第23話

 私達は悪魔から逃げるためダンジョンを壊し瓦礫で悪魔の動きを封じた、しかし壊したダンジョンの賠償額として四十億ギラの借金を負うことになった。

 正直壊したのは屑だから屑のせいにして借金全て屑に押し付けようかと思ったけど、そうしたらいよいよ私は屑に見放されてしまう……、それは嫌!この訳の分からない異世界で独りぼっちだけは絶対に嫌‼。というわけで借金を共に返すことにした。ん?何で今回は屑じゃないのかって?今回の主人公がこの私南詩織だからよ。


「おい新人ちょっと来い」

 と、黒スーツの男が手招きをして私を呼んだ。


 私は今屑の指示でカジノで良いギャンブルを見つけるために働きに来ている。ここはカジノの従業員室、といってもただの更衣室なんだけど。


「はい」

 私は、黒スーツの男の下に向かう。


「おい新人身長は?」

「百六十五センチです。」

「ならこれを着ろ」

 と、黒スーツの男が一着のスーツを私に手渡す。


「なんでこれメンズ用何ですか?」

「レディースが無かったんだ。お前はそれでも着れるだろ?」


 何よ!この男、確かに私の胸小さいけど最後の一言が余計ね、私をバカにしたこと後悔させてやるわ。


「キャー!助けてー!エッチなことされちゃうー!誰かー!男の人呼んでー!」

「ばっ、やめろ、勘違いされるだろ。」

 廊下から走って来る足音がした。


 フフフ良いわ、慌ててる、慌ててる。


「大丈夫ですか、おい貴様何やってるんだ!」

 部屋に入ってきた別の黒スーツの男が黒スーツの男を取り押さえた。


 ちょっと分りにくいわね。元々居た黒スーツの男を黒スーツ一、後から来たのを黒スーツ二とするわ。


「俺は何もしてないこの女が突然……」

 黒スーツ一が必死に弁明し抵抗している。


「嘘つかないでよ!この変態さっきまで、おい嬢ちゃんかわいい顔してるな。その立派な胸は誘ってるのか?俺のビリヤード棒で嬢ちゃんのジャックスポットを突いてやろうか。って言ってたじゃないのよ!」


