第21話

「オラァ!ノロマ共!早く走れ、ボケ!」

 まだニーナさんは怒り狂っているのか、後ろから走って来る和達を担いでいる鎧甲冑に向かって叫んだ。


 何でニーナさんはこんなにも怒ってるんだ⁉ダンジョンが壊れて何か被害にでもあったのか?


 俺が余計な詮索をしている間に、屋敷から出発した全員がこの場に集合した。集合するや否や鎧甲冑の男たちは横に並びニーナさんに敬礼した。


「遅い!この愚図野郎共が‼この私を何分待たせたと思っている⁉」


「何怒ってるんだ?せいぜい十分かそこらだろ。」

 和は眉間にしわを寄せて言った。


「黙れ‼誰が喋っていいと言った‼このボケ‼」


「誰がって、グハッ!」

「二度も同じこと言わせるな、ボケ‼」

 と、ニーナさんは右拳で、和のみぞおちを突き上げるように殴った。和はその場に崩れ落ち、両手でお腹を抱えて藻掻いた。


 フハハハハ!ざまあみろ、バカ!これは俺に助けてもらった恩を仇で返した天罰だ。このバカがよぉ‼


「素晴らしい一撃でした。」

 俺の口は思わず感謝の一言を漏らし、俺の両手は拍手を送っていた。


「黙れ!」

「グハッ!」

 と、ニーナさんは俺の両肩を掴み、お腹に膝蹴りをした。俺も和と同じく崩れ落ち、両手でお腹を抱えて藻掻いた。


 イッテー‼このイカレ女め、絶対に復讐してやる!


「ちょっとあんた、私の身代わり人形に何してくれてんのよ。」

 ニーナさんを指差し、詩織は批判した。


 身代わり人形……?こいつは味方なのか、敵なのかどっちだ?


「この私に指差すんじゃねぇ‼」

 と、ニーナさんは殴りかかったが、しかし簡単に受け流された。


「フンッ!貴様は見込みがあるな。全員ついて来い!」

 彼女はUターンして、目の前の石材で出来た大きな中世ヨーロッパ感あふれる建物の中に入っっていった、続くように俺達も入った。


 ニーナさんは奥の部屋の前で、突然立ち止まり振り返った。


「おい!まずは貴様だ、来い!」

 ニーナさんは和の胸ぐらを引っ張り部屋の中に連れ込んだ。そして勢いよく開かれた扉は、『バタン!!』と大きな音を立てて閉まった。


 取り調べか?あの人の取り調べは怖いな別の人に頼みたいところだ。


 五分ほどして扉が開き頭から血が噴水のように吹き出している和が出てきた。


「ぎ……ぎを……じゅけろ」

 和は俺にその一言を残して倒れた。


 え……?死んだ?一体あの部屋の中で何が……、もしかして俺も、死ぬのか?嫌だ、死にたくない!


「次は貴様だ!早く来い。」

 ドアの向こうから伸びてきた手は、俺の胸ぐらを引っ張り、俺は部屋の中に連れ込まれた。再び扉は大きな音を立てて閉まった。


 部屋の中に入るとそこには机と向かい合って配置された椅子、ただそれだけがあった。


「座れ」

 俺はニーナさんに指示されるがまま彼女と向かい合って座った。


「おい貴様がダンジョンこわしったてのは本当か?」


 単刀直入だな……。


「それはそうだが……グハッ!」

 ニーナさんは突如として俺の右頬を殴った。


 痛い。え?なんで?なんで殴られたんだ?


「おい!私の質問には『はい』か『いいえ』で答えろ!それ以外は殴る!」


「は?」

 俺は突如として殴られて理解が追い付かなかず、口から言葉が漏れだした。そして再び俺は殴られた。


「さっきの質問に早く答えろ!」


「はい!」

 気が付くと俺は答えていた。


 暴力は本当に恐ろしい、まるで洗脳じゃないか。


「えっ?血?」

 俺の頭から血が流れている。


 やばい俺ももしかしたら


「何が『エッチ』だ!この変態がぁ!」

 彼女は俺の髪の毛を掴んで机に叩きつけた。


「グハッ!」


 そうだけどそうじゃないのに。変態はお前の部下だろ、バカ!こいつはもう許せねえ、俺が死刑になったらあんたも道ずれにしてやる。。


「では次の質問だ。貴様はダンジョンを悪意を持って破壊したのか?」


「いいえ」


 またしても俺は無意識的に答えていた。

「グハッ!」

 今度は左頬を殴られた。


 しっかり答えていたのになぜだ……?


「嘘をつくな!嘘をついても殴る。」


 何なんだよ、このクソ女は……。


「俺は嘘なんてついてない」


「『はい』か『いいえ』以外で答えるなと言っただろうが!」

 俺は再び左頬を殴られた。


 クソこのクソ女このクソ女も俺が死刑になったら道ずれにしてやる。というか俺は本当に嘘をついていないのに……もうそっちにとって都合のいい返答をしろってことなのかよ……。


「ば……い」

 というわけで仕方ないので俺は濡れ衣を被った。


「この極悪人がぁ!」


「グハッ」


 何だよ、もう何答えても殴られるんじゃねえか!


「もういい、行け!そして次の者を呼んで来い!」


「あ゙……い゙」


 レベッカを呼ぶのは可愛そうだな、まずは詩織を呼ぶか……。


 俺は席を立ち部屋出た。するとすぐにレベッカが近寄ってきた。


「大丈夫ですか?何があったんですか?」


「あ゙……」

 俺は必死に危険を伝えようとしたダメージの蓄積で声が出なかった。


「次は私が行きます。」


「待ってレベッカちゃん私が行って時間稼いでくるからそのうちに逃げて」


 詩織でも相手を思いやる気持ちがあったのか……違うな。相手が年下の女の子だからだろうな。


「いえ覚悟はできてます。そこで待っていてください。」

 レベッカはそうして部屋の扉を開けて入っていった


 レベッカは気弱な子だと思ってたがそうでもないらしいな。可哀そうにあの理不尽クソ女に殴られるんだろうな……。


 そんなことを考えてたら入ったばかりの無傷のレベッカが出てきた。


「皆さん先ほどは不敬な行い大変申し訳ありませんでした。もう取り調べは不要です。……」

 ニーナさんの顔は、口から魂が漏れ出て顔から生気を感じられない、


 さっきまでの短気クソ女とは思えない程意気消沈してる……。何があった?


「なあレベッカ何があったんだ?」

 俺はレベッカに耳打ちで問いかけた。


「入ってすぐあなたの取り調べは違法なのであなたの上司に報告しますよと脅しをかけたんだすよ。あの人はニーナと言って元々問題のある審問員だったのですが昇進を目指しているのでこのように脅すとすぐおとなしくなるのですよ。」


 レベッカも成長してるな、流石俺達の下で学んでいるだけあるな。


「では今回の皆様の処遇ですが、審判の結果よりあなた達は投獄免除で四十億ギラの賠償命令です。」


「四十億ギラー⁉」

 俺達は声を合わせて驚いた。


 投獄なしなのはきっと投獄してしまうと四十億ギラの賠償が無理だからだろうということからなのだろう。でも四十億ギラの借金なんてどうやったら返せるんだよーー⁉

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