第25話
「ここに来ると思っていたが中々に早いご到着だな。俺に買い取って欲しいものはどれだ?」
腰を曲げ、顔を俺の前に突き出して言った。
何なんだ、この人は。顔が近いな、気持ち悪い。
「これだ」
と、俺は荷車から財宝を降ろし店主に見せた。
「どれどれ~……な⁉」
店主は腰を抜かし尻もちをついた。言葉を失った口は、ただ大きく開き、ガクガクと震えた。
「大丈夫ですか?」
レベッカが店主に歩み寄りしゃがみ込んだ。
「あ……あれは……どこで?」
店主はレベッカの顔を見て、プルプルと震える指で財宝を指差した。
「俺達が壊したダンジョンだ」
「そ……そうか。あのダンジョンには物凄い財宝が眠っているとは聞いたことあったがここまでとは……。」
へぇーそんなダンジョンだったのか通りで賠償金が四十億にも達する訳だ。最初に言ってくれれば壊さなかったのに……。
「では早速査定しよう、アセスメント」
と、店主は親指と人差し指で輪を作り、輪から覗き込むようにお宝を見た。
「レベッカあれはどういうスキルなんだ?」
和はレベッカに尋ねた。
「あれはユニークスキルですね。クガさんのノットデッドと同じです。」
「ユニークスキルやはり通常のスキルに比べて強力なものが多いんだな。俺にもあるかな」
和は胸を躍らせて言った。
アセスメントって強力か?こいつの感性はどうなっているんだ?
「確かにユニークスキルは聞いた感じは強そうですが大抵強くないです。クガさんもパーフェクトヒールが無ければ回復できずに永遠と痛みが続く困ったスキルですから」
「確かに……、死なないと考えれば強いが死ねないとなると永遠と痛みが続くデメリットだもんな」
と、和はしょんぼりして項垂れた。
「査定結果がでた三億ギラだ」
三億⁉安いな……。賠償金が四十億のダンジョンの財宝の値段が三億な訳がない。確かめるか、テレパシー。
『グヒヒ本当は八億ギラだがこいつらは世間知らずらしいから三億って言えば大喜びで金受け取って失禁しながら帰るだろ』
と、店主の心の声が聞こえた。
失禁しねえよ。あの店主、俺を騙そうとしやがったな、後悔させてやる。
「おい俺からぼったくろうとしてるな、本当はもっとするだろ?」
「知ってましたか、では五億でいかがですか?」
『二億も上がったんだ、これなら嬉しさのあまり全員で勃起して帰るだろ』
と、店主の心の声が聞こえた。
レベッカは女だから勃起しないだろ、バカ。
『あの女の子も嬉しさのあまり性別が変わるんだよ』
と、店主の心の声が聞こえた。
何でお前こっちの考えてることが分かんだよ!もう勝負を決めに行くか。
「八億だ、八億が妥当な額だろ?」
「な⁉まさか君私の心が読めるのか?」
またしても店主は腰を抜かして倒れた。
「ああスキルでな、あんたもできるんだろ?」
顎を突き出して、店主を見下ろした。
「いや、できない」
じゃあ何で俺の心読めたんだよ。
「それじゃあ十億ギラで買い取ってもらおうか」
「じゅっ十億⁉八億が適正金額なのにそれでは赤字だ買い取らない」
「買い取らないなら、買取の際に査定するのが自分一人だからってぼったくってること言いふらすかもな」
「それは困る。やめてくれ、九億だ!九億で買い取らせてくれ。な?頼むよ」
と、店主は俺の足に抱き着いて、泣きついた。
『十億なんておじさん失禁して踊り出しちゃうよ』
と、店主の心の声が聞こえた。
踊るな。失禁はまだ分かるがなんで踊るんだよ。三十代男性が失禁しながら踊る姿を想像してみたが見てられないぞ、バカ。
「十億だ。いいのか?ぼったくりを知られたら信用を失うぞ?人は時に信用は金には代えられないって言うだろ?お前はこの財宝を十億ギラで買い取るしかないんだよ」
「うぅ分かりました。」
おもむろに立ち上がり、悲しさを背中に背負って店主は店の裏に行った。戻って来ると荷車いっぱいに乗せられた十億ギラを引っ張って持ってきた。。
「これを受け取ったら早く出て行ってくれ見られたくないんだ……。」
「え⁉」
俺は驚きが隠せず、口から音が漏れた。
この人本当に失禁して踊るのか……。クッソキモいじゃん、よく信用がどうとか言えてたな。ハァー……、失禁ダンサーのことはもういいや考えても結論に辿り着けそうもない。明日はカジノで借金返済のためにギャンブルだ。
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