「いや……ちが……」

「何⁉この変態が貴様こっち来い!」

 黒スーツ二は黒スーツ一を問答無用で連れて行った。


「お疲れ様でーす。……フゥー、スッキリした。私の胸を馬鹿にした天罰よ。」

 私は渡された黒スーツを着てカジノのギャンブルスペースに向かった。


「そういえば私何したらいいんだろう?あの黒スーツに聞いとくんだった……。」


「おいそこのこっちに来い。」

 奥の黒スーツが手招きして私を呼んだ。私は急いでその黒服の下に向かった。


「お前新人か?」


 名札には五十七と書かれている。ここのスタッフの黒服は名前ではなく番号で管理されてるのね。


「はい、新人です。私って何したらいいですか?」


「それならあそこのポーカー場のディーラーをしてくれ」

 と、奥の机を指差した。カジノ内の机は全て金で出来ていて机の上はカードを取りやすいように高級なフェルトになっている。


「分かりました」

 私は黒スーツの男が指差した机に向かった。そこには高級そうなスーツを着たいかにも金持ちそうな男が二人いた。


 金持ちそうね、ポーカー初心者の私が有り金全部奪ってやるわ。


「この度ディーラーを務めさせていただく。九十七番です。」

 私はそう言って、深々とお辞儀をした。


「よろしく頼むよ」


 流石は金持ちお金に余裕があると心に余裕が生まれるのね。


 私はトランプを手に取りしっかりと切った。


「では五枚ずつ」

 私はトランプの上から五枚を一人の男に渡し、また上から五枚をもう一人の男に渡した。最後に上から五枚を私の手元に置いた。


「それではレート開始は十万ギラからとします」


「レイズ五十万ギラ」

 と、チップを机の中央に置いた。


 右の男は随分と自信があるのね。それとも五十万ギラぐらいどうでもいいのかしら。


「コール」

 左の男も同様にチップを机の中央に置いた。


 こっちも自信ありってことね。


「それでは手札を捨てますか?」

「私は結構」

「私も」

 へぇーこの二人既に強いカードを持ってるってこと?流石は金持ち、持ってる人は違うわね。


「レートは五十万ギラです。」


「レイズ百万ギラ」

 右の男は先程の二倍のチップを机の中央に置いた。


「さらにレイズ五百万ギラ」

 左の男は両手からこぼれ落ちそうな枚数のチップを机の中央に置いた。


 え?五百万ギラ?この人馬鹿なの?一勝負で賭ける額じゃないでしょ……。これで負けたら私の給料天引きとかないわよね?


「コール」


 こっちも……。


「それではオープン」


 右の男はハートのロイヤルストレートフラッシュ。左の男はスペードのロイヤルストレートフラッシュ。私は二のファイブカード。


「な……⁉」

 二人とも目をかっぴらき大口を開けて、愕然としている。


 確かにポーカーの最強の役ロイヤルストレートフラッシュよ。しかし、ジョーカーを含めるとロイヤルストレートフラッシュにも勝てる最強の役ファイブカードが作れるようになる。つまり私の勝ち。


 私はものの数分で一千万ギラの勝利をした。


「もう一度だ」

「私も」


 それから私はこの男達と十五戦した、そして私は全てファイブカードで勝利した。戦うたびに男たちの顔は徐々に絶望に染まり、今では絶望一色だ。


「もう二度と来るかこんなイカサマをするカジノなんて‼」

「私もだ!」

 二人の男は『ガタン』と大きな音をたてて立ち上がり、『ドタドタ』と大きな足音と共にカジノを後にした。


「おい新人何をしたんだ?」

 黒スーツの男がこちらに向かってきた。


 フッフッフー、これは二億ギラの爆勝ちをしたこの私を褒めに来たのね、さすがはこの私、剣術だけだと勘違いされがちだけど勝負ごとにおいても無敗なのよね。


「あの方たちは太客の常連さんなんだぞ。たくさん勝負させて程よく負けさせるのが仕事だろ。」

「え?」

「『え?』じゃない、反省しているのか?」

「すいません……。」

 と、私は渋々頭を下げた。


 そんな大事なことは早く言いなさいよ。


「それに貴様イカサマしたらしいなこのカジノに悪い噂がたったらどうするんだ?ディーラーとはいえ罰金五十万ギラ払ってもらうからね」


「な⁉ちょっと待ってよ、私の給料月三十万ギラなのよ?それにイカサマなんてしてないわよ、たまたま十六戦全てフ……、フルハウスになっただけよ」


 危なかったー、ついうっかりファイブカードって口から漏れそうになってたわ。


「十六戦全てフルハウスになるわけないだろ、払えないなら借金だな、カジノで貸付してやる金利は月三十%だ」


 まずい、このままでは『何で働き行って借金が増えるんだよ、このバカ。』って言われてしまう……、こうなったら。

 

