第18話

「ゴホッゴホッ……和、一体何したんだ?」

 俺は、砂煙で咳が出る口を手で押さえつつ質問した。


「ゴホッゴホッ……屋敷の地下にダイナマイトがあっただろ?あれを使ってみたんだ。いくら悪魔といえどもただじゃ済まないだろ」

 砂煙の中から和の姿が現れた。 


「もう死んだんじゃないの?そんなことより財宝に傷つけてないわよね?傷ついてたら殴るから」

 詩織は、少し煙たそうに手を扇ぎつつ、言った。


 こいつ、さっきまで一緒に怯えていたのに悪魔が死んだと思ったらこの態度、なんて身勝手な奴なんだ……。


「それにしてもビックリして心臓止まるかと思った。和、そういうの使うなら使う前に教えてくれよ」


「貴様ラソノ程度デ、コノ俺ニ勝テルト思ッタノカ?」

 砂煙の中から俺達の耳へと、悪魔の声は駆け抜けた。その声を聴き、俺たちの顔は青く白い恐怖に染まった。


 悪魔の奴生きてやがった……。ダイナマイトで倒せなかった奴をどうしたら倒せるんだ?


「ケホッ、ケホッ……、悪魔はとても防御のステータスも高いのです。あれでは怒りを買っただけです。」

 そういうことは早く言って欲しい!今回も別に誰が悪いという訳ではないが故に、また誰も責めれない……、ああ、本当にモヤモヤする!全部あのクソ悪魔のせいだ!殺してやる‼

 俺は両手で頭を掻きむしり、髪の毛をくしゃくしゃにした。


「貴様ラ、ヨクモヤッテクレタナ!クラエ、ブラックフレア!」

 俺達向けられた手の平から、黒い火炎玉が勢いよく噴き出した。俺達は間一髪のところで躱し、物陰に身を潜めた。


「気を付けてください悪魔の得意魔法黒系魔法です。黒い炎は生物に火が移ると、ある条件を満たさない限り消す方法はありません。」


  クソ強いじゃねえか!こっちの攻撃魔法は最初に備え付けのラーザートラベムしかないってのに……。


「ある条件ってなんだ?」

 悪魔から目を離し、レベッカに問いかけた。


「ある条件とは、使用者が死ぬ、使用者の魔力が切れる、使用者が魔法を解除する、僧侶または賢者のスキルで消す、以上四つのみです。」


 全部無理に決まってんだろ!そんな強い奴が初心者の俺達の前に出てくんなよ!


「チッ!どうやったらあいつを倒せるんだ……?」


「一度でダメならもう一度やれば……」

 和がポケットに手を突っ込み、ダイナマイトを取り出した。その光景を目の当たりにし、俺は閃いた。


 それだ‼


「和待て。それを俺に渡せ、俺に作戦がある。詩織は俺達にバフ魔法を掛けてくれ」

「分かった。」

「分かったわ、プラスステータス」

 和は取り出したダイナマイトを俺に手渡し、詩織は杖を掲げ、俺達に全能力上昇のバフ魔法を掛けた。


「屑さん、一体どうするのですか?」

「逃げる」


「小賢シイコトヲ考エテイルヨウダガ無駄ダ。ブラックフレア!」

 こちらに向いた悪魔の手は、黒炎を噴き出した。俺達は間一髪のところで、眼前を来た黒炎を躱した。


 危ないな。少しでも燃えたらアウトとかチートだろ!そういうのは転生者の俺に寄越せ‼


「おい、この毛むくじゃらの害獣が、死ね‼」

 と、俺は片手を悪魔に向け、もう一方のダイナマイトを持っている手を振りかぶった。


「ソンナモノガ俺ニ通用シナイノハ知ッテイルダロ?」

 悪魔は狂気じみた視線で俺を睨んだ。睨まれた俺は、ダイナマイトを天井に向かって、真上に投げ飛ばした。


「ドコヲ狙ッテイル?俺ハココダゾ、直前デビビッタナ、腰抜ケ!」


「よしっ!逃げるぞ!」

 俺達は急いで財宝部屋からボス部屋に向かって走り出した。そしてダイナマイトは天井にぶつかり、爆破した。天井はダイナマイトの爆破で崩れ始めた。


「コノ俺ヲ生き埋メニスル作戦ダッタノカ……、ソレナラ俺モコノ場ヲ離レレバイイダケダ。貴様ハ腰抜ケデハク、バカダッタカ……。」

 悪魔は俺のことを酷く嘲笑し、その場から離れようとしたが足が地面から離れなかった。


「ナ⁉コレハ接着魔法⁉イツノマ間ニ⁉」

 悪魔は足元の緑のベタベタとした液体に気が付いた。


「ダイナマイトを投げた時だ、お前がダイナマイトに気を取られている内にスティックを使ったんよ。今どんな気持ちだ、効きもしない攻撃に気を取られて、バカにしていた相手の手の平の上で踊っていた、このバカがよぉ‼アーハッハッハ‼」

 俺は悪魔を指差し、腹を抱えて笑った。そして動けなくなった悪魔の頭上に、瓦礫が落ち動けなくなった。


 やっと、罵倒が出来てスッキリした~。


 俺達は、ボス部屋に戻ってきた。

「お前ら、全員を一か所に集めろ!」

 俺は他三人に指示し、疲れ果てて倒れている全冒険者を一か所に集めた。


「待テ、貴様ラ逃ゲル気カ?冒険者ダロ?プライド無イノカ?卑怯ダゾ!戦エ戦エヨ!お前ラ待テ!頼ム俺モ連レテ行ッテクレ」

 瓦礫に埋もれ倒れている悪魔は切迫した顔で、必死に手を伸ばし助けを求めて来た。


「仕方ねえな……」

「助ケテ……クレル……ノカ?」

 絶望で切迫した悪魔の表情は、一筋の希望で緩んだ。


「嘘だよ!誰が助けるかよ、このブァ~~カ‼テレポート!」

 その場から俺達の姿は消えた。その一言で悪魔の顔は黒く染まった。


「ウアアアアアアアア‼」

 悪魔は絶望の中崩れ落ちて来る天井に埋もれた。


 俺達の姿はダンジョン入口に現れた。

「何とか……助かった……」

 和は安心し手その場に崩れ落ちた。俺もほっと胸を撫でおろし倒れこんだ。そして『ボゴン‼』と大きな音と共にダンジョンがあった場所の地面が二メートルほど沈み大きなくぼ地となった。


 突如現れた俺達に気が付き、今朝ここまで案内してくれたギルド受付嬢が駆け寄ってきた。

「何があったんだすか、何故ダンジョンが崩壊したんだすか?」


「それは……」

「財宝部屋に悪魔がいてその悪魔がどうせやられるくらいならと自爆したんですよ」

 俺は答えようとしたレベッカの口を塞ぎ、答えた。


 素直に倒せそうに無かったから逃げるためにダイナマイトで天井を崩壊させたなんて言ったら大変だ。ダンジョンなんて言ってしまえば遺跡そんな価値あるものを壊したとなったら莫大な賠償金を支払わなければなくなる。


「そうでしたか……、それは大変でしたね事後処理はこちらで致しますので皆さん馬車に乗ってください。報酬はギルドにて支払います。」

 と、馬車を手で指した。


 今回も何とか上手くいったな。


「それじゃあ馬車に乗るか。」

 俺達は起き上がり、馬車に乗り込んだ。


「なんでまたお前らがいるんだよ」

 馬車の中には、よく見知った顔がいた。


 ハァ~、最悪だ。

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