだがナイスだ!今目が覚めなかったら永遠に覚めないようにしてやってたところだ。
「大丈夫か?」
俺は和の肩を支えるように腕を伸ばして和の肩に触れた。
「大丈夫だ……任せろ」
和は普通に会話ができるところまで回復したようだ。
とはいえ人に親切にされたならありがとうって言えよ。
「ソレデハカードヲステマスカ?」
「三枚ですわ」
「四枚捨てる」
俺は四枚、オーナーは三枚のカードを捨てた、その後ジャッジゴーレムはそれぞれが捨てた枚数分カードをそれぞれに配った。
「ベットガクヲドウゾ」
「そうですわね……あなたは私が勝てると思いまして?」
オーナーは後ろの黒スーツに確認を取った。
なぜこのような大事な場面で後ろの黒スーツに聞くのだろうか?
「勝つと思います!」
な!?勝つって言ったらベット額が高くなるだろ負けるって言えよ……。とはいえ一試合目だ、勝てると思ってもベット額は大したことないだろう。
「ではベット額はそうですわね……八千六百万ギラですわ」
大したことあった!あのオーナー、後ろの黒スーツのことを信用しすぎだろ……。
「ソレデハオープン」
俺とオーナーはジャッジゴーレムの指示に従い、表が見えるようにカードを机の上に置いた。俺はエース、二、四、五、ジャックの役無し。オーナーは三のワンペアだ。
「クズサンヤクナシ、オーナーサンノワンペア。オーナーノカチトウバイショウリクズサンハ八千六百万ギラオワタシクダサイ」
「まずは一勝ですわ。」
と、オーナーが天を仰ぎ見て高笑いした。八千六百万ギラを俺は渡した。
クッソ!このおじさん俺のこと馬鹿にしてるな、絶対復讐してやる……。
「ソレデハカードヲクダサイ」
オーナーはカードを五枚机の中央に置き、俺はカードを両手で整えるようにして置いた。それらのカードをジャッジゴーレムが回収した。
「ソレデハ二ホンメ」
ジャッジゴーレムが再びトランプをよく切り俺とオーナーに五枚ずつ配った。お互い配ったカードを手に取る。
「屑さんは大丈夫なのでしょうか?」
レベッカは手を組み、不安そうに言った。
「大丈夫じゃない?屑は勝てるときしか勝負しない男よ。チキンだから」
最後の一言が余計だ、バカ!俺のことを信頼してくれてると少しうれしかったのに、最後の一言で怒りに変わったぞ。
「ソレデハカードヲステマスカ?」
「四枚捨てますわ」
「五枚捨てる」
俺とオーナーは宣言通りの枚数カードを捨てた。そしてジャッジゴーレムはそれぞれが捨てた枚数だけそれぞれにカードを配った。
「ソレデハベットガクヲドウゾ」
「さっき当ててくれたましたものね、今度はどう思いまして?」
「今度もオーナーの勝ちだと思います。」
「なるほど分かりましてよ……、ではベット額は一億ギラですわ」
「いっ、一億⁉」
俺達パーティーは思わず口から言葉が出て驚いた。
こいつさっきからあの黒スーツの男信用しすぎだろ……、負けたら終わりなのに……。あの黒スーツは何者だ?オーナーの愛人か?
「ソレデハオープン」
俺とオーナーは互いにカードを見せた。俺はエースのワンペア、オーナーは二のワンペアと三のスリーカードのフルハウスだ。
「クズサンワンペア、オーナーハフルハウス。オーナーノヨウバイショウリクズサンハ一億ギラオシハライクダサイ」
「また負け……,屑さん本当に大丈夫なんですか?」
レベッカはとても不安そうだ。
実際俺はとてもピンチ!だがしかし、首の皮一枚で繋がった。後半を選んでて本当に良かった。
「どうかな……」
俺は不安を感じつつ、一億ギラを手渡した。
やばいここまでの金額負けるとは思ってなかった。オーナーが黒スーツのこと信用しすぎてベット額が青天井とはいえ狂ってたせいだ。
「おほほほほ、所持金の半分以上を失っていますが大丈夫でして?」
と、オーナーは沿った手の甲を口元に当て、こちらを馬鹿にするように言ってきた。
今のは完全にこっちのこと煽ってきてたな。やられたらやり返す、このお嬢様言葉おじさんの金を全てもぎ取ってやる。
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃないでしょう?そんなことも分からなくて?」
オーナーは、俺の『大丈夫です』に被せるように言ってきた。
分かってるなら聞いてくんなよ、ジジイが!
「ソレデハカードヲクダサイ」
再びオーナーは手に持っているすべてのカードを机の上に置き、俺はカードを両手で整えるようにしてからカードを机の上に置いた。ジャッジゴーレムは机の上のカードを集めた。
「ソレデハサンホンメ」
と、トランプを良く切り俺とオーナーに五枚ずつ配った。二人とも配られたカードを右手で受け取った。
「屑さん勝てそうですか……?」
レベッカは生まれたての小鹿のようにぷるぷると震えながら聞いて来た。
「このままだとまずいかも……。」
後一枚、後一枚手に入れば勝てるんだ。
「そうですか……頑張ってください」
「あんたふざけんじゃないわよ!私と和のことさんざん無能呼ばわりしてたくせにあんたは一勝もしてないじゃない‼」
詩織は俺が負けそうなことに憤慨した。
「さっきまで『大丈夫じゃない?屑は勝てる時しか勝負しない男よ』と言っていたあの信頼はどこへ行ったんだよ!」
「うるさいわね!優しさよ!レベッカちゃんを安心させるための優しさよ!あんたなんか信用する訳無いでしょ?私の写真を売ってたくせに‼」
俺と詩織は取っ組み合い状態となり、揉めあっている。
「何年前のこと根に持ってんだよ!クソビッチ!」
「仲間割れですか?ギャンブルに負けただけで仲間割れとは随分と低俗ですこと」
「ハァー⁉うるせ……」
「セイシュクニショウブデス」
ジャッジゴーレムが俺と詩織の口論に呆れて止めた。
イライラする……。絶対に覚えてろよ、このキモジジイが!このカジノをぶっ潰してやる‼
この瞬間俺の目的は借金返済からカジノを潰すことに明確に変わった。
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