「あ‼あっち見て」

 と、奥を指差した。

「なんだ?」

 黒スーツの男は私が指差した方角を見た、その隙をつき黒スーツの背後に回り、手刀をうなじに打ち込んだ。黒スーツの男は意識を失い、ガクンと崩れ落ちた。


「大丈夫ですか?あっち行きましょうね〜」

 私は従業員室に黒スーツの男を引きずり、従業員室に運んだ。


 これ以上借金増やしたらまた屑と和に文句を言われる。この男には眠ってもらって無かったことにするしかない。


 従業員室に運び終えて、私は再びポーカーをしていた場所に戻った。


「あのすいません。私新人なんですけど何したらいいですか?」

 おおよそ十六歳程度のバニー服を着た黒髪の美少女が話しかけてきた。


 ああやっと……やっと……ロリバニーを見ることが出来た、もう死んでもいい。

 私は目の前のロリバニーを目の前に、感動で目から涙が零れた。


「え、え?あの……、私何かしましたか?」

 と、私の突然の涙に混乱し、アタフタして言った。


 まさかこの子、自分が可愛いことを理解していないの⁉可愛いは罪なのに、この子は身に覚えのない罪を着せられているのね、可哀そうに。


「何でもないわ、気にしないで。仕事のことだけど、私の前に立って、そして何をされても動いちゃだめよ」

 私は両手で目を擦り、涙を拭って答えた。


「え……?はい分かりまし……た?」

 と、ロリバニーは指示の内容に意図が読めず首を傾げて答えた。


 それじゃああなたの体をちょいと拝見させてもらうわ。


 私は勿論後ろから抱き着いた。

「ふふ……良い匂い♡」

 私は、ロリバニーの髪の毛から薫バラのような匂いに思わず口から言葉が漏れた。


「ひぃっ⁉」

 肩をビクッと竦めて驚いた。そして強張った顔で、必死に我慢している。


 いけない、いけない私としたことが怖がらせてしまったわ。スハァ。ほのかに香るシャンプーの匂い。スハァきつい香水ではなくこの自然なロリロリしい香り素晴らしいわ。


「あの……離れてもらえませんか?」

 硬くなった筋肉を捻り、私の顔を見て言った。


 普段ならここらで屑か和に邪魔されてしまう場面、しかし今日は邪魔者がいない。


「そんなことより君の名前教えてよ」

「嫌です!」


 レベッカちゃん同様ロリバニーちゃんも流石ね、ちゃんとしてるわ。


「でもこれだけ可愛かったら変なのが付きまとってくるでしょ?お姉ちゃんが守って……あ・げ・る。」

「大丈夫です。」

 ブンブンと素早く首を振って答えた。


 遠慮してるのね。やはり私が守ってあげないと。


「それなら出会い記念に私の苗字あげる。」

「結構です!」


 本当にこの子は遠慮がちね、まずは心を開いてもらわないと。


「ねえポーカーしましょ、私とあなたのペア、子供は三人のスリーカードで温かい家を作りましょう。」

 私の発言にとうとうロリバニーは言葉を失った。


「おいこら!」

 後ろから男の声がした。


 チッ‼また黒スーツ?なんでいつも良いところで誰かが邪魔するのよ。


「なんですか?」

 私はロリから離れて男の声がした方を向いた、そこには番号がダブルゼロの男がいた。


「私はここの総支配人でしてよ。九十七番、あなたには悪いのですがクビでしてよ。」

 と、総支配人と名乗る男は口元に左手を当てて言った。


「何故クビなのですか?」


 私はクビにされるようなことはした、しかし全部証拠は消したはず。


「シラを切るつもりでして。あなたはうちの職員を一人冤罪にかけ、お得意様相手にぼろ勝ちして目先の利益を優先し、うちの職員に暴力沙汰、そして今はうちの職員にセクハラ。これでもまだ理由は欲しくて?」


「何故……そのことを?」


 セクハラ以外証拠は隠滅してきたはずなのに……。


「従業員室で気絶していた職員の記憶をスキルを使って見たのでしてよ。」


 ここで魔法は使えないってレベッカちゃんが言ってたのに……。


「もうそのスーツは差し上げますわ。あなたが着て着た服も持ってきておりましてよ。罰金もお支払いいただかなくて結構ですわ。だから今すぐ出て行ってもらえませんこと?。」

 総支配人は感情を押し殺そうにも、殺しきれず眉を顰めて言った。


 働き始めて一日目でクビにされた、はぁー……屑達に怒られる。何か言い訳考えとかないと。借金四十億ギラギャンブルで返済作戦は早くも失敗ね……。人生は想像にはいかないものね。

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