第17話

「貴様ラ、ヨクココマデ来タナ」

 財宝部屋中心にいた魔物はこちらを振り返り言った。


「魔物が喋った⁉」


 マジかよ……喋れる魔物とか絶対強いやつじゃん。


「貴様ラ悪魔ヲ見ルノハ初メテカ?」

 と、黒く細長い指は和の方に向かって伸びた。


「悪魔……?」


 眉を細め、和が問い返した。


 悪魔とか中盤から出てくるやつだろ、新米冒険者の前に出てくんじゃねえよ!


「貴様ラ悪魔ヲ知ラナイノカ?学ガ全ク無インダナ」

 俺達は悪魔に鼻で笑われた。


 悪魔に馬鹿にされた⁉クソが大した知恵の無いくせに、ムカつくな。


「知ってます。悪魔とは中級魔物です。知能が高く魔法攻撃主体の魔物です。でも確か人間のように群れて生きているはずでは?」


 レベッカは、解説キャラとしてかなり板についてきたな。


「ナンダ、知ッテイルジャナイカ」


「俺達は財宝が欲しいだけなんだ争うつもりは無い」


 和は杖を捨て、説得を試みた。


 和でかした。悪魔は知能が高いらしいから成功するだろ。


 悪魔の返事を待っているその場所には、ずっしりと重い空気が漂っている。


「……ダメダ!」

 悪魔はゆっくりと首を振り、答えた。


 はい!ダメでした!


「俺ハ魔王様ニコノ財宝ヲ守ルヨウニ言ワレタノダ」


 悪魔の言葉に、俺は耳を疑った。


 魔王は生きているのか⁉


「魔王は生きてるのか?」

 俺は大きな期待を胸に質問した。


「魔王様ハ死ンダダロ。ソンナコトモ知ラナイノカ?ソレハ学ガ無イドコロノ話デハナイゾ?」

 悪魔は俺達のことを再び鼻で笑った。


 魔王やっぱり生きてなかった……、俺はどうやったら天国に行けるんだよ!あのクソ女神が、俺が死んだらあいつを殺してやる!


「やっぱ魔王は死んでたのね」

「まじかよ……」

 和と詩織は新たに見えた一筋の光が目の前で消え、首がガクンと折れた。物凄い辛そうだ。


「貴様ラ何故冒険者デアリナガラ魔王様ノ死ヲ悲シンデイル?」

 悪魔は理解に苦しみ、眉を細め俺達に尋ねた。


 そりゃそうだ。転生者について知らなければ魔王の死を悲しむ冒険者なんていないだろうからな。


「皆さんふざけるのは、お止めください目の前には悪魔がいるのですよ。」

 別にふざけていた訳ではないが、レベッカの言葉で俺達は目が覚めた。そう俺達は絶賛命の危険に犯されているのだった。


「危なかったわ……」


「全くだ……どうやってあの悪魔を倒す、屑?」


「そうだな詩織、お前僧侶だろ悪魔とか有利に戦えるんじゃないのか?」

 これしかないと詩織の顔を見て聞いた。


「無理よ」

 詩織は、真剣な顔できっぱりと断った。


「なんでだ?僧侶なら対悪魔用の魔法とかスキルとかあるんじゃないのか?」

 俺は両手を広げ、詩織に尋ねた。


 使えないのは回復魔法だけじゃないかったのか?もしかして対悪魔用の魔法も覚えられなかったのか……?


「対悪魔用の魔法なんて覚えてないわよ。スキルポイントが足りないのよ。汎用的なのを優先的に覚えたから。」


「マジか……」


 今回はこいつが無能って訳じゃないから強く言えないな。ああ、モヤモヤする。誰かを罵倒したい!


「対悪魔の魔法じゃなくてもお前の剣技なら余裕だろ。あれだけ強いんだからさ」

 和の言葉に、俺は深く納得した。


 確かに詩織の強さなら悪魔ぐらいやれそうだな。


「無理よ」

 またしても詩織は、きっぱりと答えた。


「どうしてだ?」

 和は眉を細め問い返した。


「だってあいつ強そうだし、ああいうのって体毛が固くて剣じゃ切れないみたいなパターンになりそうじゃないのよ」


 非常事態にこのバカは何を言ってるんだ?


「あの……詩織さんの強さなら余裕だと思うんですけど……」

 レベッカが戸惑いつつ言った。俺は驚いた。


「いやでも万が一ってことがあるから嫌よ。それにさっき私自分にバフ魔法掛けちゃったから普段の半分の実力も出せないわ」


 そうだった、さっき詩織バフ魔法使ってたんだった。これじゃあまたしても罵倒できない!イライラする。


「大事なところで使えないな……」

 ついうっかり俺の口から飛び出した。


「こうなったら、これでもくらえ!」

 和が突然悪魔に向けて光る何かを放り投げた。その光る何かはドッカーン!と爆発したのが目に映った。大きな爆発音が耳を駆け抜け、共に来た突風で瓦礫が飛んだ。咄嗟に前に出した腕が痛い。少しして周りに砂煙が舞う。


 なんだ?何をしたんだ?

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